この記事では、「委細」について解説する。
「委細」は自分で使うことはあまりない言葉ですが、字面をみる限り「細かいこと」って意味でしょうと想像できるな。同じような意味のことを伝えたいなら、俺だったら「詳細」と言いそうです。ところが「委細」と「詳細」は、厳密には意味が違うんだってよ。間違って使って恥をかくところだったぜ。
今回は細かいことばかりに気を取られて、なかなか進歩しないライターのぷーやんを呼んです。「委細」の意味と使われ方について、説明してもらう。

ライター/ぷーやん

webライター歴6年。鍛えられた語彙と文章力は本業でも発揮され、社内ルールの書き換え担当に。『木をみて森をみず』な細かくてせせこましい性格。

「委細」の意味とは?

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「委細」は桜木先生の仰るように、なかなか自分で使うことはない言葉かもしれませんね。しかしそういった言葉でも、職場や学校の書類や、街中で触れることがあるかもしれません。そんな「委細」について、まずは意味をしっかり押さえていきましょう。

「委細」を辞書でみてみよう!

辞書で単語の意味を引くには、読み方を知らなければなりませんね。「委細」は「いさい」と読みます。それでは、「委細」を辞書でみてみましょう。

1 細かく詳しいこと。詳しい事情。詳細。「―は面談の上で」
2 (副詞的に用いて)細かいことまですべて。万事。「―承知した」
出典:デジタル大辞泉(小学館) 「委細」

辞書での意味を見る限り、桜木先生がご指摘されている「詳細」との違いがちょっと分からない、という方も多いのではないでしょうか。この点については、あとで類義語のご紹介とともに示します。

例文で「委細」の使い方を確認!

単語を辞書引きしただけでは、その使い方にはまだ不安が残るものです。次に、「委細」の使い方を例文で示します。

1.人物像の委細を把握するためには、実際に会ってみるのが手っ取り早い。
2.ことの委細はわかった。今回のケンカについては、君の方に落ち度があると思うよ。

両方とも名詞として「委細」を使っています。人となりや出来事の背景や事情を含んだ、詳しいことという意味ですね。辞書にある副詞的な用法には、次の項でご紹介します。

\次のページで「意外と多い?「委細○○」」を解説!/

意外と多い?「委細○○」

日常会話ではあまり馴染みがないかもしれない「委細」ですが、これを含む言い回しは、意外に多いものです。以下に示す表現は、どこかで見聞きしたことがあるのではないでしょうか。

・委細承知
・委細了解
・委細面談
・委細構わず
・委細頓着

いずれの言葉も、「細かい事情まで(は)〇〇」という意味の、副詞的用法です。「委細面談」はすこし特殊で、採用情報などでみかける言葉。『詳しい就業内容などは、面談のときにお話します』ということを示します。「委細頓着」は、夏目漱石の作品に出てくる言葉です。この記事の最後で、すこし触れることにしましょう。

「委細」の類義語には何がある?それぞれの違いは?

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まずは類義語からみていきましょう。また、「委細」との微妙なニュアンスの違いも解説します。

詳細:細部まで詳しいこと

「委細」と似た意味ですが、より多く聞くことのある単語ですね。細かいことに至るまで、とても詳しいことを示します。

仔細:詳しい事情・特別の理由

事情について、理由までつけて詳しい様子を表す言葉。「詳細」よりも「委細」に近いニュアンスです。

「委細」「仔細」「詳細」の違いとは?

「委細」と「仔細」は、『事情』について詳しいことだと解説しました。両者の違いは、その詳しさのレベルです。「委細」は『いつ・どこで・誰が・なにを・どうした』といった、ことがらの全体像がわかる程度。

「仔細」はさらに理由をともない、『彼がなにをしたのに対して、彼女は…』などと、起こったことをつぶさに並べるイメージ。一方で「詳細」は、理由には触れず状態を表す点が、上記2つと異なります。やや機械的なイメージですね。

\次のページで「「委細」の対義語3選!」を解説!/

「委細」の対義語3選!

類義語の次は対義語をみていきましょう。

概略:大体の内容

全体を満遍なくかいつまんだものです。漢字をみても、『(全体を)略して概ねをつかむ』ととれますね。ポイントは『特になんのコンセプトもなく、均一に省略する』ということ。

あらすじ:およその筋道・あらまし

特に演劇や小説などの内容を、おおまかにまとめたものを指します。『物語のあらすじ』『物語の委細』と対比すると、対極の意味にあることがわかりやすいですね。

大意(たいい):おおよその趣旨

趣旨とは、なにかの中心的な考えやねらいのことです。したがって「大意」は、話や文章における、話者や作者のいわんとする要点のこと。「要旨」や「概要」も同義。上述の「概略」との違いは、『要点をまとめた』という点です。

「委細」は英語ではなんという?

「委細」の類義語と対義語をご紹介してきましたが、英語訳も気になるところ。ここでは2つ挙げます。

detail:委細・詳細

「ディテール」と、外来語として定着している言葉ですね。内容の細かさを表す単語ですが、日本語訳は「委細」とも「詳細」とも。英英辞書でみると、「だれか、もしくはなにかについての情報の一つ」と説明されています。

particulars:委細・詳細

こちらも日本語訳としては、「委細」や「詳細」です。一方英英辞書では、「人・モノ・活動・出来事についての詳しい情報」とあります。detailと比べると、こちらのほうが「委細」の英語訳として適しているかもしれません。

\次のページで「夏目漱石の作品にも登場!「委細頓着」」を解説!/

夏目漱石の作品にも登場!「委細頓着」

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「委細」という言葉は、夏目漱石の作品『夢十夜』にも登場します。学校の授業でも題材となるこの作品での「委細」について、最後に触れておきましょう。

夏目漱石の『夢十夜』とは?

