この記事では「妄言」について解説する。

端的に言えば妄言の意味は「根拠のない発言」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、ロシアで2年間日本語教師として働いた大学院生ライターの「むかいひろき」を呼んです。一緒に「妄言」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間日本語教師として働いた経験を持つ大学院生。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「妄言」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「妄言」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「妄言」の意味は?

「妄言」には、次のような意味が国語辞典に掲載されています。

1.根拠もなくみだりに言う言葉。でまかせの言葉。ぼうげん。「―を吐く」
2.自分の述べた言葉をへりくだっていう語。ぼうげん。「―多謝」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「もう‐げん〔マウ‐〕【妄言】」

「妄言」には2つの意味が辞書に掲載されていますが、主に使用されるのは1番目です。「根拠のないでまかせの発言」を「妄言」といいます。漢字の読み方は「もうげん」です。2番目の意味では「妄言多謝」という四字熟語以外では使われません。こちらについては例文の節で確認しましょう。

1番目の意味でつかわれる場合、マイナスのイメージを持った言葉として使用されます。

「妄言」の語源は?

「妄言」の語源はよくわかっていません。ただ、「妄」という漢字には「でたらめ」「根拠のない」という意味があり、「言葉」「言うこと」という意味を持った「言」と組み合わせることで、「根拠のないでまかせの発言」という意味が誕生したのではないかと推測できます。

かつては「もうげん」ではなく「ぼうげん」と読まれていました。現存する文献での初出は900年(平安時代)の『菅家文草』の「酷悲穿眼復消魂、皆道希顔是妄言」です。かなり古い言葉ですね。

\次のページで「「妄言」の使い方・例文」を解説!/

「妄言」の使い方・例文

「妄言」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.「コロナはただの風邪だ!」という妄言は医療従事者にとって非常に迷惑である。
2.自分がよく分かっていないことについて妄言を吐くのはやめなよ。
3.いくら妄言を並べても無駄だ。君が横領をした事実は明白なんだ。
4.(手紙の最後に)私の意見は以上です。妄言多謝。失礼いたします。

例文1~3は、辞書の1番目の意味「根拠のないでまかせの発言」の例です。例文1では、「コロナはただの風邪だ!」という発言について「根拠ない発言」と述べていますね。例文2では、「自分のよく分かっていないことについてでたらめなことを言うな」という意味で「妄言」が使用されています。例文3では「いくら適当なことを言っても無駄だ」という意味で「妄言」が使用されていますね。

例文4は「妄言多謝」の例です。自分の意見を多く書いた手紙や文書の最後に、「いい加減な発言をたくさん並べたことをお詫びします」というニュアンスで、自分の言葉をへりくだって述べるのに使用されます。

「妄言」の類義語は?違いは?

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「妄言」の類義語には「虚言」「空言」があります。意味などを確認していきましょう。

その1「虚言」

虚言」は「きょげん」と読み、「嘘を言うこと。また、その言葉」という意味の単語です。「虚言」も「妄言」も「本当ではないこと」を指す点が共通しており、類義語といえますね。

「虚言」と「妄言」の違いは、「虚言」には「人を欺く」「人をだます」というニュアンスがあることです。「妄言」も「本当ではないこと」をいう点では共通していますが、人を欺いたりだましたりするニュアンスはありません。

例文を見てみましょう。

\次のページで「その2「空言」」を解説!/

・石井さんの虚言癖には困ったものだ。すぐに嘘をついてごまかそうとするから困る。
・現場を目撃した二人の証言が異なっている。どちらかが犯人をかばって虚言を吐いているのだろう。

その2「空言」

空言」は「そらごと」と読み、「うそ、偽り」という意味の言葉です。「空言」も「妄言」も「本当ではないこと」を指す点が共通しており、類義語といえますね。

「空言」と「妄言」の違いは、「虚言」と同じく「空言」には「人を欺く」「人をだます」というニュアンスがあることです。「妄言」も「本当ではないこと」をいう点では共通していますが、人を欺いたりだましたりするニュアンスはありません。

例文を見てみましょう。

・田島さんがミスの理由についてまた空言を言っている。自分が怠けていただけなのに。いい加減にしてほしい。
・あの政治家は選挙の時だけ空言を言って当選して、国会では何もせず寝ているばかりで腹立たしい。

「妄言」の対義語は?

「妄言」の対義語には「」があります。意味などを確認していきましょう。

「誠」

」は「まこと」と読み、「本当のこと」「嘘や偽りのないこと」という意味の言葉です。「妄言」は「根拠ないでまかせの発言」という意味であるため、対義語といえるでしょう。「真」「実」と書く場合もあります。男性の名前にもよく使われていますね。また、新撰組の旗印に「誠」の字が使われていたことも有名です。

例文を見てみましょう。

のことを嘘偽りなく申し上げた。
のことを申しますと…その失敗の責任は私にあります。

\次のページで「「妄言」の英訳は?」を解説!/

「妄言」の英訳は?

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「妄言」という言葉にピッタリ該当する英語表現は残念ながらありません。そこで、「妄言」という意味合いやニュアンスを併せ持つ表現をご紹介します。

「thoughtless words」

thoughtless words」は「思慮のない表現」「暴言」「浅はかな表現」という意味を持った言葉です。「思慮のない表現」が「根拠ない発言」と解釈され、「妄言」として訳されたり使用されたりすることがあります。

例文を見てみましょう。

Her argument is obviously thoughtless words.

彼女の主張は明らかな妄言です。

「妄言」を使いこなそう

この記事では「妄言」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「妄言」は「根拠のないでまかせの発言」という意味の表現です。「根拠のないでまかせ」、つまり「嘘」に関連する表現ですが、人を欺いたりだましたりするニュアンスはありません

「虚言」「空言」が類義語ですが、上記のニュアンスが「妄言」と異なります。何か夢を語ると「妄言だ!」と非難されることがあるかもしれませんが、無視して努力を続けていきましょう。

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国語言葉の意味

「妄言」の意味や使い方は?例文や類語を日本語教師の大学院生がわかりやすく解説!

この記事では「妄言」について解説する。

端的に言えば妄言の意味は「根拠のない発言」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、ロシアで2年間日本語教師として働いた大学院生ライターの「むかいひろき」を呼んです。一緒に「妄言」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間日本語教師として働いた経験を持つ大学院生。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「妄言」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「妄言」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「妄言」の意味は?

「妄言」には、次のような意味が国語辞典に掲載されています。

1.根拠もなくみだりに言う言葉。でまかせの言葉。ぼうげん。「―を吐く」
2.自分の述べた言葉をへりくだっていう語。ぼうげん。「―多謝」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「もう‐げん〔マウ‐〕【妄言】」

「妄言」には2つの意味が辞書に掲載されていますが、主に使用されるのは1番目です。「根拠のないでまかせの発言」を「妄言」といいます。漢字の読み方は「もうげん」です。2番目の意味では「妄言多謝」という四字熟語以外では使われません。こちらについては例文の節で確認しましょう。

1番目の意味でつかわれる場合、マイナスのイメージを持った言葉として使用されます。

「妄言」の語源は?

「妄言」の語源はよくわかっていません。ただ、「妄」という漢字には「でたらめ」「根拠のない」という意味があり、「言葉」「言うこと」という意味を持った「言」と組み合わせることで、「根拠のないでまかせの発言」という意味が誕生したのではないかと推測できます。

かつては「もうげん」ではなく「ぼうげん」と読まれていました。現存する文献での初出は900年(平安時代)の『菅家文草』の「酷悲穿眼復消魂、皆道希顔是妄言」です。かなり古い言葉ですね。

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