この記事では「ちゃっかり」について解説する。
端的に言えば「ちゃっかり」の意味は「行動に抜け目がなく、はた目には図々しく映るさま」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「ちゃっかり」の意味や例文、類語などを見ていきます。

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仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「ちゃっかり」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「ちゃっかり」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「ちゃっかり」の意味は?

「ちゃっかり」には、次のような意味があります。

[副](スル)自分の利益のために抜け目なく振る舞うさま。「案外ちゃっかりしている」

出典:コトバンク

「ちゃっかり」は自分の利益になるように要領よく行動する様子を表します。主体が自分の利益を要領よく確実に確保する様子を、話者があきれ・嫌悪の暗示を伴って述べます

「ちゃっかり」の語源は?

「ちゃっかり」の語源ははっきりとはわかっていませんが、「ちゃっかり」は漢字で「茶仮裏」と書きます。それではそれぞれの漢字の成り立ちについて説明しましょう。「茶」は草木を表す「草冠」と苦い意味の音を示す「余」とを合わせた字。苦い味のする草木、つまり「ちゃ」を表します。また「仮」は人を表す「にんべん」に両手を表す文字と覆い被る意味の音を示す文字とを合わせた字。人が両手で覆い仮面を被って本物でなく「にせもの」「かりもの」になる意味を表します。そして「裏」は「衣」と内側の意味の音を示す「里」とを合わせた字。着物の内側、つまり「うら」を表します。

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「ちゃっかり」の使い方・例文

「ちゃっかり」の使い方について例文を挙げて解説していきます。この言葉は、たとえば以下のように用いられますよ。

1.彼は特別席が空いているのをいいことに、料金も払わずちゃっかり座り込んだ。無料でサービスを受けられると考えたのかスマホで動画を再生し始め、安心してふるさとに帰って行った。

2.混雑に紛れて列の先頭に並んでしまうとはちゃっかりした奴だ。こういうタイプはどさくさに紛れて他人を出し抜くことに比較的長けているんだよな。あなたの学校にも真っ先に先生にチクったり悪口を吹き込んだりする奴がいるだろう。

3.だれに似たのかあの子はちゃっかりしてるよ。用を頼めば足代を要求するんだもの。昨日はクラブ活動の帰りにおすすめのプレミアムパンケーキが食べたいとせがまれて、サンシャインまで連れて行ったんだよ。少しは遠慮してくれ。

4.最近の子はみんな、飯は上司がおごるものだと思い込んでいるちゃっかりやで、「ごちそうさま」の一言もない。すこしは感謝の気持ちを口にしてもいいだろう。俺はお前らのサポーターか。

ここでは「ちゃっかり」の用法について説明しましょう。例文1は単独で名詞にかかる修飾語、例文2は「…した」が付いて名詞にかかる修飾語になります。また例文3は「…している」が付いて述語、例文4は「ちゃっかり屋」の形で名詞を作りますよ。

「ちゃっかり」の類義語は?違いは?

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「ちゃっかり」と似たような意味をもつ言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「抜け目ない」

「抜け目ない」は手抜かりなく自分の利益をはかる様子を表す形容詞。述語にかかる修飾語として連用形で用いる場合には「抜け目なく」を用い、名詞にかかる修飾語や述語で用いる場合には「抜け目がない・抜け目のない」などの連語の形を用いることが多いです。また「抜け目ない」は自分の利益をはかることに油断がなく、訪れた機会を無駄にしない様子をやや客観的に述べるニュアンスがあり、怒りや慨嘆の暗示は少ないでしょう。

ちなみに「抜け目ない」は「ずる賢い」や「小賢しい」などに似ていますが、「ずる賢い」が悪意のある賢さを表し嫌悪の程度が高く、「小賢しい」では主体に対するはっきりした侮蔑の暗示のある点が異なります。なお「ちゃっかり」との違いは「ちゃっかり」は自分の利益になるように要領よく行動する様子を表す点。

