この記事では「こぞって」について解説する。
端的に言えば「こぞって」の意味は「残らず、ことごとく、あげて」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「こぞって」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/flicker

仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「こぞって」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「こぞって」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「こぞって」の意味は?

「こぞって」には、次のような意味があります。

[副]《「こぞりて」の音変化》一人も残らず。全員で。「村中が挙って祭りを楽しむ」

出典:コトバンク

「こぞって」は全員が同一の行動を起こす様子を表し、動詞にかかる修飾語として用いられます。積極的に他に働きかける行動について用いることが多く、受動的な行為や状態についてはあまり用いられません

「こぞって」の語源は?

次に「こぞって」の語源を確認しておきましょう。「こぞって」は「挙りて(こぞりて)」から派生した言葉です。それでは「挙」の漢字の成り立ちについて説明しましょう。「挙」は「手」と高く持ち上げる意味の音を示す「キョ」とを合わせた字。手で高く「もちあげる」意味を表します。

\次のページで「「こぞって」の使い方・例文」を解説!/

「こぞって」の使い方・例文

「こぞって」の使い方について例文を挙げて解説していきます。この言葉は、たとえば以下のように用いられますよ。

1.親戚一同は二人の結婚にこぞって反対した。みんなひかりちゃんのことを思ってのことだよ。理由は従弟のせいや君が反社会的集団の組織の一員で、これまでに大勢の人々を騙してきたという過去と、これから一般人としてまともに社会生活を送ることができるのかという危惧からだ。

2.組合のイベントには組合員がこぞって参加した。みなさん、次は団体競技になりますのでグループに分かれてください。ちなみに今回優勝したチームには商店街の歳末お買い物割引券が贈呈されます。

例文1は親戚一同が、例文2は組合員全員がという意味です。「こぞって」は全員がという意味ですが、「合格の知らせを家族がこぞって待っていた」「振り袖姿の新成人はこぞって美しい」のような使い方は間違いとなります。正しくは「合格の知らせを家族全員が待っていた」「振り袖姿の新成人はみんな美しい」となりますよ。

「こぞって」の類義語は?違いは?

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「こぞって」と似たような意味をもつ言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「のこらず」

「のこらず」は残量が存在しない様子を表し、述語にかかる修飾語として用いられますよ。客観的な表現で特定の感情を暗示しません。例えば「課長が五時五分に帰社してみると、課員は一人のこらず帰った後だった」のように「一人のこらず」の形で最少量さえも残っていないという意味で用いられ、「のこらず」の意味を強調する場合もあります。また残量が存在しない結果すべてにわたっている様子を表しますよ。

ちなみに「のこらず」は「ぜんぶ」や「ことごとく」に似ていますが、「ぜんぶ」は総体を表し残量については言及しません。また「ことごとく」は異質の物事が全てある一つの結果になる様子を表し、構成要素にバラエティーのある暗示を伴います。なお「こぞって」との違いは「こぞって」は全員が同一の行動を起こす様子を表すという点。

\次のページで「その2「ぜんぶ」」を解説!/

その2「ぜんぶ」

「ぜんぶ」は物事の総体を表します。「若者のぜんぶがぜんぶ礼儀知らずだとは限らない」の「全部が全部」は慣用句で「ぜんぶ」を強調しますよ。また「ぜんぶでいくらですか」は「全部で」の形で述語にかかる修飾語になり合わせてという意味です。この「ぜんぶで」は「あわせて」に似ていますが、「あわせて」は複数の価値を合計するという意味で総体を表す意味はありません。なお総体を表す語ですが個々の構成要素に視点がありますし、客観的な表現で特定の感情を暗示しません

ちなみに「ぜんぶ」は「ぜんたい」や「すべて」に似ていますが、「ぜんたい」は総体をまるごと一つに扱う暗示がありますし、「すべて」は構成要素を一つ一つ吟味し、全体を通してある一つの視点で一貫しているというニュアンスがあります。「こぞって」との違いは「こぞって」は積極的に他に働きかける行動について用いることが多いという点でしょう。

