この記事では「とぼとぼ」について解説する。
端的に言えば「とぼとぼ」の意味は「元気なく歩くさま、歩みのしっかりしないさま」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「とぼとぼ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/flicker

仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「とぼとぼ」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「とぼとぼ」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「とぼとぼ」の意味は?

「とぼとぼ」には、次のような意味があります。

[1] 〘副〙 (「と」を伴って用いることもある)

① ぼんやりしているさま、元気なく、疲れたさまなどを表わす語。しょぼしょぼ。〔続無名抄(1680)〕

② (「とぽとぽ」とも) 力なく緩慢に行なう動作、特に歩くさまを表わす語。

[2] 〘名〙 (形動) ぼんやり、うす暗くおぼつかないこと。また、そのさま。

出典:コトバンク

「とぼとぼ」は一歩一歩歩く様子を表します。また、主体の孤独・疲労感・無気力・慨嘆の暗示があり、見る者の同情の暗示もありますよ。

「とぼとぼ」の語源は?

「とぼとぼ」はオノマトペなので語源はありませんが、漢字では「乏乏」と書きます。それでは「乏」の漢字の成り立ちについて説明しましょう。「乏」は「正」の字を反対向きにした字。的にあたった矢の数を数える人が的の反対側で隠れている場所を表します。後に、「貶」の字の意味をかりて、「たりない」「まずしい」の意味に使われるようになりました。

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「とぼとぼ」の使い方・例文

「とぼとぼ」の使い方について例文を挙げて解説していきます。この言葉は、たとえば以下のように用いられますよ。

1.おばあさんはむすこに借金を断られてとぼとぼと帰っていった。

2.少年は終電に乗り遅れ、タクシーに乗る金もなくて、雨に濡れながらとぼとぼアパートまであるくことにした。

3.ゆきの降るなか、ろうそくのとぼとぼするだいだい色のあかりをしょうねんは眺めていた。そこへつえをついた老婆がどこからともなく表れ少しくぐもった声で話しかけた。

4.とぼとぼと会社から出てくるあなたを見かけて私追いかけたのよ。手にしている荷物が少ないから最初は疑問に思ったの、他人だったらどうしようって。だからまちで声を掛けなくて正解だったわ。

5.中国語の翻訳を勉強しに来ていた彼は昨夜、複雑な上級レベルの文章を簡単に訳せるようになる夢を見た。そして今日、留学の期限が切れて彼は波止場から日本へとぼとぼ帰って行った。

例文1からは金の無心を断られ仕方なく帰って行く様子が、例文2からは雨の降るなか帰る足がなくなってしまい濡れるのを覚悟で歩き出した様子が伝わってきます。また例文3からはろうそくの仄かなあかりをじっと見つめている様子が、例文4からは人違いかもしれないとなかなか声を掛けられずにいる様子が、例文から5は夢が実現したと思ったもののむなしく帰郷する様子が伺えますね。

「とぼとぼ」の類義語は?違いは?

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「とぼとぼ」と似たような意味に近い言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「てくてく」

「てくてく」は一歩一歩歩く様子を表す擬態語。例えば「峠の山道をてくてくと歩いて来る老人がいた」や「終電に乗り遅れて家までてくてく歩いて帰った」など、単独でまたは「と」が付いて「歩く」などの述語にかかる修飾語になります。また主体の労力と不本意の暗示があり、長距離を歩いたり乗り物に乗らずにあえて歩いたりする場面で用いることが多い

「てくてく」は「えっちらおっちら」に似ていますが、「えっちらおっちら」は主体が大きな労力を費やして一歩一歩歩く様子を話者の軽い同情と慨嘆の暗示を伴って述べますよ。ちなみに「とぼとぼ」との違いは「とぼとぼ」は主体の孤独・疲労感・無気力・慨嘆の暗示があり、見る者の同情の暗示があるという点です。

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その2「えっちらおっちら」

「えっちらおっちら」は大きな労力を費やして一歩一歩歩く様子を表します。「老母は土産を山ほどかかえてえっちらおっちら田舎から出てきた」など単独で述語にかかる修飾語として用いられますよ。また、大きな労力を費やしながら実際に一歩一歩歩く場合と、実際に歩くかどうかに関係なく大きな労力を伴って目的地へ行く場合とがありますどちらも話者の軽い同情と慨嘆の暗示があるでしょう。

なお「えっちらおっちら」は「てくてく」に似ていますが、「てくてく」は主体の労力と不本意の暗示があり、しばしば長距離を歩いたり乗り物に乗るべきところをあえて歩いたりする場面で用いられます。ちなみに「とぼとぼ」との違いは「とぼとぼ」は見る者の同情の暗示があるという点です。

その3「てれんこてれんこ」

「てれんこてれんこ」は主体がゆっくり歩いて来るのを見て焦燥を感じる様子を表しますよ。「何てれんこてれんこ歩いてんだよ。バカ!」など単独で述語にかかる修飾語になります。くだけた表現の現代語で主に若い人のくだけた会話で用いられるでしょう。また、主体がゆっくりやって来ることについて話者の焦燥・怒り・侮蔑・嫌悪の暗示があります

「てれんこてれんこ」は「ちんたらちんたら」や「えっちらおっちら」に似ていますが、「ちんたらちんたら」は動作や進捗が遅くて話者が焦燥を感じる様子を表し、話者の怒り・焦燥・侮蔑の暗示がありますし、「えっちらおっちら」は主体が大きな労力を費やして一歩一歩歩くことについて、見る者が軽い同情と慨嘆の暗示を伴って述べます。ちなみに「とぼとぼ」との違いは「とぼとぼ」は一歩一歩歩く様子を表すという点でしょう。

「とぼとぼ」の対義語は?

