この記事では「恩に着る」を解説する。
「恩に着る」は簡単にいうと「ありがとう」。相手の親切や優しさに感謝する表現です。よく使われ、耳にする言葉、より詳しい意味・使い方を知って「恩に着る」を使いこなせるようになろう。
今回、語学系主婦ライターの小島ヨウを呼んです。一緒に「恩に着る」を説明していく。

ライター/小島 ヨウ

言葉の使い方、漢字の意味に興味を持ち、辞典で調べまくるアナログ主婦ライター。分かりやすく、読みやすい文章を心がけている。

「恩に着る」の意味・使い方

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明日は大事なプレゼン、資料は作成途中。でも体調不良で出勤できない、どうしよう…と苦悩していたら、先輩がフォローしてくれた。資料完成、今日はゆっくり休んで明日一緒にがんばろうと労いの連絡が。感激して「恩に着ます…!」と返信した。こんなシチュエーションに使われる慣用句「恩に着る」、詳しい意味や使い方をチェックしていきましょう。

「恩に着る」の意味

まず「恩に着る」を辞書で調べてみます。

受けた恩をありがたく思う

出典:デジタル大辞泉(小学館)「恩(おん)に着(き)る」

「恩」とは人から受けたありがたい行為・恵みや情けのことです。「恩」は本来、神の恵み(愛)や仏の恵み(慈悲)などをいうため、目上の人から受ける~と意味に書かれることも。また鎌倉時代の「御恩と奉公」から主君に対する奉公からいただく所得や土地のこと、給与や手当の意味もあります。

「着る」は、自分の身に引き受ける意味があり、相手の行為をありがたく受けること。恩を受けますが「恩を着る」はNG助詞は作用の目的や受け身などの意を持つ「に」を使用し「恩に着る」です。

「恩に着せる」は好意の押し付け、ありがた迷惑!

「恩に着せる」と使役の形にすると意味が変わってきます。親切や好意を相手に押し付け、ありがたく思わせること。あの時助けたでしょう、ちょっとは協力してよ、と恩返しを要求するようないやらしさを感じますね。相手に感謝を求める厚かましい行為を表して「恩着せがましい」とも使われます。

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「恩に着る」の使い方・例文

意味が分かったところで、使って確認しましょう。

1.飲み会、意中の彼女と同席にしてくれた。幹事の友人、恩に着る!
2.テスト範囲の授業を欠席。恩に着るからと頼んで級友にノートを貸りた。
3.主任のご指導で目標を達成することが出来ました、恩に着ます。

例文の1.はスタンダードな使い方です。彼の気持ちを汲んだ友人の配慮、ありがたく楽しい時間を過ごしたことでしょう。2.の例文は口説き文句のようですね。感謝する、一生のお願いだからと頭を下げた状況かと。3.の例文はビジネスシーン、丁寧語は「恩に着ます」です。「恩にきります」は誤用なのでご注意を。

「恩に着る」の類義語

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では親切をありがたく思うという別の表現をみていきましょう。

「感謝(かんしゃ)」:ありがとうの気持ちを表すこと

説明しなくとも「感謝」はありがたいと思う気持ち、それを表すことですね。「感」は心が動くこと・物事の様子、「謝」は告げること・お礼をいうことのほか、あやまる・わびる・しりぞける・おとろえるなどの意味があります。使い方は「お気遣いに感謝します」「祖母からの贈り物に感謝の気持ちでいっぱいになった」などです。

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「謝恩(しゃおん)」:受けた恩に感謝すること

「謝恩」は受けた恩に感謝の気持ちを表すことです。感謝は大小様々なことで感じ、言葉でも簡単に示すことが出来ますが、謝恩は具体的な行動が伴います。例えば「卒業式の後、恩師を招いて謝恩会を開いた」「常日頃の感謝を込めてお得意様限定の謝恩セールを開催した」などです。

「おかげ」:受けた恩恵

「おかげさまで元気にしております」など、よく使われる「おかげ」は漢字で「御蔭」「御陰」と書き、他の人から受けた力添え・恩恵、また神仏の助けを意味します。「おかげさま」を使う場合は、冒頭に置きましょう、「入学しました、おかげさまです」とは使いません。

また「おかげ」にはあることがもたらす結果という意味もあり、プラスマイナスどちらでも使用可能。「大会に優勝できたのはチーム皆のおかげだ」、一方で「彼がミスしたおかげで優勝を逃した」とも使います。

「恩に着る」の対義語は何だろう

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それでは、恩を受けても感謝しない意味を持つ対義語的な言葉をいくつか紹介しましょう。

