この記事では「掌握」について解説する。

端的に言えば掌握の意味は「自分の思い通りにすること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

日本語が好きで日本文学科を卒業したハルを呼んです。一緒に「掌握」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ハル

日本語が大好きで日本文学科を卒業。現在は子供が言葉を覚えていく様子を見ながら日本語の奥深さを実感中。多くの人にそのよいところを紹介したいとの思いを込めて丁寧に解説する。

「掌握」の意味や語源・使い方まとめ

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「掌握」という言葉、日常会話の中でも使ったことがあるでしょうか。何気なく使っている言葉でも、詳しい意味を知ることで理解が深まっていくと思います。早速「掌握」という言葉について、意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「掌握」の意味は?

まず初めに辞書で「掌握」の意味を確認してみましょう。「掌握」には、次のような意味があります。

自分の思いどおりにすること。全面的に自分の支配下に置くこと。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「掌握」

「掌握」は「しょうあく」と読みます。「手につかむこと、手に入れること」という意味から、「自分の意のままに支配できるようにしておくこと」という意味に転じました。盗むことをいう俗語としても使われ、文脈によっては「悪意にコントロールする」「洗脳する」といった悪いニュアンスも含みますので注意が必要です。

一つには、「政権を掌握する」「〇〇社を掌握する」といったように、何かを支配するという場面で使われる場合。もう一つには、「人心を掌握する」といったように、人の心を掴むという意味で使われる場合があります。

「掌握」の語源は?

次に「掌握」の語源を確認しておきましょう。

「掌」という漢字は、音読みで「ショウ」、訓読みで「たなごころ、つかさど(る)、てのひら」と読みます。読み方の通り「てのひら」という意味のある文字です。「たなごころ」は「手の心」という意味なのですよ。

「握」という漢字は、音読みで「アク、オ、オク、オウ」、訓読みで「にぎ(る)」と読みます。「手のひらと指でしっかりと包み込む」という意味から、「自分のものにして手離さないさま」、「手中におさめる、自分のものにする」という意味も持つ漢字となりました。

この二つの文字を合わせて、「てのひらで自分のものにするようにしっかりと握る」という意味の言葉となったのです。

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「掌握」の使い方・例文

「掌握」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.組織のリーダーは、政権を掌握するためにクーデターを先導した。
2.A社は、株式を取得して完全子会社化することでB社を掌握することに成功した。
3.社長が社員の心を掌握できているからこそ、好成績を保ち続けることができている。
4.人心掌握に長けている彼女は、類まれなるリーダーシップを発揮してプロジェクトを成功させた。

例文1と2は、「掌握」を「支配する」の意味で使っています。組織や集団、会社などを対象にした場合、「子会社化」「吸収合併」などによって「支配下に置く」「傘下に置く」といった意味で「掌握」を使うことができるのです。「政権を掌握する」「部下を掌握する」といったように使われる場合、「うまくコントロールする」という意味合いも含まれています。

例文3と4は、「人の心を掴む」意味で使われている例です。「相手の心を掴み、相手を自分の意のままにする」という意味で使われています。この場合、マインドコントロールや洗脳など、相手の心理を深く操作することまでをも含んでいるのです。そのため、不用意に「掌握」を用いると、悪意があっての行動とネガティブに捉えられる可能性もありますので注意が必要ですよ。例えば、「私は〇〇さんの心を掌握しています」などと表現すると、悪意に基づいて相手を支配していると誤解されやすくなります。同じように、「私は〇〇さんに掌握されています」と表現すると、相手にはその意図がないのに悪意ある行為と受け止められているのだと気持ちを害してしまう恐れがあるのです。このように、「掌握」を使う場合には、自分を主語としないことをお勧めします。

「掌握」の類義語は?違いは?

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「掌握」の類義語を見ていきましょう。

「把握」

「掌握」と似た言葉に「把握(はあく)」がありますね。同じ「握」の字が使われています。「把握」は、「しっかりとつかむこと」から転じて「しっかりと理解すること」を意味する言葉となりました。「掌握」は、自分の手中に収めて思い通りに支配することという意味であるのに対して、「把握」は、自分の手中に収めてよく理解することを表します。意のままに操るという意味合いを含んでいないところが大きな違いです。

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「牛耳る」

牛耳る(ぎゅうじる)」は、「団体や組織を支配し、思いのままに動かす」ことを意味します。集団を物理的にも心理的にも支配する場合に使われるのが「牛耳る」です。自分中心に自分の意のままに強要する「ワンマン」という印象が強く、あまり良い意味では使われない言葉ですね。

「手中に収める」

手中に収める(しゅちゅうにおさめる)」は、「自分のものにする」という意味を持つ慣用句です。望んでいたものを確実に自分のものにすることを表します。「獲得する」「我が物にする」という意味合いが強く、手に入れることで目的を達成していて、そこからコントロールして何かに利用したいという意図は含んでいません。

「掌握」の対義語は?