「とぼとぼ」と反対の意味を持つ言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「ほくほく」

「ほくほく」は喜びを隠しきれない様子を表す擬態語。例えば「予想外の大雪にスキー場はほくほく喜んでいる」は単独で述語にかかる修飾語になりますし、「彼はボーナスが良かったらしくほくほく顔だ」は「ほくほく顔」の形で名詞を作ります。臨時の高収入など主体にとって予想外の非常に好都合なことが起こったために、喜びを隠しきれずに盛んにほほえむ様子を表し、隠ぺい・満足の暗示がありますよ。なお主体が予想していることや、公に表明してもはばからない喜びの場合については用いません

その2「うまうま」

「うまうま」は要領よく事を運ぶ様子を表します。「どうやら奴にうまうまと一杯食わされたようだ」や「ライバルにうまうまと仕事を持っていかれた」は受け手側の表現で、「と」がついて述語にかかる修飾語になりますよ。また「捕虜たちは縄を使ってうまうまと逃げ延びた」は主体の側の表現であり、いずれも行為主体の狡猾や要領のよさと話者の反省の暗示があるでしょう。この「うまうま」は「まんま」に似ていますが、「まんま」は主体の狡猾・怜悧・要領のよさと話者の感嘆・反省の暗示、被害者の慨嘆の暗示が相対的に強いです。

その3「うはうは」

「うはうは」は非常に喜んでいる様子を表します。「予期せぬ大儲けに業者はうはうは喜んだ」や「去年は親父の遺産は転がり込むわ、美人の女房はものにできるわで、まさにうはうはだったね」など下品なニュアンスがあり、あまり高尚な喜びについては用いられません。また、金もうけなどの喜びが非常に大きくて笑いが止まらない様子を表し、軽率さの暗示もありますよ。

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「とぼとぼ」の英訳は?

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「とぼとぼ」の英訳にはどのようなものがあるのでしょうか。英語で「とぼとぼ」と言い表す時の例をさっそく見ていきましょう。

「plod」

「plod」は「とぼとぼ歩く、ゆっくり進む」という意味です。「He was plodded along steadily with heavy gait」で「彼は重い足取りでとぼとぼと歩いていた」、「Last night I saw him  plodded along around」で「昨夜、とぼとぼ歩く彼の後ろ姿を見かけた」と表現することができますよ。

「とぼとぼ」を使いこなそう

この記事では「とぼとぼ」の意味・使い方・類語などを説明しました。「とぼとぼ」は一歩一歩歩く様子を表し、主体の孤独・疲労感・無気力・慨嘆の暗示があり、見る者の同情の暗示もあると解説しましたね。また「とぼとぼ」は「てくてく」に似ていますが、「てくてく」は主体の労力と不本意の暗示があります。そのため「終電に乗り遅れ、アパートまでとぼとぼ歩いた」は「疲れたなあ、家はまだかな」となり、「終電に乗り遅れ、アパートまでてくてく歩いた」は「やれやれ、しょうがないな」というニュアンスになりますよ。

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「とぼとぼ」の意味や使い方は?例文や類語をプロダクション編集者がわかりやすく解説!

「とぼとぼ」の使い方・例文

「とぼとぼ」の使い方について例文を挙げて解説していきます。この言葉は、たとえば以下のように用いられますよ。

1.おばあさんはむすこに借金を断られてとぼとぼと帰っていった。

2.少年は終電に乗り遅れ、タクシーに乗る金もなくて、雨に濡れながらとぼとぼアパートまであるくことにした。

3.ゆきの降るなか、ろうそくのとぼとぼするだいだい色のあかりをしょうねんは眺めていた。そこへつえをついた老婆がどこからともなく表れ少しくぐもった声で話しかけた。

4.とぼとぼと会社から出てくるあなたを見かけて私追いかけたのよ。手にしている荷物が少ないから最初は疑問に思ったの、他人だったらどうしようって。だからまちで声を掛けなくて正解だったわ。

5.中国語の翻訳を勉強しに来ていた彼は昨夜、複雑な上級レベルの文章を簡単に訳せるようになる夢を見た。そして今日、留学の期限が切れて彼は波止場から日本へとぼとぼ帰って行った。

例文1からは金の無心を断られ仕方なく帰って行く様子が、例文2からは雨の降るなか帰る足がなくなってしまい濡れるのを覚悟で歩き出した様子が伝わってきます。また例文3からはろうそくの仄かなあかりをじっと見つめている様子が、例文4からは人違いかもしれないとなかなか声を掛けられずにいる様子が、例文から5は夢が実現したと思ったもののむなしく帰郷する様子が伺えますね。

「とぼとぼ」の類義語は?違いは?

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「とぼとぼ」と似たような意味に近い言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「てくてく」

「てくてく」は一歩一歩歩く様子を表す擬態語。例えば「峠の山道をてくてくと歩いて来る老人がいた」や「終電に乗り遅れて家までてくてく歩いて帰った」など、単独でまたは「と」が付いて「歩く」などの述語にかかる修飾語になります。また主体の労力と不本意の暗示があり、長距離を歩いたり乗り物に乗らずにあえて歩いたりする場面で用いることが多い

「てくてく」は「えっちらおっちら」に似ていますが、「えっちらおっちら」は主体が大きな労力を費やして一歩一歩歩く様子を話者の軽い同情と慨嘆の暗示を伴って述べますよ。ちなみに「とぼとぼ」との違いは「とぼとぼ」は主体の孤独・疲労感・無気力・慨嘆の暗示があり、見る者の同情の暗示があるという点です。

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