この記事では「むざむざ」について解説する。
端的に言えば「むざむざ」の意味は「残念に思いながら何のなすこともないさま、惜しげのないさま、無造作なさま」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「むざむざ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

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仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「むざむざ」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「むざむざ」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「むざむざ」の意味は?

「むざむざ」には、次のような意味があります。

[副]価値あるものが無造作に失われるさま。やすやすと。「せっかくのチャンスをむざむざ失ってたまるか」「むざむざ(と)捨てるわけにはいかない」

出典:コトバンク

「むざむざ」は価値のある物が失われるのを残念に思う様子を表します。また、話者にとって非常に価値のある対象がほうっておけば失われてしまうのを残念に思う様子を表し、対象への愛惜・反省・慨嘆・悔恨・怒りの暗示を伴うでしょう。

「むざむざ」の語源は?

「むざむざ」の語源ははっきりとはわかっていませんが、漢字では「無残無惨」と書きます。それでは「無残無惨」の漢字の成り立ちについて説明しましょう。「無」は人がたもとに飾りをつけて踊っている姿を描いた字です。後に「ない」意味に使われるようになりました。また「残」は死をあらわす「かばねへん」と切る意味の音を示す「せん」とを合わせた字。切り殺すことから「そこなう」「むごい」意味を表しますよ。そして「惨」は心をあらわす「りっしんべん」と針の意味の音を示す「参」とを合わせた字。心を針で指すことから「こころがいたむ」意味を表します。

\次のページで「「むざむざ」の使い方・例文」を解説!/

「むざむざ」の使い方・例文

「むざむざ」の使い方について例文を挙げて解説していきます。この言葉は、たとえば以下のように用いられますよ。

1.現在の年齢のことも考えると絶好の機会をむざむざ捨てるに忍びない。

2.誰も見る者のないまま桜はむざむざと散った。記念受験と言っていた彼の気持ちを連想させる。

3.この包蔵の一部をむざむざと彼奴に取られてなるものか。すべてはこの財団組織のものだ。

4.そのページをクリックしたばっかりにむざむざと詐欺サイトに登録してしまった。プレミアム会員の方への無料サービス案内というお知らせが届いたので履歴を調べてみると一覧にデータが残っていた。

例文1からは挑戦できる年齢が制限されているにもかかわらず、せっかく巡ってきたチャンスを逃すことになってしまい嘆き悲しんでいる様子が伺えますし、例文2からは記念受験を散りゆく桜に例えることで、無惨な結果に終わってしまった彼の切ない心情を推し量っていることが分かります。また、例文3からは保有物を誰にも渡したくないという欲深い思いが伝わってきますし、例文4からは誤って疑わしいサイトに個人情報をさらしてしまったという後悔の念が読み取れますよ。

「むざむざ」の類義語は?違いは?

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「むざむざ」と似たような意味をもつ言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「らくらく」

「らくらく」は十分余裕があって快い様子を表し、述語にかかる修飾語として用いられます。「らくらく」は「らく」の意味を強調した語で、精神的に余裕があって目標達成が容易であるという場合がもっとも多く、ついで肉体的に余裕があって快い場合に用います。ただ経済的に余裕があるという意味ではあまり用いません。また「むざむざ」との違いは「むざむざ」は対象がほうっておけば失われてしまうのを残念に思う様子を表すという点でしょう。

\次のページで「その2「苦も無く」」を解説!/

その2「苦も無く」

「苦も無く」は能力や労力を必要としない様子を表し、動詞にかかる修飾語として用いられます。ちなみに能動的な行為については用いられません。また、主体が行う能動的な達成行為に労力や能力を必要としない様子を表し、目的を達成することについての気安さの暗示があるでしょう。対象はもともと克服・解決するのに労力や能力を必要とするものであるという暗示があります。なお「むざむざ」との違いは、「むざむざ」は非常に価値のある対象がほうっておけば失われてしまうのを残念に思う様子を表すという点。

その3「手もなく」

「手もなく」は非常に簡単に攻略される様子を表す副詞。そして非常に簡単に攻略されることについて反省や侮蔑の暗示がこもります。また「やられる・だまされる」など被害を表す動作にかかる修飾語になりますよ。「てもなく」は「なんなく」に似ていますが、「なんなく」は対象を攻略するのに大きな労力を必要としないという意味で、攻略する側に視点があるため対象は人間以外にも用いられます。ちなみに「むざむざ」との違いは、「むざむざ」は失われた対象への愛惜・反省・慨嘆・悔恨・怒りの暗示を伴うという点でしょう。

「むざむざ」の対義語は?

