この記事では「是非もなし」について解説する。

端的に言えば「是非もなし」の意味は「仕方がない」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

日本語検定一級を持ち、文学部に所属する現役大学生ライターである文学少女を呼んです。一緒に「是非もなし」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/文学少女

文学部で学んでいる読書好きの現役大学生。大学のみならず、日々の読書や日本語検定・漢字検定などで学んだ知識を活かして、種々の言葉を丁寧に解説する。

「是非もなし」の意味や語源・使い方まとめ

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織田信長が本能寺の変で遺した最後の言葉としても有名なこの句。歴史の授業ではもちろん、大河ドラマや歴史小説など様々な場で取り上げられているため、一度くらいは耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。それでは早速「是非もなし」という言葉自体の意味や語源・使い方などを見ていきましょう。

「是非もなし」の意味は?

「是非もなし」には、次のような意味があります。なお特に織田信長の遺言については「是非に及ばず」とされることもありますが、ここでは同義語と考えてください。

よしあし、やり方などをあれこれ論議する必要はないとか、もはやそういう段階でない状態をいう。

出典:精選版 日本国語大辞典(小学館)「是非もなし」

「是非もなし」はどうにもならない状況に対しての言葉です。より砕けた現代的表現としては「(そうであるならば)仕方がない」「どうしようもない」などが当てはまります。日常的に使われることは少ない古語に近い表現です。使われる時はほとんどの場合、信長の文脈を踏まえたものとなっています。

導入でも少し触れたように遺言としてこれを発した信長の心情については、はっきり分かっていないのが現状です。辞書的な意味からは諦観を表す言葉とされることが多いですが、他の用例などからその意味を推測する研究も行われています。逆境を乗り越えようとする意志を表すとする説・「意味不明だ」という意味だとする説などその解釈は多様です。また、そもそも信長はこの言葉を発していないとする人もいます。

「是非もなし」の語源は?

次に「是非もなし」の語源を確認しておきましょう。単語単位で分解すると、「是」が「善し」「正しい」、
「非」が「誤り」「不正」で、「是非」で物事の善悪や良し悪しを表します。これが「なし」、つまり良いも悪いもないというところから発展した意味だと考えると分かりやすいはずです。語源については諸説ありますが、平安時代の「ぜひなし」が語源であるとも言われています。この語はここまで述べてきたような「仕方がない」的な意味の他に、「程度が甚だしい」「当然だ」などの意味も持つ形容詞です。

\次のページで「「是非もなし」の使い方・例文」を解説!/

「是非もなし」の使い方・例文

「是非もなし」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は日常生活で用いられることはまずないため、ここでは語源の欄で触れた「是非なし」も含め、特に歴史的な用例を中心に紹介してみたいと思います。

1.ぜひなく嬉しうこそは思し召すべきを(訳:ひたすらに嬉しいと思うべきなのに)
2.似合ひたるように出で立つべきこと、ぜひなし(訳:似合うように装わなければならないのは当然だ。)
3.死なれぬ命はぜひもなきことなり(訳:死ぬことができない命ならば、仕方がない)
4.   その条件は是非もないことだ

例文1から4にかけて徐々に時代が下る形です。例文4のみが現代文であり、ここでは「仕方がない」「どうしようもない」の意味で使われています。また、例文3は井原西鶴の「西鶴諸国ばなし」が出典である江戸時代の文章ですが、意味自体は同様です。一方、例文1の「ぜひなし」は強調表現を、例文2は当然を表しています。出典はそれぞれ平安時代の「栄花物語」と室町時代の「風姿花伝」です。

なお、慣用表現であるためここまで説明してきた意味を表すために「是非がない」のようにアレンジして使うことは基本的にありません。ただし、「是非」という単語自体の用例としては「是非はない」と使うことは十分ありえます。混同しないように注意しましょう。

「是非もなし」の類義語は?違いは?

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古めかしい言葉でこそあるもののその意味するところはかなり一般的な概念であるため類義語は数多くあります。ここではいくつか代表的なものを見ていきましょう。ただし、「仕方がない」のような同義語や意味の欄で説明に使用した句についてはここでは触れません。

その1「止むを得ない」

これも古語に端を発する表現ですが、こちらは現代語でもそのまま使われます。「止む」は「止めようとする」ということであり、それを「得ない」、つまり「止められない」ということです。そこから発展して「是非もなし」と同様の「仕方がない」のような意味が生まれました。

\次のページで「その2「否応なし」」を解説!/

その2「否応なし」

「否」「応」はそれぞれ不承知と承知を表し、それが「無し」のため、良いとも悪いとも言わせない・言えない様子を指します。「是」と「応」、「非」と「否」が対応していると考えていると意味の共通性も分かりやすいのではないでしょうか。

「是非もなし」の対義語は?

