この記事では「棟木」について解説する。

端的に言えば棟木の意味は「家の棟部分に配される材木」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

日本語検定一級を持ち、文学部に所属する現役大学生ライターである文学少女を呼んです。一緒に「棟木」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/文学少女

文学部で学んでいる読書好きの現役大学生。大学のみならず、日々の読書や日本語検定・漢字検定などで学んだ知識を活かして、種々の言葉を丁寧に解説する。

「棟木」の意味や語源・使い方まとめ

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建築に関する専門的用語です。建築業界は特殊な用語が多く、この語も意味を知っている人はほとんどいないのではないかと思います。しかし「棟木」自体は一般的な住宅で見られるものであり、この記事を読めば親しみが沸いてくるはずです。それでは早速「棟木」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「棟木」の意味は?

「棟木」は「むねぎ」又は「むねき」と読み、次のような意味があります。

棟に渡す横木。屋根の最上部に、桁行方向に取り付ける横木。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「棟木」

一般的な三角屋根の骨組みで想像すると分かりやすいでしょう。三角屋根は、沢山のトライアングルが並んでおりその間に屋根を貼り付けている構造となっています。その最頂部を貫き各トライアングルの辺となる柱(垂木)を固定しているのが棟木です。棟木は建物の端から端まで結ぶ形で設置するため、大黒柱に次ぐ非常に長くて太い柱を用います。実際のサイズとしては10.5〜12cm角が主流です。

また、棟木の役割は固定するだけではありません。屋根の傾斜を決定したり建物の棒心(左右対称の芯となる部分)としても重要です。これは建物の見栄えだけでなく、耐震や強度など安全安心にも直接影響する部品だといえるでしょう。更に神事や縁起にも関わりの深い部品ですが、これは後ほど説明します。なお辞書の引用にある「桁行方向」とは、建物の長辺方向のことです。

「棟木」の使い方・例文

「棟木」の使い方を例文を使って見ていきましょう。

\次のページで「「棟木」の類義語は?違いは?」を解説!/

1.最も高くに位置する棟木には、象徴的な意味が与えられることもある。
2.三角屋根は、棟木と垂木のシンプルな構造がメリットだ。
3.棟木を取り付けることを「棟上げ」と言う。

棟木は建築業界の専門用語であり、意味に幅は有りません。ここでは特に3番の文章にある「棟上げ」について説明します。これは読んで字のごとく、棟木を持ち上げ最上部に取り付ける作業を指す語です。実は日常的に使う「建前」と言う語も、元々はこの作業過程を意味するものでした。

棟木は骨組みの中で一番最後に設置する部材であるため、棟上げの日は骨組みが完成した日です。伝統的にはこの日に合わせて「上棟式」という儀式を行います。詳しい内容は省略しますが、建物を清めた後に餅を撒いたりお神酒などをお供えしたりするというものです。この儀式により、施主の家内安全や工事の無事を神様にお願いすると共に、棟梁をはじめとする業者さんや迷惑をかけている近隣の住民への感謝を示します。近年では減少傾向にありますが、もし家を建てる機会があれば検討してみてもいいかもしれませんね。

「棟木」の類義語は?違いは?

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「棟木」の類義語を見ていきましょう。部品名を表す専門用語であり厳密に同義の単語は存在しません。そのため、ここでは関連する概念を紹介する形とします。

その1「母屋」

「もや」と読みます。棟木と平行に配置され垂木を支える働きをする部材です。意味の欄でも述べたトライアングルを想像した際に、一番上の角の部分を支えているのが棟木であり、その角を挟む辺の部分(=垂木)を支えているのが母屋と理解するとよいでしょう。なお母屋は棟木と違い、複数本設置するのが基本です。

その2「軒桁」

読み方は「のきげた」です。棟木や母屋と平行に配置されている部材で、屋根組みの一番下で屋根荷重を柱に伝える木材のことを言います。母屋同様の説明をするならば、一番上の角の部分を棟木が支えその角を挟む二辺の部分(=垂木)を支えているのが母屋である時、その二辺の端(棟木から最も遠い部分)を支えているのが軒桁です。

\次のページで「「棟木」の対義語は?」を解説!/

「棟木」の対義語は?

