この記事では「零落」について解説する。

端的に言えば零落の意味は「落ちぶれること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、ロシアで2年間日本語教師として働いた大学院生ライターの「むかいひろき」を呼んです。一緒に「零落」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間日本語教師として働いた経験を持つ大学院生。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「零落」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「零落」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「零落」の意味は?

「零落」には、次のような意味が国語辞典に掲載されています。

1.落ちぶれること。「―した華族の末裔(まつえい)」
2.草木の枯れ落ちること。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「れい‐らく【零落】」

零落」は「落ちぶれること」を意味し、読み方は「れいらく」です。

国語辞書には2つの意味が掲載されていることが多いですが、現在では1番目の意味で使うことがほとんどですね。よってこの記事では1番目の意味を中心に解説していきます。

零落する」という形の動詞として使用されることが多いですね。また、「零落」の意味である「おちぶれる」という動詞ですが、漢字にした場合、「落ちぶれる」はもちろんのこと、「零落れる」と書くことも可能です。難読漢字としてクイズ番組で出題されるかもしれませんね。

「零落」の語源は?

「零落」の語源はよく分かってはいません。

ただ、とても古くから使用されていた言葉であるのは間違いないようです。「零落」の使用が確認できる最も古い文献は760年ごろ(奈良時代)のもので、「先従壬申乱離已来、官書或巻軸零落、或部帙欠少」と書かれています。

また、現在国語辞典に掲載されている意味は2つですが、かつては「死ぬこと」「土地、建物などが荒れ果てること」「なくなること」など、現代よりも多くの意味で使用されていました。

「零落」の使い方・例文

「零落」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「零落」の類義語は?違いは?」を解説!/

1.世界的に見て、日本の電子機械産業はすっかり零落してしまった。
2.織田家は信長の時代に天下統一まであと一歩まで迫ったが、信長の死後は零落してしまった。
3.父の実家は明治時代まではお金持ちの財閥の名家だったらしいが、戦争で零落し、ただの庶民になったらしい。

例文1は「日本の電子機械産業はすっかり落ちぶれてしまった」という意味です。かつてSONYやPanasonicが世界の電化製品市場を席巻していた時代がありましたが、今では韓国のSamsungや中国の華為など、他国の企業にその地位を奪われてしまいましたね…。

例文2は「織田家は信長の死後に落ちぶれた」という文脈で「零落」が使用されています。織田信長は天下統一まであと一歩に迫りましたが、本能寺の変で死亡した後に天下を統一したのは豊臣秀吉。幕府を開いたのは徳川家康。秀吉の時代には、織田家はすでに一介の大名になってしまいました。

例文3は「戦争で名家だった父の実家が落ちぶれた」という文脈で「零落」が使用されています。戦争やその後の占領政策が原因で、落ちぶれてしまった名家もあるそうです。

「零落」の類義語は?違いは?

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「零落」の類義語には「凋落」と「没落」があります。意味などを確認していきましょう。

その1「凋落」

凋落」は「ちょうらく」と読み、「零落」と同じく「落ちぶれること」を意味します。

「零落」と「凋落」には意味の違いやニュアンスの違いはありません。ただ、「凋落」の方が広く一般的に使われていますね。

例文を見てみましょう。

・かつて9連覇を達成し栄華を誇ったあの球団の凋落ぶりは悲しい。
・平清盛の死後、平家は徐々に凋落していった。

その2「没落」

没落」は「ぼつらく」と読み、「1.栄えていたものが衰えること」「2.城や陣地などが敵の手に落ちること」という意味を持った言葉です。1番目の意味では「零落」と似たような意味を持っていますね。

「零落」との違いは、そのニュアンスです。文脈によっては「没落」は、「すべてを失った」「滅亡した」というニュアンスを含む場合があります。例えば、「名家が零落した」といった場合は、家計が苦しく一家全体が経済的に厳しい状況が想起されますが、「名家が没落した」といった場合、すでにお金はなくなっており、家計の状況は「零落」よりもさらに苦しい状況が想起される場合がありますね。

例文を見てみましょう。

\次のページで「「零落」の対義語は?」を解説!/

・壇ノ浦の戦の後、平家の没落はさらに加速した。
・日露戦争での敗北で、ロシア帝国の没落は決定的となった。

「零落」の対義語は?

