
その2「わるがしこい」
「わるがしこい」は悪事についてよく知恵がまわる様子を表します。悪事について知恵をめぐらした結果、自分に利益をもたらす場合に用いられることが多く、悪事を犯した結果不利益になる場合には用いません。「わるがしこい」は「ずるがしこい」に似ていますが、「ずるがしこい」にある狡猾さに対する強い嫌悪の暗示は「わるがしこい」ではそれほど強くありません。
また「わるがしこい」は「ずるい」にも似ていますが、「ずるい」が先天的な性格としての要領の良さを暗示するのに対して、「わるがしこい」は悪意の暗示のある点が異なります。なお「ちゃっかり」との違いは「ちゃっかり」は話者があきれ・嫌悪の暗示を伴って述べるという点でしょう。
その3「ずるい」
「ずるい」は抜け目なく自分だけ利益を得るのが不快な様子を表す形容詞。また、抜け目なく立ち回って自分ひとりだけ利益を得ることについての不快感を表す語です。人の性格全体をも行為に表れた狡猾さをも表しますよ。「私今度の月曜日休むよ、ずるーい」などは感動詞的に用いられた例で、若い女性が好んで用いる現代語用法です。相手が自分だけいい思いをすることに対して羨望の気持ちを表明したもので、狡猾だと非難する気持ちはないことが多いでしょう。
また「ずるい」は「こすい」に似ていますが、「こすい」では利にさといことが暗示されていて、狡猾さそのものを意味しない点で「ずるい」と異なります。なお「ちゃっかり」との違いは「ちゃっかり」は自分の利益になるように要領よく行動する様子を表す点でしょう。
その4「のめのめ」
「のめのめ」は恥や不名誉を解消しないままで済ます様子を表しますよ。しばしば単独でまたは「と」がついて反語や打消しを含む述語にかかる修飾語になります。「よくものめのめと生きて帰ってきたな」「敵地に乗り込んだ以上、いくら相手が強いといっても一点も取らずにのめのめ引き下がるわけにはいかない」など恥と反省の暗示が強く、憤慨・慨嘆の暗示もあるでしょう。また「のめのめ」は「おめおめ」に似ていますが、「おめおめ」のほうが反省の暗示が少ないです。
その5「おめおめ」
「おめおめ」は恥や不名誉を解消しないままで済ます様子を表します。例えば「日本兵たちはおめおめ生きて帰って来るよりは玉砕を選んだ」「啖呵を切って飛び出した以上、おめおめと家へ帰るわけにはいかない」など、しばしば単独でまたは「と」がついて打消しや反語を含む述語にかかる修飾語になりますよ。また恥と憤慨・慨嘆の暗示があるでしょう。ちなみに「おめおめ」は「のめのめ」に似ていますが、「のめのめ」は恥と主体が反省する暗示が強く出ます。
「ちゃっかり」の対義語は?
「ちゃっかり」と反対の意味に近い言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。
その1「おろかしい」
「おろかしい」は思慮が足りずばかげている様子を表し、「おろか」よりも嫌悪感が強く慨嘆の暗示があります。生まれつきの知能の低さを暗示しないのは「おろか」と同様。全く同じ文脈で「おろかしい」と「おろか」が用いられると「自分の行為が愚かしく思えた」は「ばかげたことをして情けない」、「自分の行為が愚かに思えた」は「思慮がたりなかったのだからしかたがない」といったニュアンスの違いを生じますよ。なお「おろかしい」は「ばからしい」や「あほらしい」に近いですが、「ばからしい」「あほらしい」に暗示されている侮蔑の暗示はなく、思慮のたりないことを嘆くニュアンスのある点が異なります。
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