結論から言えば、対義語はありません。類義語の欄でも述べたようにあくまで部材名であるため、意味が反対の語や対概念をあげるのは難しいと考えられます。強いていうなら垂木(意味は既に解説済み)が棟木と対のように使用されることはしばしばありますが、対義語の範疇に当てはめるのはいささか強引にすぎるでしょう。

「棟木」の英訳は?

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最後に、棟木の英訳を確認します。

その1「ridgepole」

見出しでは一語ですが、「ridge pole」と二語で表記することもあります。「ridge」は日本語の「棟」、poleは「柱」です。後者は「ポール」というカタカナ語からニュアンスが想像しやすいかもしれません。「ridge」は今回紹介した意味以外にも、「山の背」「分水嶺」「鼻梁」「うね」など様々な意味があります。これらの訳語を見渡すと、なんとなく共通する雰囲気が感じ取れるのではないでしょうか。

その2「ridge beam」

「beam」には「梁」「桁」などの意味があるため、上で紹介した「ridge」と合わせて「棟木」を意味します。カタカナ語の「ビーム」からは少し飛躍があるように感じられるかもしれません。ですが、共通のニュアンスとして例えば「長い棒状のもの」などを見出すことはできるでしょう。実際、他にも「竿」「体操器具」などの意味があります。

「棟木」を使いこなそう

この記事では「棟木」の意味・使い方・類語などを説明しました。この記事を読めば、棟木がいかに欠かせない存在かがよく分かると思います。屋根の存在など普段は意識することもほとんど無いでしょうが、その仕組や構造の一端にふれる良い機会でもあったのではないでしょうか。検索すれば分かりやすい図解なども出てくるため、興味がある人はさらに調べてみてください。またそうした建築業界用語としてだけでなく、伝統行事や慣用句などの面からも、棟木の存在がいかに我々の生活に溶け込んでいるかを感じられたはずです。これから様々な家を訪れた時には、ぜひ棟木の存在やこの記事で知ったことを意識してみて下さい。

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「棟木」の意味や使い方は?例文や類語を現役文学部生がわかりやすく解説!

1.最も高くに位置する棟木には、象徴的な意味が与えられることもある。
2.三角屋根は、棟木と垂木のシンプルな構造がメリットだ。
3.棟木を取り付けることを「棟上げ」と言う。

棟木は建築業界の専門用語であり、意味に幅は有りません。ここでは特に3番の文章にある「棟上げ」について説明します。これは読んで字のごとく、棟木を持ち上げ最上部に取り付ける作業を指す語です。実は日常的に使う「建前」と言う語も、元々はこの作業過程を意味するものでした。

棟木は骨組みの中で一番最後に設置する部材であるため、棟上げの日は骨組みが完成した日です。伝統的にはこの日に合わせて「上棟式」という儀式を行います。詳しい内容は省略しますが、建物を清めた後に餅を撒いたりお神酒などをお供えしたりするというものです。この儀式により、施主の家内安全や工事の無事を神様にお願いすると共に、棟梁をはじめとする業者さんや迷惑をかけている近隣の住民への感謝を示します。近年では減少傾向にありますが、もし家を建てる機会があれば検討してみてもいいかもしれませんね。

「棟木」の類義語は?違いは?

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「棟木」の類義語を見ていきましょう。部品名を表す専門用語であり厳密に同義の単語は存在しません。そのため、ここでは関連する概念を紹介する形とします。

その1「母屋」

「もや」と読みます。棟木と平行に配置され垂木を支える働きをする部材です。意味の欄でも述べたトライアングルを想像した際に、一番上の角の部分を支えているのが棟木であり、その角を挟む辺の部分(=垂木)を支えているのが母屋と理解するとよいでしょう。なお母屋は棟木と違い、複数本設置するのが基本です。

その2「軒桁」

読み方は「のきげた」です。棟木や母屋と平行に配置されている部材で、屋根組みの一番下で屋根荷重を柱に伝える木材のことを言います。母屋同様の説明をするならば、一番上の角の部分を棟木が支えその角を挟む二辺の部分(=垂木)を支えているのが母屋である時、その二辺の端(棟木から最も遠い部分)を支えているのが軒桁です。

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