「掌握」と反対の意味を持つ言葉について見ていきましょう。

「従属」

「掌握」と反対の意味を持つ言葉として、「従属(じゅうぞく)」が考えられます。「権力や威力のあるものに依存して、それにつき従うこと」「主要な事柄に対して、それに付随または支配される関係にあること」を意味する言葉です。支配される側に立つ場合に使われる言葉ですね。

「隷属」

隷属(れいぞく)」も「従属」と同じく、支配される側に立つ場合に使われる言葉です。「他の支配を受けて、その言いなりになること」「手下、配下、部下」という意味があります。

「服従」

服従(ふくじゅう)」も「掌握」と反対の意味を持つ言葉として考えられます。「命令をよく聞いて、素直につき従うこと」を意味する言葉です。支配したい側は、暴力、利益、思想などによって相手を従わせようとします。「恐怖による服従」から「合意による服従」まで、様々な形で支配者の命令や意図に従って行動することを「服従」と言うのです。

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「掌握」の英訳は?

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「掌握」を英語に訳すとどのように表現できるか見ていきましょう。

「control」

control」は、「指揮、監督する、支配す、思い通りに操る、制御する」といった意味を持つ単語です。人や組織を制御する場合、状況などを抑え込む場合、感情などを抑制する場合などに使える言葉ですよ。

「command」

command」は、「(権力・権限のある者が正式に)(…を)命令する、率いる、支配する、抑える、(…を)意のままにする、自由にできる」といった意味を持つ単語です。コンピューターにある動作を行わせるために与える命令を「コマンド」と言ったり、司令官のことを「コマンダー」と言ったりしますね。

We need to learn how to take control of the spread of infection.(私たちは感染拡大について掌握する方法を学ぶ必要があります。)

She seems to be in full command of the situation.(彼女は、状況を完全に掌握しているようだ。)

「掌握」を使いこなそう

この記事では「掌握」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「掌握」は、「手に入れたものを自分の意のままに支配できるようにしておくこと」を意味する言葉でした。組織や団体に対して使う際には肯定的な言葉として受け入れられることも多いですが、個人を相手に使う場合には、相手に誤解されないよう注意して使う必要のある言葉でしたね。支配欲の強い人だとか、被害妄想の激しい人だなどと誤解されないように、「掌握」を正しく使ってみてくださいね。

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国語言葉の意味

「掌握」の意味や使い方は?例文や類語を日本文学科卒Webライターがわかりやすく解説!

「牛耳る」

牛耳る(ぎゅうじる)」は、「団体や組織を支配し、思いのままに動かす」ことを意味します。集団を物理的にも心理的にも支配する場合に使われるのが「牛耳る」です。自分中心に自分の意のままに強要する「ワンマン」という印象が強く、あまり良い意味では使われない言葉ですね。

「手中に収める」

手中に収める(しゅちゅうにおさめる)」は、「自分のものにする」という意味を持つ慣用句です。望んでいたものを確実に自分のものにすることを表します。「獲得する」「我が物にする」という意味合いが強く、手に入れることで目的を達成していて、そこからコントロールして何かに利用したいという意図は含んでいません。

「掌握」の対義語は?

「掌握」と反対の意味を持つ言葉について見ていきましょう。

「従属」

「掌握」と反対の意味を持つ言葉として、「従属(じゅうぞく)」が考えられます。「権力や威力のあるものに依存して、それにつき従うこと」「主要な事柄に対して、それに付随または支配される関係にあること」を意味する言葉です。支配される側に立つ場合に使われる言葉ですね。

「隷属」

隷属(れいぞく)」も「従属」と同じく、支配される側に立つ場合に使われる言葉です。「他の支配を受けて、その言いなりになること」「手下、配下、部下」という意味があります。

「服従」

服従(ふくじゅう)」も「掌握」と反対の意味を持つ言葉として考えられます。「命令をよく聞いて、素直につき従うこと」を意味する言葉です。支配したい側は、暴力、利益、思想などによって相手を従わせようとします。「恐怖による服従」から「合意による服従」まで、様々な形で支配者の命令や意図に従って行動することを「服従」と言うのです。

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