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その2「わるがしこい」

「わるがしこい」は悪事についてよく知恵がまわる様子を表します。悪事について知恵をめぐらした結果、自分に利益をもたらす場合に用いられることが多く、悪事を犯した結果不利益になる場合には用いません。「わるがしこい」は「ずるがしこい」に似ていますが、「ずるがしこい」にある狡猾さに対する強い嫌悪の暗示は「わるがしこい」ではそれほど強くありません。

また「わるがしこい」は「ずるい」にも似ていますが、「ずるい」が先天的な性格としての要領の良さを暗示するのに対して、「わるがしこい」は悪意の暗示のある点が異なります。なお「ちゃっかり」との違いは「ちゃっかり」は話者があきれ・嫌悪の暗示を伴って述べるという点でしょう。

その3「ずるい」

「ずるい」は抜け目なく自分だけ利益を得るのが不快な様子を表す形容詞。また、抜け目なく立ち回って自分ひとりだけ利益を得ることについての不快感を表す語です。人の性格全体をも行為に表れた狡猾さをも表しますよ。「私今度の月曜日休むよ、ずるーい」などは感動詞的に用いられた例で、若い女性が好んで用いる現代語用法です。相手が自分だけいい思いをすることに対して羨望の気持ちを表明したもので、狡猾だと非難する気持ちはないことが多いでしょう。

また「ずるい」は「こすい」に似ていますが、「こすい」では利にさといことが暗示されていて、狡猾さそのものを意味しない点で「ずるい」と異なります。なお「ちゃっかり」との違いは「ちゃっかり」は自分の利益になるように要領よく行動する様子を表す点でしょう。

 

その4「のめのめ」

「のめのめ」は恥や不名誉を解消しないままで済ます様子を表しますよ。しばしば単独でまたは「と」がついて反語や打消しを含む述語にかかる修飾語になります。「よくものめのめと生きて帰ってきたな」「敵地に乗り込んだ以上、いくら相手が強いといっても一点も取らずにのめのめ引き下がるわけにはいかない」など恥と反省の暗示が強く、憤慨・慨嘆の暗示もあるでしょう。また「のめのめ」は「おめおめ」に似ていますが、「おめおめ」のほうが反省の暗示が少ないです。

その5「おめおめ」

「おめおめ」は恥や不名誉を解消しないままで済ます様子を表します。例えば「日本兵たちはおめおめ生きて帰って来るよりは玉砕を選んだ」「啖呵を切って飛び出した以上、おめおめと家へ帰るわけにはいかない」など、しばしば単独でまたは「と」がついて打消しや反語を含む述語にかかる修飾語になりますよ。また恥と憤慨・慨嘆の暗示があるでしょう。ちなみに「おめおめ」は「のめのめ」に似ていますが、「のめのめ」は恥と主体が反省する暗示が強く出ます。

「ちゃっかり」の対義語は?

「ちゃっかり」と反対の意味に近い言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「おろかしい」

「おろかしい」は思慮が足りずばかげている様子を表し「おろか」よりも嫌悪感が強く慨嘆の暗示があります。生まれつきの知能の低さを暗示しないのは「おろか」と同様。全く同じ文脈で「おろかしい」と「おろか」が用いられると「自分の行為が愚かしく思えた」は「ばかげたことをして情けない」、「自分の行為が愚かに思えた」は「思慮がたりなかったのだからしかたがない」といったニュアンスの違いを生じますよ。なお「おろかしい」は「ばからしい」や「あほらしい」に近いですが、「ばからしい」「あほらしい」に暗示されている侮蔑の暗示はなく、思慮のたりないことを嘆くニュアンスのある点が異なります。

