国語言葉の意味

「嗤う」の意味や使い方は?例文や類語を日本語研究家がわかりやすく解説!

この記事では「嗤う」について解説する。

端的に言えば「嗤う」の意味は「相手を馬鹿にして笑う」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

博士(文学)の学位を持ち、日本語を研究している船虫堂を呼んです。一緒に「嗤う」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/船虫堂

博士(文学)。日頃から日本語と日本語教育に対して幅広く興味と探究心を持って生活している。生活の中で新しい言葉や発音を収集するのが趣味。モットーは「楽しみながら詳しく、わかりやすく言葉をご紹介」。

「嗤う」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「嗤う」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。「嗤う」の読み方は「わらう」で、発音上では「笑う」と変わらないのですが、そこに「人を馬鹿にして笑う」というニュアンスを含みます。では、今回はこの「嗤う」の詳しい意味や使い方について迫っていきましょう。

「嗤う」の意味は?

まずは、辞書の記述を参照して「嗤う」の意味を確認しておきましょう。参照する辞書は小学館の『精選版 日本国語大辞典』です。「嗤う」には、次のような意味があります。太字で示しているのが「嗤う」の語義です。

わら・う【笑・咲・嗤】

[1] 〘自ワ五(ハ四)〙

1. 喜びやおかしさなどの心情を、声または顔の表情で表出する。おかしがって顔をくずし声をたてる。哄笑(こうしょう)する。えむ。

※新訳華厳経音義私記(794)「微笑 下音焼 訓和良布」

※竹取(9C末‐10C初)「これを聞て、はなれ給ひしもとの上ははらをきりてわらひ給ふ」

※源平盛衰記(14C前)二六「二三十人が音して拍子をとり喚叫。はと笑(ワラヒ)、どと笑など」

2.つぼみが開く。花が咲く。えむ。

※俳諧・綾錦(1732)上「はら筋をよりてや笑ふ糸ざくら」

3. 果実が熟して裂け開く。えむ。

※俳諧・俳諧新選(1773)三「ほつごんと笑ふて栗の落にけり〈沙龍〉」

4. 春になって、芽が出たり、花が咲いたりして景色が明るく見える。→笑う山。

5. 縫い目が解ける。ほころびる。→わらいかける3.。

6. (「膝がわらう」の形で) (膝の)力が抜けて、がくがくする。

7. (「笑っちゃう」の形で) あまりひどくて、問題にならないように見える。笑わせる。

[2] 〘他ワ五(ハ四)〙 あざける。ばかにして声をたてたり、顔をくずしたりする。嘲笑する。あざわらう。

※書紀(720)継体元年正月(前田本訓)「汝若し、使を遣して来り告ぐること無からましかば殆に天の下に取嗤(ワラハ)れなまし」

※大慈恩寺三蔵法師伝承徳三年点(1099)七「其の工(たく)み不ることを哂(ワラ)ひたまひて」

※日本の思想(1961)〈丸山真男〉二「これら文学者のマルクス主義理解の皮相さをわらうのはたやすい」

 

出典:精選版 日本国語大辞典(小学館)「わらう」より

『精選版 日本国語大辞典』では「笑う(咲う)」と「嗤う」を同じ項目語として掲載しています。それは、日本語の「わらう」には辞書の記述の通りただ単純に「笑う」という意味と、「嗤う」の人を馬鹿にして笑う意味の両方を含むからです。しかし、長い歴史の中で漢字を取り入れた日本人は別々の漢字を使うことによって複数の意味を使い分けるすべを得ました。

それにしても、日本語の「わらう」にはいわゆる「笑い」以外にもつぼみが開くだとか、春の景色になるという意味から縫い目が解ける意味まで、たくさんの意味を持っていますね。

続いては漢字「嗤」に注目していきましょう。

「嗤う」の語源は?

「わらう」の「人を馬鹿にする」という意味に相当する「嗤う」に使われている漢字「嗤」とはどのような意味を持っているのでしょうか。大修館書店の『新漢語林』第二版を引用しましょう。

辞書の記述を参照すると、「嗤」の字にはやはり「あざわらう(馬鹿にして笑う)」という意味があります。”つくり”の部分にあたる蚩は「笑い声」を表しているという説明がありますね。この「蚩」に注目してみると、この漢字には「あなどる」という訓読みがあり、この漢字単体でも「あざわらう」という意味を持っています。

なお、「嗤」の感じは漢検1級相当の漢字です。ですから、日常生活の中で書くことを求められる場面は少ないでしょう。また、ビジネスシーンで用いることもそう無いと考えられます。それよりも、小説など文学作品などを鑑賞する際などに知識として身につけていると役に立つ漢字という位置付けになるでしょう。

\次のページで「「嗤う」の使い方・例文」を解説!/

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