その2「えっちらおっちら」
「えっちらおっちら」は大きな労力を費やして一歩一歩歩く様子を表します。「老母は土産を山ほどかかえてえっちらおっちら田舎から出てきた」など単独で述語にかかる修飾語として用いられますよ。また、大きな労力を費やしながら実際に一歩一歩歩く場合と、実際に歩くかどうかに関係なく大きな労力を伴って目的地へ行く場合とがあります。どちらも話者の軽い同情と慨嘆の暗示があるでしょう。
なお「えっちらおっちら」は「てくてく」に似ていますが、「てくてく」は主体の労力と不本意の暗示があり、しばしば長距離を歩いたり乗り物に乗るべきところをあえて歩いたりする場面で用いられます。ちなみに「とぼとぼ」との違いは「とぼとぼ」は見る者の同情の暗示があるという点です。
その3「てれんこてれんこ」
「てれんこてれんこ」は主体がゆっくり歩いて来るのを見て焦燥を感じる様子を表しますよ。「何てれんこてれんこ歩いてんだよ。バカ!」など単独で述語にかかる修飾語になります。くだけた表現の現代語で主に若い人のくだけた会話で用いられるでしょう。また、主体がゆっくりやって来ることについて話者の焦燥・怒り・侮蔑・嫌悪の暗示があります。
「てれんこてれんこ」は「ちんたらちんたら」や「えっちらおっちら」に似ていますが、「ちんたらちんたら」は動作や進捗が遅くて話者が焦燥を感じる様子を表し、話者の怒り・焦燥・侮蔑の暗示がありますし、「えっちらおっちら」は主体が大きな労力を費やして一歩一歩歩くことについて、見る者が軽い同情と慨嘆の暗示を伴って述べます。ちなみに「とぼとぼ」との違いは「とぼとぼ」は一歩一歩歩く様子を表すという点でしょう。
「とぼとぼ」の対義語は?
「とぼとぼ」と反対の意味を持つ言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。
その1「ほくほく」
「ほくほく」は喜びを隠しきれない様子を表す擬態語。例えば「予想外の大雪にスキー場はほくほく喜んでいる」は単独で述語にかかる修飾語になりますし、「彼はボーナスが良かったらしくほくほく顔だ」は「ほくほく顔」の形で名詞を作ります。臨時の高収入など主体にとって予想外の非常に好都合なことが起こったために、喜びを隠しきれずに盛んにほほえむ様子を表し、隠ぺい・満足の暗示がありますよ。なお主体が予想していることや、公に表明してもはばからない喜びの場合については用いません。
その2「うまうま」
「うまうま」は要領よく事を運ぶ様子を表します。「どうやら奴にうまうまと一杯食わされたようだ」や「ライバルにうまうまと仕事を持っていかれた」は受け手側の表現で、「と」がついて述語にかかる修飾語になりますよ。また「捕虜たちは縄を使ってうまうまと逃げ延びた」は主体の側の表現であり、いずれも行為主体の狡猾や要領のよさと話者の反省の暗示があるでしょう。この「うまうま」は「まんま」に似ていますが、「まんま」は主体の狡猾・怜悧・要領のよさと話者の感嘆・反省の暗示、被害者の慨嘆の暗示が相対的に強いです。
その3「うはうは」
「うはうは」は非常に喜んでいる様子を表します。「予期せぬ大儲けに業者はうはうは喜んだ」や「去年は親父の遺産は転がり込むわ、美人の女房はものにできるわで、まさにうはうはだったね」など下品なニュアンスがあり、あまり高尚な喜びについては用いられません。また、金もうけなどの喜びが非常に大きくて笑いが止まらない様子を表し、軽率さの暗示もありますよ。
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