この記事では「つべこべ」について解説する。
端的に言えば「つべこべ」の意味は「あれこれと喋るさま。抗弁したり、理屈を言ったり、へつらったりするのにいう言葉」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「つべこべ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

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仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「つべこべ」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「つべこべ」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「つべこべ」の意味は?

「つべこべ」には、次のような意味があります。

〘副〙 (多く「と」を伴って用いる) 出しゃばってあれこれとしゃべりたてるさまや、不平・理屈・へつらいなどをうるさく言うさまを表わす語。つべつべ。つべらこべら。

出典:コトバンク

「つべこべ」は不必要なことをあれこれ言い立てる様子を表します。また、話者にとって不必要な内容をあれこれ言い立てる様子を表し、不快・嫌悪・忌避感の暗示があります。ただし、主体にとって不必要な内容であるとは限りません

「つべこべ」の語源は?

「つべこべ」の語源ははっきりとはわかっていませんが、「つべこべ」は漢字で「彼辺此辺」と書きます。それではそれぞれの漢字の成り立ちに付いて説明しましょう。「彼」は道を表す「ぎょうにんべん」と遠く離れる意味の音を示す「皮」とを合わせた字。道を進んではるか離れた前方のことから「むこう」「あちら」の意味を表します。

「此」は表外漢字。「辺」は道を歩いてゆく意味を表す「しんにょう」とさかいの意味の音を示す「へん」とを合わせた字です。地の果てをゆく意味を表しますよ。地の果てから「はて」「さかい」「あたり」などの意味に使われるようになりました。

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「つべこべ」の使い方・例文

「つべこべ」の使い方について例文を挙げて解説していきます。この言葉は、たとえば以下のように用いられますよ。

1.「日月火水金土と出勤して毎日コピーばっかりとってたらあたまが変になりますよ」「つべこべ言わずに黙って仕事しろ、それだけ最近は新規の会員登録が増加してるんだ。俺はサービス残業もしてるんだぞ」

2.「ノートを取りに戻って遅れただけなのに、現代国語のタヌキ教師に広辞苑でおしりまで叩かれたよ」「お尻だけで済んで良かったじゃない。遅刻したらつべこべ言い訳しないほうがいいよ」

3.「林さんとこの旦那さん、診断結果に納得できないって受付の人につべこべとわめいているらしいわよ」「おとなげないわよね、自分のならまだしも他人の腎機能についてなんてコメントできないわよ」

例文1と3は単独で「言う」などの述語にかかる修飾語になる用法です。また「つべこべ」は例文2のようにしばしば後ろに禁止・忠告表現を伴いますよ。例文1は部下が上司に連日のように働かされていることに対して文句を言っている場面です。例文2は遅刻した生徒の愚痴にクラスメイトが教師には口答えしない方がいいとやんわり忠告してくれていますね。例文3は誰かれかまわずに抗弁している様子を第三者が憐れんでいる様子が伝わってきます。

「つべこべ」の類義語は?違いは?

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「つべこべ」と似たような意味をもつ言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「ごちゃごちゃ」

「ごちゃごちゃ」は不快で煩雑な内容を多量に言い立てる様子を表しますよ。例えば「みんな勝手なことをごちゃごちゃ言うばかりだ」「何をそこでごちゃごちゃ言ってるんだ」「夜遅く帰ると親がごちゃごちゃとうるさい」など、単独でまたは「と」が付いて「言う」などの述語にかかる修飾語になります。発言の内容が無秩序で煩雑な様子を表し、不快・慨嘆の暗示があるでしょう。

この「ごちゃごちゃ」は「ごたごた」に似ていますが、「ごたごた」は怒りの暗示があります。「つべこべ」との違いは「つべこべ」は不必要なことをあれこれ言い立てる様子を表すという点。

\次のページで「その2「ぐずぐず」」を解説!/

その2「ぐずぐず」

「ぐずぐず」は不平や不満などを不明瞭な口調で言い続ける様子を表します。例えば「月末になると妻が金のことをぐずぐず言い出す」「すんでしまったことを今更ぐずぐず言うな」「風邪をひいたのか鼻がぐずぐずする」など、単独でまたは「と」が付いて「言う」などの述語にかかる修飾語になることが多い。不平・不満をはっきり抗議するのではなく、はっきりしない口調であいまいに言い続けることについて話者の困惑と不快を暗示します

この「ぐずぐず」は「がたがた」に似ていますが、「がたがた」は主体の不平・不満を騒音ととらえており、話者の不快・嫌悪・煩雑・侮蔑の暗示がありますよ。なお「つべこべ」との違いは「つべこべ」は話者にとって不必要な内容をあれこれ言い立てる様子を表すという点です。

その3「ぶつくさ」

「ぶつくさ」は不平・不満を小さい声で不明瞭に言い続ける様子を表しますよ。例えば「夜中にたたき起こされた妻はぶつくさ言いながら夜食を作り始めた」「陰でぶつくさ言うだけで誰も部長には逆らえない」など、単独で「言う」などの述語にかかる修飾語になります。また、主体が不平・不満を小さい声で不明瞭に言い続けるのを、話者が全体として不快・慨嘆・侮蔑の暗示を伴って述べるでしょう。「ぶつくさ」は「ぶつぶつ」に似ていますが、「ぶつぶつ」はとても冷静な表現で慨嘆などの暗示は少ないです。ちなみに「つべこべ」との違いは「つべこべ」は嫌悪・忌避感の暗示があるという点ですよ。

「つべこべ」の対義語は?