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その2「ぼけっ」

「ぼけっ」は意識が空白になっている様子を表す副詞です。主体の意識が空白になっているためにしばしば幼児的な表情をしているニュアンスで、幼稚・親愛の暗示があるでしょう。また「ぽけっ」は「ぼけっ」や「ぽかん」に似ていますが、「ぼけっ」は思考力などが衰えて焦点が合わず集中・緊張ともに失われている様子を表し、主体の無為・怠惰・耄碌と話者の慨嘆・侮蔑の暗示があります。また「ぽかん」は口を大きく空けて放心している様子を表し、思考の停止・不可解・無防備の暗示がありますよ。

その3「ゆるゆる」

「ゆるゆる」は余裕があるのを実感している様子を表しますよ。やや古風な表現で若い人は用いません。例えば「山間の湯治場にゆるゆると長逗留した」「君のことはいずれゆるゆると会長に紹介するつもりだよ」など述語にかかる修飾語になります。また、主体が心理的に解放されて余裕を実感している様子を表し弛緩の暗示があるでしょう。この「ゆるゆる」は「ゆるり」に似ていますが、「ゆるり」は余裕の実感が完結するニュアンスで安楽の暗示があります。

「ちゃっかり」の英訳は?

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「ちゃっかり」の英訳にはどのようなものがあるのでしょうか。英語で「ちゃっかり」と言い表す時の例をさっそく見ていきましょう。

「clever」

「clever」は「抜け目のない、そつのない」という意味です。「You're clever to force him into a difficult job」で「彼に難しい仕事を押し付けるなんて君もちゃっかりしている」、「That kid is really clever like his brother」で「あの子は兄に似て本当にちゃっかりしているよ」と表現することができますよ。

「ちゃっかり」を使いこなそう

この記事では「ちゃっかり」の意味・使い方・類語などを説明しました。「ちゃっかり」は自分の利益になるように要領よく行動する様子を表す擬態語。主体が自分の利益を要領よく確実に確保する様子を話者があきれ・嫌悪の暗示を伴って述べると解説しましたね。また「ちゃっかり」は「ぬけぬけ」に似ていますが、「ぬけぬけ」は主体が恥や遠慮もなく大胆に行動する様子をあきれの暗示を伴って述べます。そのため「特別席が空いているのをいいことに、ぬけぬけと座り込んだ」は間違った用法で、正しくは「特別席が空いているのをいいことに、ちゃっかりと座り込んだ」と表現しますよ。適切な表現を心掛けるようにしましょう。

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国語言葉の意味

「ちゃっかり」の意味や使い方は?例文や類語をプロダクション編集者がわかりやすく解説!

この記事では「ちゃっかり」について解説する。
端的に言えば「ちゃっかり」の意味は「行動に抜け目がなく、はた目には図々しく映るさま」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「ちゃっかり」の意味や例文、類語などを見ていきます。

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仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「ちゃっかり」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「ちゃっかり」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「ちゃっかり」の意味は?

「ちゃっかり」には、次のような意味があります。

[副](スル)自分の利益のために抜け目なく振る舞うさま。「案外ちゃっかりしている」

出典:コトバンク

「ちゃっかり」は自分の利益になるように要領よく行動する様子を表します。主体が自分の利益を要領よく確実に確保する様子を、話者があきれ・嫌悪の暗示を伴って述べます

「ちゃっかり」の語源は?

「ちゃっかり」の語源ははっきりとはわかっていませんが、「ちゃっかり」は漢字で「茶仮裏」と書きます。それではそれぞれの漢字の成り立ちについて説明しましょう。「茶」は草木を表す「草冠」と苦い意味の音を示す「余」とを合わせた字。苦い味のする草木、つまり「ちゃ」を表します。また「仮」は人を表す「にんべん」に両手を表す文字と覆い被る意味の音を示す文字とを合わせた字。人が両手で覆い仮面を被って本物でなく「にせもの」「かりもの」になる意味を表します。そして「裏」は「衣」と内側の意味の音を示す「里」とを合わせた字。着物の内側、つまり「うら」を表します。

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