この記事では「倣う」について解説する。

端的に言えば倣うの意味は「まねをする」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

さまざまな分野の本に触れ、知識を培ってきた「つゆと」を呼んです。一緒に「倣う」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/つゆと

子供の頃からの筋金入り読書好きライター。むずかしい言葉や複雑な描写に出会っても、ねばり強く読みこんで理解することをポリシーとする。言葉の意味も、妥協なくていねいに解説していく。

「倣う」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「倣う」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「倣う」の意味は?

「倣う」には、次のような意味があります。

《「習う」と同語源》すでにあるやり方、例をまねて、そのとおりにする。手本としてまねをする。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「倣う」

「倣う」は「ならう」と読みます。「倣う」とは、なにかを手本としてまねをすることです。

上にもあるとおり「習う」と同じ語源をもちます(語源については後述)。読み方は同じ「ならう」ですが、「倣う」は「まねをする」という意味、「習う」は「教わる・学ぶ」という意味です。「倣う」は「模倣」、「習う」は「習得」と考えると区別しやすいでしょう。

「倣う」の一般的な意味は「手本としてまねをする」ですが、「(良いことではなくても)まねをする」「決まっているとおりにおこなう」と少し違うニュアンスで使うこともあるのです。のちほど類義語のところで説明します。

「倣う」の語源は?

次に「倣う」の語源を確認しておきましょう。「倣う」の語源は、古語の「慣らふ」。「慣れる」の「慣」ですね。「慣らふ」の意味には、その字のとおり「慣れる」があるほか、「なれ親しむ」「経験して身につける」などがあります。

「慣らふ」の意味に「なれ親しむ」があることに注目です。「倣う」はかつて「なれ親しむ」という意味でも使われていました。「慣らふ」の使い方のうち「なれ親しむ」の部分が「倣う」として独立したと考えられるでしょう。

上で述べたとおり、「習う」の語源も同じ「慣らふ」になります。「慣らふ」の「経験して身につける」の意味が「習う」に通じますね。

\次のページで「「倣う」の使い方・例文」を解説!/

「倣う」の使い方・例文

「倣う」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.同業他社の戦略に倣い、サービスの内容や商品の質を高めて高級路線で展開していくことになったが、はたして吉とでるか凶とでるか。
2.これまでの実績があるとはいえ、上司からは前例に倣ってという言葉しか聞かないのも怖いことだ。
3.田舎で行われる行事は伝統に倣ったあり方でないといけないというのが、一定の年代の方たちの要望である。

~の戦略に倣う」「前例に倣う」「伝統に倣う」は、「倣う」の使い方としてよく見る例です。「手本としてまねをする」というイメージが伝わりますね。

「倣う」という言葉は、ひんぱんに使われているとはいえないかもしれません。そのため、この3つの例のような「型」のとおりに使うことが多いようです。しかし「倣う」という言葉を普段から使いこなしている人においては、この限りではありません。

「倣う」の類義語は?違いは?

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「倣う」の類義語は、「手本としてまねをする」という意味では「見習う」、「(良いことではなくても)まねをする」という意味では「追随(ついずい)」、「決まっているとおりにおこなう」という意味では「従う」があげられます。

その1「見習う」

「見習う」は、人のすることを見て学ぶことです。「少しは○○くんを見習いなさい」のように、良いことに対して使う言葉ですね。

「倣う」も「彼に倣って帰宅後はすぐに勉強することにした」のように、良いとされるものに対して使います。意味は「彼を手本にしてまねをする」ということ。「見習う」と言い換えることができます

\次のページで「その2「追随(ついずい)」」を解説!/

その2「追随(ついずい)」

「倣う」という行為は、まねをすることで自分も良くなろうとすることであり、ポジティブな行為といえます。しかし、少し違うニュアンスで「倣う」を使うときもあるのです。

例えば「右へ倣え」という言葉。「右へ倣え」とは、自分の頭で考えることをしないで、周りと同じようにすることです。「あなたは右へ倣えの行動ばかり。もう少し自分の意思を持ったらどうなの」のように使います。

この「倣う」の類義語には「追随(ついずい)」があげられるでしょう。「追随」は「あとについて従う」という意味。「多数に追随するな。自分自身で決断せよ。」とはサッチャー元イギリス首相の言葉です。「人数が多いからとついて従うのはやめなさい」という意味ですね。

その3「従う」

「倣う」には、「規則に倣って判断する」のように「決まっているとおりにおこなう」という意味もあります。

この意味の「倣う」の類義語には「従う」があげられるでしょう。「規則に従って判断する」と、スムーズに言い換えることができますね。

「倣う」の対義語は?