「むざむざ」と反対の意味に近い言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「けんめいに」

「けんめいに」は全力をあげて行動する様子を表す副詞です。手段を選ばずに全力を尽くして努力する様子を表し切迫感の暗示があるでしょう。「新入社員ははじめ会社に慣れるのにけんめいだ」は述語、「瀕死の患者を救うためけんめいの努力が続く」は名詞にかかる修飾語、「村人は火砕流からけんめいに逃げた」は述語にかかる修飾語の用法です。なお「けんめいに」は「いっしょうけんめい」や「いっしん」に似ていますが、「いっしょうけんめい」のほうが程度が軽く日常的な挨拶などについても用いられるでしょう。そして「いっしんに」は熱中の仕方が静かでひたむきである暗示があります。

その2「いっしんに」

「いっしんに」は心を集中する様子を表しますよ。例えば「彼女は恋人に逢いたいいっしんで放心した」は「…したい一心で…する」という動詞にかかる修飾語となり、「とても…したいので…する」という意味になりますし、「夫婦は家を建てようといっしんふらんに働いた」の「一心不乱」は「一心」の意味を強調します。「いっしんに」はある目的を達成するために心を集中してある行為を行う様子を表す語で、その熱中のしかたはしばしば静かでひたむきである暗示があるでしょう。そのため大きな音声を伴う熱意にはふつう用いられません。例えば「僕は大声で一心に応援した」とはならず「僕は大声で一生懸命応援した」となりますよ。

その3「思い切り」

「思い切り」は一度決断したら何も考えない様子を表しますよ。例えば「阪神の新庄は思い切りのよいスイングをする」は一度こうと決めたらそれ以外の可能性は考えずにバットを振るという意味、また「彼女は会社を辞めるかどうか、なかなか思い切りがつかなかった」の「思い切りがつかない」はきっぱりと決断できず、いつまでも思い悩んでいるという意味です。「いさぎよい」などにも通じますが、一度決心したら状況の変化はあまり考えずに初心を貫く態度にプラスの評価を与える日本文化ならではの語だと言えるでしょう。

\次のページで「「むざむざ」の英訳は?」を解説!/

「むざむざ」の英訳は?

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「むざむざ」の英訳にはどのようなものがあるのでしょうか。英語で「むざむざ」と言い表す時の例をさっそく見ていきましょう。

「easily」

「easily」は「容易に、苦も無く、容易く」という意味です。「You can't lose this position in a mess easily」で「むざむざとこの地位を失うことはできない」、「I was runaway by the criminal in a little while easily」で「あと少しのところでむざむざ犯人に逃げられてしまった」と表現することができますよ。

「むざむざ」を使いこなそう

この記事では「むざむざ」の意味・使い方・類語などを説明しました。「むざむざ」は話者にとって非常に価値のある対象がほうっておけば失われてしまうのを残念に思う様子を表す擬態語で、対象への愛惜・反省・慨嘆・悔恨・怒りの暗示を伴う表現だと解説しましたね。また「むざむざ」は「みすみす」に似ていますが、「みすみす」は当然得られるべき結果が得られないのを看過する様子を表し、話者の反省・慨嘆・怒りの暗示があります。そのため「むざむざ犯人に逃げられてしまった」は「もう少しで捕まえられたのに悔しい」となり、「みすみす犯人に逃げられてしまった」は「目の前で犯人に逃走された」という意味になりますよ。

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国語言葉の意味

「むざむざ」の意味や使い方は?例文や類語をプロダクション編集者がわかりやすく解説!

この記事では「むざむざ」について解説する。
端的に言えば「むざむざ」の意味は「残念に思いながら何のなすこともないさま、惜しげのないさま、無造作なさま」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「むざむざ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

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仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「むざむざ」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「むざむざ」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「むざむざ」の意味は?

「むざむざ」には、次のような意味があります。

[副]価値あるものが無造作に失われるさま。やすやすと。「せっかくのチャンスをむざむざ失ってたまるか」「むざむざ(と)捨てるわけにはいかない」

出典:コトバンク

「むざむざ」は価値のある物が失われるのを残念に思う様子を表します。また、話者にとって非常に価値のある対象がほうっておけば失われてしまうのを残念に思う様子を表し、対象への愛惜・反省・慨嘆・悔恨・怒りの暗示を伴うでしょう。

「むざむざ」の語源は?

「むざむざ」の語源ははっきりとはわかっていませんが、漢字では「無残無惨」と書きます。それでは「無残無惨」の漢字の成り立ちについて説明しましょう。「無」は人がたもとに飾りをつけて踊っている姿を描いた字です。後に「ない」意味に使われるようになりました。また「残」は死をあらわす「かばねへん」と切る意味の音を示す「せん」とを合わせた字。切り殺すことから「そこなう」「むごい」意味を表しますよ。そして「惨」は心をあらわす「りっしんべん」と針の意味の音を示す「参」とを合わせた字。心を針で指すことから「こころがいたむ」意味を表します。

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