その3「ねこそぎ」

「ねこそぎ」は根底から処理する様子を表し、述語にかかる修飾語として用いられますよ。「雑草はねこそぎにしないとすぐまた生えてくる」や「台風のため街路樹はねこそぎに倒れた」は基本的な意味で、植物の幹・枝・茎の部分はもとより根の部分まで取り除いたたり倒れたりする様子を表します。例えば「その家は濁流にねこそぎ持って行かれた」は地上部分はもとより土台まで完全に濁流に飲まれたという意味で、「根こそぎ持って行かれる」の形で用いられ完全に取り除かれる様子を誇張的に表しますよ。

ちなみに「ねこそぎ」は「のこらず」に似ていますが、「のこらず」は計量できるものを全部というニュアンスでとても冷静な表現になっており、誇張の暗示はありません。なお「こぞって」との違いは「こぞって」は全員が同一の行動を起こす様子を表すという点です。

「こぞって」の対義語は?

「こぞって」と反対の意味に近い言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「それぞれ」

「それぞれ」は一つ一つの要素を表し、人に対しても物に対しても用いられます個々の要素が異なるというニュアンスで、バラエティーの暗示があるでしょう。例えば「議長はそれぞれの意見をきいた」は名詞にかかる修飾語、「人にはみなそれぞれ長所と短所がある」は述語にかかる修飾語、「政治改革に対する考えは人それぞれだ」は名詞の後ろに直接ついて述語になる用法です。また「それぞれ」は「おのおの」や「めいめい」に似ていますが、「おのおの」は個々の要素を対等に均一に扱う暗示があり、「めいめい」は個々の要素が一つ一つ独立している暗示があるでしょう。

その2「めいめい」

「めいめい」は複数の人間の各人を表し、人間について用い物については用いられません。例えば「役員会ではめいめいが自分の意見を述べた」は名詞の用法、「切符はめいめいお持ちください」は述語にかかる修飾語の用法です。ある特定の人間の集まりの構成員ひとりひとりを指し、ひとりひとりが独立している暗示があるでしょう。また「めいめい」は「それぞれ」や「おのおの」に似ていますが、「それぞれ」は人についても物についても用いられ、個々の要素が異なるというニュアンスで要素のバラエティーの暗示があります。そして「おのおの」は個々の要素を対等に均一に扱う暗示がありますよ。

こぞって」の英訳は?

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「こぞって」の英訳にはどのようなものがあるのでしょうか。英語で「こぞって」と言い表す時の例をさっそく見ていきましょう。

\次のページで「「unanimous」」を解説!/

「unanimous」

「unanimous」は「「満場一致で、こぞって」という意味です。「will vote in favor of the motion unanimous」で「動議にこぞって賛成投票する」、「All the neighbors were invited to the party unanimous」で「近所の人がこぞって宴に招かれた」となりますよ。

「こぞって」を使いこなそう

この記事では「こぞって」の意味・使い方・類語などを説明しました。「こぞって」は全員が同一の行動を起こす様子を表す副詞。積極的に他に働きかける行動について用いることが多く、受動的な行為や状態についてはあまり用いられないと解説しましたね。また「こぞって」は「あげて」や「のこらず」などに似ていますが、「あげて」は全部が一致して同一行動を起こす暗示があるのに対して「こぞって」は構成員の一人一人に視点がありますし、「のこらず」は残量が存在しない様子を表します。表現の違いをしっかり理解しましょう。

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国語言葉の意味

「こぞって」の意味や使い方は?例文や類語をプロダクション編集者がわかりやすく解説!

この記事では「こぞって」について解説する。
端的に言えば「こぞって」の意味は「残らず、ことごとく、あげて」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「こぞって」の意味や例文、類語などを見ていきます。

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仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「こぞって」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「こぞって」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「こぞって」の意味は?

「こぞって」には、次のような意味があります。

[副]《「こぞりて」の音変化》一人も残らず。全員で。「村中が挙って祭りを楽しむ」

出典:コトバンク

「こぞって」は全員が同一の行動を起こす様子を表し、動詞にかかる修飾語として用いられます。積極的に他に働きかける行動について用いることが多く、受動的な行為や状態についてはあまり用いられません

「こぞって」の語源は?

次に「こぞって」の語源を確認しておきましょう。「こぞって」は「挙りて(こぞりて)」から派生した言葉です。それでは「挙」の漢字の成り立ちについて説明しましょう。「挙」は「手」と高く持ち上げる意味の音を示す「キョ」とを合わせた字。手で高く「もちあげる」意味を表します。

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