『夢十夜』は1908年7月25日から8月5日まで、東京朝日新聞で掲載された小説で、漱石の不安や恐怖を登場人物に投影した作品。第一夜~第十夜までの十編で構成される短編小説の集まりとなっており、高校の現代文でも取り扱われる作品です。「委細」は、この中の第六夜に出てきます。

『第六夜』に出てくる「委細頓着」

『第六夜』は、運慶という仏像の彫刻家が、作業を見物している大衆に目もくれず、仁王像の制作に没頭している様を描いた話。それを見た聴衆の一人が、『運慶は木の中にある仁王を掘り出しているだけだ』と言います。『それなら自分にもできるだろう』と家に帰ってやってみたものの、素人の語り手にはできませんでした。それで『明治の木には仁王は埋まっていない』と悟り、『運慶が今日まで生きている理由がわかった』と物語は完結。

この中で、運慶が黙々とノミと槌を動かしている様子が、『見物人の評判には「委細頓着」なく』すなわち、『他人の評判について、こまごまと詳しいことは気にかけずに』と表現されています。

『第六夜』はどう解釈すればいい?

運慶は鎌倉時代の彫刻家ですが、第六夜の舞台は明治時代です。時代の錯綜が混乱を招くかもしれませんが、次のような解釈もあり得るでしょう。

運慶は大衆の評判をものともせず、己の信条の向かうままに仁王像を制作しています。そうした精神のもとで培われた技術は、はた目には『掘り出しているだけ』にみえるほど洗練され、作品は時代を超えても生き続けるものです。そのため鎌倉時代の作品が、明治に至っても活き活きとしていたということ。一方、仏像づくりの信念も技術もなく思い付きでやってみても、当然うまくはいかないことを語り手は悟ったのでしょう。

もしかしたら漱石は、明治という時代に流行りものに飛びつくような世の中の風潮を感じており、危惧していたのかもしれませんね。

「委細」は気づけど気にしすぎずに

この記事では「委細」について、包括的に説明してきました。耳慣れない言葉かもしれませんがたまに見かけることのある言葉ですので、意味をしっかりと押さえておきましょう。

夏目漱石の『夢十夜』にあるような「委細頓着」しない姿勢は、自分軸をブレさせずになにかを成し遂げるには、とても大切な心構えです。しかし周囲の状況や他人の心情について、「委細」を気にかけずに我が道を行くのは、単なる傍若無人というもの。周囲へ気配りをしつつ自分も大切にする、そんな生き方をしたいものですね。

この記事が「委細」の理解に役立ちましたら幸いです。

英語の勉強には洋楽の和訳サイトもおすすめです。
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国語言葉の意味

「委細」は詳細と違う?意味や使い方を例文・類義語・対義語・英語訳とともにwebライターがわかりやすく解説!

この記事では、「委細」について解説する。
「委細」は自分で使うことはあまりない言葉ですが、字面をみる限り「細かいこと」って意味でしょうと想像できるな。同じような意味のことを伝えたいなら、俺だったら「詳細」と言いそうです。ところが「委細」と「詳細」は、厳密には意味が違うんだってよ。間違って使って恥をかくところだったぜ。
今回は細かいことばかりに気を取られて、なかなか進歩しないライターのぷーやんを呼んです。「委細」の意味と使われ方について、説明してもらう。

ライター/ぷーやん

webライター歴6年。鍛えられた語彙と文章力は本業でも発揮され、社内ルールの書き換え担当に。『木をみて森をみず』な細かくてせせこましい性格。

「委細」の意味とは?

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「委細」は桜木先生の仰るように、なかなか自分で使うことはない言葉かもしれませんね。しかしそういった言葉でも、職場や学校の書類や、街中で触れることがあるかもしれません。そんな「委細」について、まずは意味をしっかり押さえていきましょう。

「委細」を辞書でみてみよう!

辞書で単語の意味を引くには、読み方を知らなければなりませんね。「委細」は「いさい」と読みます。それでは、「委細」を辞書でみてみましょう。

1 細かく詳しいこと。詳しい事情。詳細。「―は面談の上で」
2 (副詞的に用いて)細かいことまですべて。万事。「―承知した」
出典:デジタル大辞泉(小学館) 「委細」

辞書での意味を見る限り、桜木先生がご指摘されている「詳細」との違いがちょっと分からない、という方も多いのではないでしょうか。この点については、あとで類義語のご紹介とともに示します。

例文で「委細」の使い方を確認!

単語を辞書引きしただけでは、その使い方にはまだ不安が残るものです。次に、「委細」の使い方を例文で示します。

1.人物像の委細を把握するためには、実際に会ってみるのが手っ取り早い。
2.ことの委細はわかった。今回のケンカについては、君の方に落ち度があると思うよ。

両方とも名詞として「委細」を使っています。人となりや出来事の背景や事情を含んだ、詳しいことという意味ですね。辞書にある副詞的な用法には、次の項でご紹介します。

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