「倣う」の対義語には「背く(そむく)」があげられます。

「背く(そむく)」

「背く(そむく)」とは、ある人やものごとに対し、背を向ける態度をとることです。「親の教えに背く」などと使います。

「倣う」はその対象を「手本である」と認めている気持ちをもあらわす言葉です。「彼に倣ってパソコンの勉強をはじめる」と「彼をまねしてパソコンの勉強をはじめる」を比べると、「倣う」の方は対象への敬意を感じませんか。

対して「背く」の言葉からは、対象を「手本であると認められない」という感じが伝わりますよね。「倣う」とは対照的な言葉といえるでしょう。

「倣う」の英訳は?

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「倣う」の英訳には「follow suit with~」や「follow one's example」を使うと良いでしょう。

その1「follow suit with~」

「follow」は「ついていく」「あとに従う」という意味です。「suit」は日本語の「スーツ」を指す単語ですが、トランプの「同じマークの札」という意味もあるのですよ。

「follow suit with~」で「~に倣う」という意味になります。「前の人が出したのと同じマークの札を出す」という意味合いに由来しているのです。

\次のページで「その2「follow one's example」」を解説!/

The telecommunications company followed suit with the competitors and decided to lower their fees.
(その通信事業者は競合に倣い、通信料金を下げることを決定した。)

その2「follow one's example」

「example」は「例」という意味です。「follow one's example」で「○○の(過去の)例に倣う」という表現になります

He followed her father's example and entered college in London.
(彼は父に倣い、ロンドンの大学に入学した。)

「倣う」を使いこなそう

この記事では「倣う」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「倣う」は「手本としてまねをする」という意味です。「習う」と混同しやすいですが、「倣う」は「模倣」、「習う」は「習得」と考えると分かりやすいですね。

「倣う」も「習う」も語源が同じなだけあり、そもそものイメージが似ているといえます。「前例にならって」は、「前例のまねをして」とも「前例に学んで」ともとれますよね。そのような場合は「ならって」とひらがなで使って問題ないでしょう。

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国語言葉の意味

「倣う」の意味や使い方は?例文や類語を読書家Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「倣う」について解説する。

端的に言えば倣うの意味は「まねをする」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

さまざまな分野の本に触れ、知識を培ってきた「つゆと」を呼んです。一緒に「倣う」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/つゆと

子供の頃からの筋金入り読書好きライター。むずかしい言葉や複雑な描写に出会っても、ねばり強く読みこんで理解することをポリシーとする。言葉の意味も、妥協なくていねいに解説していく。

「倣う」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「倣う」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「倣う」の意味は?

「倣う」には、次のような意味があります。

《「習う」と同語源》すでにあるやり方、例をまねて、そのとおりにする。手本としてまねをする。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「倣う」

「倣う」は「ならう」と読みます。「倣う」とは、なにかを手本としてまねをすることです。

上にもあるとおり「習う」と同じ語源をもちます(語源については後述)。読み方は同じ「ならう」ですが、「倣う」は「まねをする」という意味、「習う」は「教わる・学ぶ」という意味です。「倣う」は「模倣」、「習う」は「習得」と考えると区別しやすいでしょう。

「倣う」の一般的な意味は「手本としてまねをする」ですが、「(良いことではなくても)まねをする」「決まっているとおりにおこなう」と少し違うニュアンスで使うこともあるのです。のちほど類義語のところで説明します。

「倣う」の語源は?

次に「倣う」の語源を確認しておきましょう。「倣う」の語源は、古語の「慣らふ」。「慣れる」の「慣」ですね。「慣らふ」の意味には、その字のとおり「慣れる」があるほか、「なれ親しむ」「経験して身につける」などがあります。

「慣らふ」の意味に「なれ親しむ」があることに注目です。「倣う」はかつて「なれ親しむ」という意味でも使われていました。「慣らふ」の使い方のうち「なれ親しむ」の部分が「倣う」として独立したと考えられるでしょう。

上で述べたとおり、「習う」の語源も同じ「慣らふ」になります。「慣らふ」の「経験して身につける」の意味が「習う」に通じますね。

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