「是非もなし」の対義語はありません。「是非がある」といった表現はしませんので注意しましょう。

「是非もなし」の英訳は?

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最後に「是非もなし」の英訳を紹介します。類義語の欄でも述べたように意味自体は一般的であるため、英語にも対応する表現は多いです。その全てを紹介することはできないため、代表的なものを紹介します。

その1「have no choice」

「choice」は選択肢を意味する英単語です。見出しの「I have no choice」で「選択肢がない」「打つ手がない」ということを表します。これはどうしようもない状況への言葉という点が「是非もなし」と共通です。近い英語表現としては「have no choice but to......」というものがありますが、これも「......するしかない(する意外に選択肢がない)」ことを表し、同じく英訳の候補の一つといえるでしょう。

その2「That can't be helped」

直訳すると「それは救われえない」ですが、そこから転じてどうにもならない物事に使う慣用表現です。日本語の「仕方ない」を英訳する場合主にこのイディオムが用いられるため、もちろん「仕方ない」を意味する「是非もなし」の英訳でもあります。同様の意味の口語的表現として「oh, well」も覚えておくと役に立つはずです。

その3「It does not make any sense」

「sense」はかなり多様な意味を包摂する多義語ですが、ここでは「理解」程度に考えておいてください。「make any sense」で「理解する」を意味しますが、「It does not make any sense」もほぼ慣用表現であり、意味の分からない状況に使います。近い言い換えとしては、(こちらはイディオムという程のものではありませんが)「do not know what happened」でしょうか。

\次のページで「「是非もなし」を使いこなそう」を解説!/

「是非もなし」を使いこなそう

この記事では「是非もなし」の意味・使い方・類語などを説明しました。もし創作物などでこの言葉を見かける機会があった時は、ぜひここまで学んできたことを思い返してみてください。より一層その世界観を楽しめるようになるのではないかと思います。また、「是非もなし」のような様々な歴史ドラマや研究成果を背景にした語は他にも豊富です。少し気になる言葉があったら、スマートフォンなどで構いませんので検索してみましょう。思いもよらぬ世界が広がっているかもしれませんよ。

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国語言葉の意味

「是非もなし」の意味や使い方は?例文や類語を現役文学部生がわかりやすく解説!

この記事では「是非もなし」について解説する。

端的に言えば「是非もなし」の意味は「仕方がない」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

日本語検定一級を持ち、文学部に所属する現役大学生ライターである文学少女を呼んです。一緒に「是非もなし」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/文学少女

文学部で学んでいる読書好きの現役大学生。大学のみならず、日々の読書や日本語検定・漢字検定などで学んだ知識を活かして、種々の言葉を丁寧に解説する。

「是非もなし」の意味や語源・使い方まとめ

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織田信長が本能寺の変で遺した最後の言葉としても有名なこの句。歴史の授業ではもちろん、大河ドラマや歴史小説など様々な場で取り上げられているため、一度くらいは耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。それでは早速「是非もなし」という言葉自体の意味や語源・使い方などを見ていきましょう。

「是非もなし」の意味は?

「是非もなし」には、次のような意味があります。なお特に織田信長の遺言については「是非に及ばず」とされることもありますが、ここでは同義語と考えてください。

よしあし、やり方などをあれこれ論議する必要はないとか、もはやそういう段階でない状態をいう。

出典:精選版 日本国語大辞典(小学館)「是非もなし」

「是非もなし」はどうにもならない状況に対しての言葉です。より砕けた現代的表現としては「(そうであるならば)仕方がない」「どうしようもない」などが当てはまります。日常的に使われることは少ない古語に近い表現です。使われる時はほとんどの場合、信長の文脈を踏まえたものとなっています。

導入でも少し触れたように遺言としてこれを発した信長の心情については、はっきり分かっていないのが現状です。辞書的な意味からは諦観を表す言葉とされることが多いですが、他の用例などからその意味を推測する研究も行われています。逆境を乗り越えようとする意志を表すとする説・「意味不明だ」という意味だとする説などその解釈は多様です。また、そもそも信長はこの言葉を発していないとする人もいます。

「是非もなし」の語源は?

次に「是非もなし」の語源を確認しておきましょう。単語単位で分解すると、「是」が「善し」「正しい」、
「非」が「誤り」「不正」で、「是非」で物事の善悪や良し悪しを表します。これが「なし」、つまり良いも悪いもないというところから発展した意味だと考えると分かりやすいはずです。語源については諸説ありますが、平安時代の「ぜひなし」が語源であるとも言われています。この語はここまで述べてきたような「仕方がない」的な意味の他に、「程度が甚だしい」「当然だ」などの意味も持つ形容詞です。

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