この記事では「何とはなしに」について解説する。
端的に言えば「何とはなしに」の意味は「どうといって特別の理由もなしに、なんとなく、どこかしら」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「何とはなしに」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/flicker

仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「何とはなしに」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「何とはなしに」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「何とはなしに」の意味は?

「何とはなしに」には、次のような意味があります。

事物、状況、原因などに関して、これと特定し得ないさま。どうということもなく。

出典:コトバンク

「何とはなしに」は漠然と感じる様子を表し、述語にかかる修飾語として用いられます。ややかたい文章語で日常会話にはあまり用いられません。また客観的な理由はありませんが、話者自身の主観的な感覚として漠然と感じるというニュアンスで用いられ、話者以外の対象の状態を表す場合には用いられません。また理由や目的もなく無意識に行動する様子を表し、自然の成り行きに任せる暗示があるでしょう。

「何とはなしに」の語源は?

次に「何とはなしに」の語源を確認しておきましょう。「何とはなしに」は「何とやら」から派生した言葉。「何とやら」ははっきりしない物事を示したり、婉曲に言ったりする時に使う語です。「なんとか、なんとなく、なんだか、どうにか」といった意味を表します。

\次のページで「「何とはなしに」の使い方・例文」を解説!/

「何とはなしに」の使い方・例文

「何とはなしに」の使い方について例文を挙げて解説していきます。この言葉は、たとえば以下のように用いられますよ。

1.文雄は彼女の顔を見るのが何とはなしに後ろめたかった。少し距離を置いて考えてみたけど無責任な回答ばかりが頭に浮かんだ。最後に会った時言われた言葉が今時分思い起こされた。

2.何とはなしに歩いていたら専門店の前に来ていた。「お客様、何かお探しのものはございますか」と声を掛けられ、特別欲しいものはなかったが店内をぐるぐる見て回り結局、百科事典と国語辞典、佐竹秀雄と樺島忠夫の小説を買って帰った。

3.出版関連の会社に就職したと増田や植垣から話は聞いていたけど、信ぴょう性に欠けていたし、何より直接本人に会って確かめたかったので、何とはなしに彼女に話しかけてみることにした。

例文1からはなかなか声を掛けられずにいる様子が、例文2からは何も考えずに歩いていたらたまたま店の前に来ていたということが読み取れます。また例文3は何気なさをよそおいながら話しかけてみようとする様子が伺えますね。

「何とはなしに」の類義語は?違いは?

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「何とはなしに」と似たような意味をもつ言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「なんとなく」

「なんとなく」は理由や目的もなく無意識に行動する様子を表し、動詞にかかる修飾語として用いられますよ。客観的な根拠や明確な目的がなくその動作だけを行うというニュアンスです。また自然の成り行きに任せる無意識の暗示があります。例えば「花子ちゃんはなんとなくその辺に立っててください」は第三者に意図的だと気づかれないように何気なくというニュアンスで無造作の暗示を伴いますし、また「人生の目的も定めずになんとなく毎日を過ごす若者が多くなった」は結果として有意義な行為を行わないという意味になり、無関心の暗示を伴うでしょう。

この「なんとなく」は「何気なく」に似ていますが、「何気なく」は行動するにあたって明確な意図や意識が働いていない暗示があります。ちなみに「何とはなしに」との違いは、「何とはなしに」は話者自身の主観的な感覚として漠然と感じるというニュアンスで用いられ、話者以外の対象の状態を表す場合には用いられるという点です。

\次のページで「その2「何の気なしに」」を解説!/

その2「何の気なしに」

「何の気なしに」は明確な意図や理由もなく行動する様子を表します。「彼女は何の気なしに夫の鞄を開けた」や「何の気なしに見上げた空に虹がかかっていた」など動作にかかる修飾語として用いられますよ。また、行動するに際して主体が客観的な理由や明確な意図をもっていないというニュアンスで無意識と無関心の暗示があるでしょう。

「何の気なしに」は「なにげなく」や「何とはなしに」に似ていますが、「なにげなく」は意図がない様子が外見に表れているというニュアンスで、実際には意図があることを隠している場合にも用いられますし、「何とはなしに」は理由や目的がないことを強調するニュアンスで自然の成り行きに任せる暗示があります。

その3「知らず知らず」

「知らず知らず」は行為に対する自覚がない様子を表す副詞行為を行うにあたって主体が自覚していないという意味で用いられ、結果としてある傾向にはまっていたという暗示もあるでしょ。例えば「彼の手紙を見たのは知らず知らずの行為だった」は名詞にかかる修飾語、また「私たちは知らず知らず人を傷つけてしまう」は述語にかかる修飾語の用法です。

「知らず知らず」は「おもわず」や「つい」に似ていますが、「おもわず」は行為の仕方が本能的・衝動的で一回きりの行為について用いられますし、「つい」は抑制が欠如している結果として習慣的・本能的な行為になりがちな傾向を暗示しますよ。なお「何とはなしに」との違いは、「何とはなしに」は理由や目的もなく無意識に行動する様子を表し、自然の成り行きに任せる暗示がある点です。

「何とはなしに」の対義語は?