「零落」の対義語には、「栄華」「栄達」があります。意味などを確認していきましょう。

その1「栄華」

栄華」は「権力や財力によって世にときめき、栄えること」という意味の言葉です。「落ちぶれること」を意味する「零落」とはまさに反対の言葉と言えるでしょう。

「零落」は「零落する」という動詞としての使い方がありますが、「栄華」には「栄華する」のような動詞としての使い方はありません。「栄華を極める」「栄華を誇る」といった言い方をします。

例文を見てみましょう。

・1590年、豊臣秀吉はついに天下を統一し、その栄華を極めた。
・かつて世界各地に植民地を持ったスペインは、「日の沈まぬ帝国」と呼ばれ栄華を誇った。

その2「栄達」

栄達」は「出世すること」「高い地位、身分を得ること」という意味の言葉です。「落ちぶれること」を意味する「零落」とはまさに反対の言葉と言えるでしょう。

堅い言葉であるため、日常生活ではまず使用されません。ビジネス場面や表彰時の文言として使用されることが多いですね。また、小説でも比較的多く使用されています。例文を見てみましょう。

・山田部長、昇進おめでとうございます。さらなるご栄達を一同お祈り申し上げております。
・田中は警視庁の中で順調に栄達を重ねていった。

「零落」の英訳は?

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「零落」を英語であらわすとどうなるのか、確認していきましょう。

\次のページで「「ruin」」を解説!/

「ruin」

ruin」は「破滅」「滅亡」「没落」「零落」…などの意味を持った英単語です。名詞としての用法も動詞としての用法もあります。日本語では「零落」と「没落」の間に少し違いがありましたが、英語ではないと考えてよいでしょう。

例文を見てみましょう。

The Hosokawa clan was deprived of all positions of shugoshiki and went to ruin.

細川氏はこの乱によってすべての守護職を解任され零落した。

「零落」を使いこなそう

この記事では「零落」の意味・使い方・類語などを説明しました。

零落」は「落ちぶれること」を意味し、「零落する」という形の動詞として使用されることが多い言葉です。より一般的に使用される「凋落(ちょうらく)」と同じ意味を表します。

対義語には「栄華」「栄達」が該当し、英語表現で最も近いものは「ruin」です。

日常会話ではあまり使われない言葉ですが、目にしたときに意味をしっかり把握できるようにしておきましょう。

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国語言葉の意味

「零落」の意味や使い方は?例文や類語を日本語教師の大学院生がわかりやすく解説!

この記事では「零落」について解説する。

端的に言えば零落の意味は「落ちぶれること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、ロシアで2年間日本語教師として働いた大学院生ライターの「むかいひろき」を呼んです。一緒に「零落」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間日本語教師として働いた経験を持つ大学院生。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「零落」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「零落」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「零落」の意味は?

「零落」には、次のような意味が国語辞典に掲載されています。

1.落ちぶれること。「―した華族の末裔(まつえい)」
2.草木の枯れ落ちること。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「れい‐らく【零落】」

零落」は「落ちぶれること」を意味し、読み方は「れいらく」です。

国語辞書には2つの意味が掲載されていることが多いですが、現在では1番目の意味で使うことがほとんどですね。よってこの記事では1番目の意味を中心に解説していきます。

零落する」という形の動詞として使用されることが多いですね。また、「零落」の意味である「おちぶれる」という動詞ですが、漢字にした場合、「落ちぶれる」はもちろんのこと、「零落れる」と書くことも可能です。難読漢字としてクイズ番組で出題されるかもしれませんね。

「零落」の語源は?

「零落」の語源はよく分かってはいません。

ただ、とても古くから使用されていた言葉であるのは間違いないようです。「零落」の使用が確認できる最も古い文献は760年ごろ(奈良時代)のもので、「先従壬申乱離已来、官書或巻軸零落、或部帙欠少」と書かれています。

また、現在国語辞典に掲載されている意味は2つですが、かつては「死ぬこと」「土地、建物などが荒れ果てること」「なくなること」など、現代よりも多くの意味で使用されていました。

「零落」の使い方・例文

「零落」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

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