「恩を仇(あだ)で返す」:恩ある相手に害をなす

ことわざ「恩を仇で返す」は、親切にしてくれた相手に恩を返さないだけでなく害を加えるという意味です。人として道徳的にどうか、非常識に感じますね。

例えば、後継ぎとしてお菓子作りのノウハウを学んだ彼が師匠を裏切り独立。秘伝のレシピを自身オリジナル商品として販売、本家をしり目に大繁盛した。これは「彼は恩を仇で返した」と表せるでしょう。レシピ盗んでいない、繫盛は僕の手腕と主張されると師匠は何も言えないかもしれません、切ない例です。

「逆恨み(さかうら・み)」:親切を曲解して恨むこと

「逆恨み」には二つの意味があり、一つは、こちらが恨んでもよい相手に逆に恨まれること、二つ目は親切を逆に悪く取って恨むことです。

「恩を仇で返す」の例えの設定で続けます。一つ目の意味の例は、レシピを盗んで開業した彼、だが鳴かず飛ばずで店は閑古鳥。「師匠のレシピが悪いと逆恨みした」です。二つ目の意味の例は、経営難の彼の店を心配した師匠が様子見に来て、アドバイスをした。なのに「あざ笑いに来たと逆切れした彼は、師匠を逆恨みした」です。やっかいな彼ですね。

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「恩に着る」を英訳してみよう

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それでは「恩に着る」を英語でどう表現するのか探ってみましょう。一番簡単なのは感謝の意味、ごぞんじ「thank」ですね。「She thanked me for my help.(手助けに彼女は感謝した)」と使います。ここでは受けた親切・恩を「借り」として「owe」をご紹介しましょう。

「owe」:借りている・おかげである

「恩に着る」は「借りができた」と言いかえることができますね、「owe」は借りている・負っている・おかげであるといった意味の動詞です。「I owe you」を略した「IOU」は「借用書」の意味ですが、SNSなどで恩に着ると感謝の意で文末に添えることも。では使い方を例文で確認しましょう。

・He owes his brother 1000yen.
(彼は弟に1,000円借りている)
・May I borrow your bike? I owe you one.
(自転車借りて良い? 恩に着るよ)
・I owe my passing an exam to teacher.
(先生のおかげで試験に合格しました)

無償の「恩に着る」大事にしよう

この記事では「恩に着る」の意味・使い方・類語などを説明しました。受けた恩に感謝する意味、類義語は「感謝」、対義語は「恩を仇で返す」、英語は「thank」や「owe」を使うことが分かりましたね。

恩という漢字は因と心に分けられます。因は上から下に押さえる意味があり、心にのしかかって印象を残すものが「恩」なのです。恵み・情けを与えてくれた人・親切な出来事が心に残る、当たり前ではない有難(ありがた)い気持ちを大事にしたいですね。

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国語言葉の意味

「恩に着る」と「恩に着せる」はありがたさがまったく違う!意味や使い方・類語などを語学系主婦ライターがわかりやすく解説

この記事では「恩に着る」を解説する。
「恩に着る」は簡単にいうと「ありがとう」。相手の親切や優しさに感謝する表現です。よく使われ、耳にする言葉、より詳しい意味・使い方を知って「恩に着る」を使いこなせるようになろう。
今回、語学系主婦ライターの小島ヨウを呼んです。一緒に「恩に着る」を説明していく。

ライター/小島 ヨウ

言葉の使い方、漢字の意味に興味を持ち、辞典で調べまくるアナログ主婦ライター。分かりやすく、読みやすい文章を心がけている。

「恩に着る」の意味・使い方

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明日は大事なプレゼン、資料は作成途中。でも体調不良で出勤できない、どうしよう…と苦悩していたら、先輩がフォローしてくれた。資料完成、今日はゆっくり休んで明日一緒にがんばろうと労いの連絡が。感激して「恩に着ます…!」と返信した。こんなシチュエーションに使われる慣用句「恩に着る」、詳しい意味や使い方をチェックしていきましょう。

「恩に着る」の意味

まず「恩に着る」を辞書で調べてみます。

受けた恩をありがたく思う

出典:デジタル大辞泉(小学館)「恩(おん)に着(き)る」

「恩」とは人から受けたありがたい行為・恵みや情けのことです。「恩」は本来、神の恵み(愛)や仏の恵み(慈悲)などをいうため、目上の人から受ける~と意味に書かれることも。また鎌倉時代の「御恩と奉公」から主君に対する奉公からいただく所得や土地のこと、給与や手当の意味もあります。

「着る」は、自分の身に引き受ける意味があり、相手の行為をありがたく受けること。恩を受けますが「恩を着る」はNG助詞は作用の目的や受け身などの意を持つ「に」を使用し「恩に着る」です。

「恩に着せる」は好意の押し付け、ありがた迷惑!

「恩に着せる」と使役の形にすると意味が変わってきます。親切や好意を相手に押し付け、ありがたく思わせること。あの時助けたでしょう、ちょっとは協力してよ、と恩返しを要求するようないやらしさを感じますね。相手に感謝を求める厚かましい行為を表して「恩着せがましい」とも使われます。

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