
端的に言えば「嗤う」の意味は「相手を馬鹿にして笑う」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
博士(文学)の学位を持ち、日本語を研究している船虫堂を呼んです。一緒に「嗤う」の意味や例文、類語などを見ていきます。
ライター/船虫堂
博士(文学)。日頃から日本語と日本語教育に対して幅広く興味と探究心を持って生活している。生活の中で新しい言葉や発音を収集するのが趣味。モットーは「楽しみながら詳しく、わかりやすく言葉をご紹介」。
「嗤う」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「嗤う」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。「嗤う」の読み方は「わらう」で、発音上では「笑う」と変わらないのですが、そこに「人を馬鹿にして笑う」というニュアンスを含みます。では、今回はこの「嗤う」の詳しい意味や使い方について迫っていきましょう。
「嗤う」の意味は?
まずは、辞書の記述を参照して「嗤う」の意味を確認しておきましょう。参照する辞書は小学館の『精選版 日本国語大辞典』です。「嗤う」には、次のような意味があります。太字で示しているのが「嗤う」の語義です。
『精選版 日本国語大辞典』では「笑う(咲う)」と「嗤う」を同じ項目語として掲載しています。それは、日本語の「わらう」には辞書の記述の通りただ単純に「笑う」という意味と、「嗤う」の人を馬鹿にして笑う意味の両方を含むからです。しかし、長い歴史の中で漢字を取り入れた日本人は別々の漢字を使うことによって複数の意味を使い分けるすべを得ました。
それにしても、日本語の「わらう」にはいわゆる「笑い」以外にもつぼみが開くだとか、春の景色になるという意味から縫い目が解ける意味まで、たくさんの意味を持っていますね。
続いては漢字「嗤」に注目していきましょう。
「嗤う」の語源は?
「わらう」の「人を馬鹿にする」という意味に相当する「嗤う」に使われている漢字「嗤」とはどのような意味を持っているのでしょうか。大修館書店の『新漢語林』第二版を引用しましょう。
辞書の記述を参照すると、「嗤」の字にはやはり「あざわらう(馬鹿にして笑う)」という意味があります。”つくり”の部分にあたる蚩は「笑い声」を表しているという説明がありますね。この「蚩」に注目してみると、この漢字には「あなどる」という訓読みがあり、この漢字単体でも「あざわらう」という意味を持っています。
なお、「嗤」の感じは漢検1級相当の漢字です。ですから、日常生活の中で書くことを求められる場面は少ないでしょう。また、ビジネスシーンで用いることもそう無いと考えられます。それよりも、小説など文学作品などを鑑賞する際などに知識として身につけていると役に立つ漢字という位置付けになるでしょう。
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