「何とはなしに」と反対の意味に近い言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「わざとらしい」

「わざとらしい」は思っていないことを故意に行う様子を表します。「彼女は姑にわざとらしい笑顔を作った」「主任は部下の手前わざとらしく部長に最敬礼した」など「わざとらしい」は、その気持ちがないのに故意にオーバーに振舞うことが不快だという意味の語で、真実の気持ちがないことが不自然な行為に表れているニュアンスがあるでしょう。また「わざとらしい」は「あてつけがましい」に似ていますが、「わざとらしい」には相手を傷つける悪意の暗示はありません。ちなみに、故意に行う点では「れいれいしい」にも似ていますが、「れいれいしい」は外見を飾る場合に限って用いられますよ。

その2「きっかり」

「きっかり」は厳密に正確である様子を表す表現。例えば「私の任期が終わるまできっかり一年だ」は数量の前に付く用法、「その特急は毎時きっかりに東京駅を発車する」は数量や時刻の後ろに付く用法です。また「現金と伝票がきっかり合うとほっとする」などのように数量や時刻が厳密で正確に合致している様子を表しますよ。なお「きっかり」は「かっきり」や「ちょっきり」によく似ていますが、「かっきり」はややくだけた表現で数自体が不定のときにも用いられますし、「ちょっきり」は余分がなくて厳密であるニュアンスになります。

「何とはなしに」の英訳は?

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「何とはなしに」の英訳にはどのようなものがあるのでしょうか。英語で「何とはなしに」と言い表す時の例をさっそく見ていきましょう。

\次のページで「「vaguely」」を解説!/

「vaguely」

「vaguely」は「曖昧に、何となく、漠然と、何とはなしに」という意味です。「He somehow had a feeling that something was going to happen today vaguely」で「彼は何とはなしに今日は何か起こりそうな気がした」、「I somehow sensed vaguely that she was feeling hungry」で「私は彼女が空腹を感じていると何とはなしに感じました」と表現することができますよ。

「何とはなしに」を使いこなそう

この記事では「何とはなしに」の意味・使い方・類語などを説明しました。「何とはなしに」は漠然と感じる様子を表し、話者自身の主観的な感覚として漠然と感じるというニュアンスで用いられ、話者以外の対象の状態を表す場合には用いられないと解説しましたね。また「何とはなしに」は「なんとなく」に似ていますが、「なんとなく」のほうが日常的で普通に用いられ感覚的な表現になっています。そのため、具体的な身体症状などを漠然と感じるという場合には「何とはなしに」でなく「なんとなく」を用いますよ。例えば「今日は何とはなしに頭が痛い」ではなく「今日はなんとなく頭が痛い」となります。覚えておきましょう。

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国語言葉の意味

【慣用句】「何とはなしに」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「何とはなしに」について解説する。
端的に言えば「何とはなしに」の意味は「どうといって特別の理由もなしに、なんとなく、どこかしら」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「何とはなしに」の意味や例文、類語などを見ていきます。

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仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「何とはなしに」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「何とはなしに」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「何とはなしに」の意味は?

「何とはなしに」には、次のような意味があります。

事物、状況、原因などに関して、これと特定し得ないさま。どうということもなく。

出典:コトバンク

「何とはなしに」は漠然と感じる様子を表し、述語にかかる修飾語として用いられます。ややかたい文章語で日常会話にはあまり用いられません。また客観的な理由はありませんが、話者自身の主観的な感覚として漠然と感じるというニュアンスで用いられ、話者以外の対象の状態を表す場合には用いられません。また理由や目的もなく無意識に行動する様子を表し、自然の成り行きに任せる暗示があるでしょう。

「何とはなしに」の語源は?

次に「何とはなしに」の語源を確認しておきましょう。「何とはなしに」は「何とやら」から派生した言葉。「何とやら」ははっきりしない物事を示したり、婉曲に言ったりする時に使う語です。「なんとか、なんとなく、なんだか、どうにか」といった意味を表します。

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