「つべこべ」と反対の意味に近い言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「むっつり」

「むっつり」は寡黙である様子を表し、主体が沈黙している様子を話者が見て懸念・不快の暗示を伴って述べますが、主体の内心の不平・不満には言及せず不機嫌の暗示もありません。例えば「あの家は旦那がおしゃべりで、奥さんがむっつりのほうだ」は奥さんは寡黙な人という意味、また「お前みたいなやつをむっつりすけべいっていうのさ」は「むっつり助平」の形で名詞を作り、話題としては好色を好まないが行動は好色な人という意味です。「むっつり」は「むすっ」に似ていますが、「むすっ」は主体が不機嫌そうに頬を膨らませて沈黙する様子を表し、話者の不快・慨嘆の暗示があるでしょう。

その2「むすっ」

「むすっ」は頬を膨らませて沈黙する様子を表す擬態語。例えば「夫はむすっとした表情で食堂に入ってきた」は「むすっとした」の形で名詞にかかる修飾語になりますし、「話が補償のことに及ぶや担当者はむすっと黙ってしまった」は「むすっと」の形で述語にかかる修飾語になります。「むすっ」は主体が不機嫌そうに沈黙する様子を表し話者の不快・慨嘆の暗示がありますが、主体の内心の不平・不満には言及しません。なお「むすっ」は「ぶすっ」に似ていますが、「ぶすっ」は主体が内心の不平・不満のために不機嫌になって押し黙る様子を話者が不快・慨嘆の暗示を伴って述べます。

その3「つんけん」

「つんけん」は態度が高慢で物の言い方が反抗的である様子を表します。例えば「妻は朝からつんけんしている」「その孫はいやにつんけんした奴だった」など主体は女性が多く、心に不平・俯瞰や怒りなどがあるために不機嫌になり、無言でとりすましたり反抗的な言い方をしたりする様子を表し、高慢・神経質の暗示と話者の嫌悪・不快・困惑の暗示があるでしょう。ちなみに「つんけん」は「つんつん」や「けんけん」に似ていますが、「つんつん」は主に態度について、「けんけん」は主に物の言い方について用います。

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「つべこべ」の英訳は?

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「つべこべ」の英訳にはどのようなものがあるのでしょうか。英語で「つべこべ」と言い表す時の例をさっそく見ていきましょう。

「complain」

「complain」は「不平を言う、愚痴をこぼす」という意味です。「My brother complained because he didn't buy the toys」で「弟はおもちゃを買ってもらえなかったのでつべこべ文句を言う」、「He was complaining that the item he had reserved was sold out」で「彼は予約していた商品が売り切れになってしまいつべこべ不満を言っていた」と訳すことができますよ。

「つべこべ」を使いこなそう

この記事では「つべこべ」の意味・使い方・類語などを説明しました。「つべこべ」は話者にとって不必要な内容をあれこれ言い立てる様子を表し、不快・嫌悪・忌避感の暗示がありますが、主体にとって不必要な内容であるとは限らないと解説しましたね。また「つべこべ」は「しのごの」に似ていますが、「しのごの」は不快なことをいろいろ言い立てる様子を表し話者の不快・焦燥の暗示があります。そのため「つべこべ言うな」は「うるさい、黙れ」、「しのごの言うな」は「理屈をこねるな」というニュアンスになりますよ。擬態語・擬音語の正しい使い方をマスターしましょう。

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国語言葉の意味

「つべこべ」の意味や使い方は?例文や類語をプロダクション編集者がわかりやすく解説!

この記事では「つべこべ」について解説する。
端的に言えば「つべこべ」の意味は「あれこれと喋るさま。抗弁したり、理屈を言ったり、へつらったりするのにいう言葉」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「つべこべ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

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仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「つべこべ」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「つべこべ」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「つべこべ」の意味は?

「つべこべ」には、次のような意味があります。

〘副〙 (多く「と」を伴って用いる) 出しゃばってあれこれとしゃべりたてるさまや、不平・理屈・へつらいなどをうるさく言うさまを表わす語。つべつべ。つべらこべら。

出典:コトバンク

「つべこべ」は不必要なことをあれこれ言い立てる様子を表します。また、話者にとって不必要な内容をあれこれ言い立てる様子を表し、不快・嫌悪・忌避感の暗示があります。ただし、主体にとって不必要な内容であるとは限りません

「つべこべ」の語源は?

「つべこべ」の語源ははっきりとはわかっていませんが、「つべこべ」は漢字で「彼辺此辺」と書きます。それではそれぞれの漢字の成り立ちに付いて説明しましょう。「彼」は道を表す「ぎょうにんべん」と遠く離れる意味の音を示す「皮」とを合わせた字。道を進んではるか離れた前方のことから「むこう」「あちら」の意味を表します。

「此」は表外漢字。「辺」は道を歩いてゆく意味を表す「しんにょう」とさかいの意味の音を示す「へん」とを合わせた字です。地の果てをゆく意味を表しますよ。地の果てから「はて」「さかい」「あたり」などの意味に使われるようになりました。

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