この記事では「侮る」の意味や語源・使い方、「侮る」を使ったことわざや類義語との違いなどを詳しく解説する。

「侮る」の意味は端的に言うと「軽く見てばかにすること」です。良い意味では使われないからこそ、意味や使い方をしっかりと押さえておこう。類義語の「見くびる」「見下す」との細かな意味の違いにも注目です。

今回は、大学で日本語と日本文学を学び、塾講師時代には国語の指導に力を注いでいたという日本語好きのカワナミを呼んです。一緒に説明していきます。

ライター/カワナミ

大学で日本語と日本文学について学び、言葉の楽しさを伝えたい!と、塾講師時代には国語の授業に力を入れていた。言葉を知ると世界が広がると、本気で信じている。

「侮る」の意味や語源

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「侮る」の意味と語源について見ていきましょう。

「侮る」の意味は「軽く見てばかにする」

「侮る」を辞書で調べると次のように記されています。

人を軽くみてばかにする。軽蔑する。見下す。「―・って油断するな」「―・りがたい敵」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「侮る」

「侮る」「あなどる」と読みます。「人の実力を軽く見てばかにする」という意味です。「ばかにする」と言うと悪口を言ったり嫌悪したりすることを想像しますが、行動に移さなくても「相手の力を軽く見る」時点でばかにしていると言えます。相手の本当の力に関係なく、一方的に価値を低く見るのが「侮る」です。

よく聞かれるのは「~を侮るなかれ」といった使い方。「なかれ」形容詞「なし」の命令形で、「侮るな・侮ってはいけない」という意味になります。

相手を「侮る」ことは相手にとても失礼な行為ですし、自分にも良いことはありません。ついそんな考えを持ってしまって後から悔やむことのないよう、気をつけたいものです。

「侮る」の語源は「あなづる」

「侮る」の語源は古語の「あなづる」です。「侮る」と同じく「軽く見る」「軽蔑する」といった意味を持ちます。枕草子や源氏物語にも登場している、古くから使われてきた言葉です。

漢字の「侮」には「人を無視する」「人を軽んじる」という意味があります。人偏は人、毎の字は「暗い」を指すことから、暗くて視野に入らない人を示しているのです。漢字そのものにも言葉の意味が表れています。

昔から「あなどる」の漢字は、ほかにも色々と当てはめられてきました。例えば「軽」「弄」「狎」「欺」などがあります。それぞれ、かろんじる・もてあそぶ・なれなれしくする・あざむく、といった「あなどる」ことを原因とした行動にのっとった字の選び方がされていますね。

\次のページで「「侮る」の使い方・例文」を解説!/

「侮る」の使い方・例文

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「侮る」の使い方や例文を見ていきましょう。

「侮る」は人以外にも使える?

「侮る」は人以外の対象にも使えます。例えば「虫歯を侮ると痛い目を見る」といった使い方です。人ではない「虫歯」を対象にしていますが、「虫歯を軽く見ると痛い目を見る」と何の違和感もなく使えます。実際、虫歯を大したことじゃないと思って放っておくと、歯が抜けたり、全身に菌がまわったりという事態になりかねません。

辞書の説明欄には「人を」軽く見てばかにする、と書かれているため、疑問に思う人もいるかもしれません。しかし「侮る」は、人以外の物事に対しても使える言葉です。

「侮る」を使った例文

「侮る」を実際に使った例文を元に、使い方を見ていきましょう。

1.子どもだからと侮っていたが、彼は私よりも上手に魚を捌いた。
2.相手チームの力を侮っていたせいで、いつもなら勝てるはずの予選試合も簡単に負けてしまった。
3.食品アレルギーを、たかがアレルギーと侮るなかれ。

「侮る」の意味は「相手の力を軽く見てばかにすること」でしたね。
例文1、2では、それぞれ子どもや対戦相手のチームの本当に持っている力を軽視しています。ところが、相手の実力が自分よりも上回っていたために「侮っていた」ことを後悔する結果となってしまいました。

例文3では、食品アレルギーを「侮る」対象としています。アレルギーは時として死を招くこともあるため、決して軽く見てはいけないものです。

「侮る」を使ったことわざ・故事成語

「侮る」を使っていることわざ・故事成語をご紹介します。

\次のページで「「大敵と見て恐れず 小敵と見て侮らず」」を解説!/

「大敵と見て恐れず 小敵と見て侮らず」

「たいてきとみておそれず しょうてきとみてあなどらず」と読みます。相手が強そうに見えるとしても怯んではいけないし、また弱そうに見えるとしても侮ってはならないという意味のことわざです。何かに立ち向かうときは、どんな相手にも油断してはならないということですね。

「人必ず自ら侮りて 然る後に人これを侮る」

中国の思想家である孟子(もうし)の言葉を元にした故事成語です。「ひとかならずみずからあなどりて しかるのちにひとこれをあなどる」と読みます。自分で自分を尊重せず、軽々しく自分を貶めるような言動をすると、人からも侮られるようになるという教え。意外と自分のことは後回しにしたり、卑下したりしがちですが、自分を大切に扱うのはとても重要なことです。

「侮る」の類義語は?違いは?

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「侮る」と似た意味を持つ言葉の中から「見くびる」と「見下す」をご紹介します。「侮る」との細かな意味の違いも押さえておきましょう。

「見くびる」:「相手を軽く見て油断すること」

「見縊る」とも書きます。「見くびる」の意味は、「相手の力を実際よりも低く見て油断すること」です。「侮る」との違いは、低く判断する基準「侮る」が人を対象とする場合、自分よりも力が劣るかどうかを元に考えるのに対し、「見くびる」は基準なく、総体的に見て実力が低いと決めつけます。

「見下す」:相手をばかにして見る

「見下す」「相手をばかにして見る」という意味です。

一見「侮る」と同じ意味だと感じますが、実際は違います「侮る」が人の実力や能力を軽く見る、というニュアンスであるのに対し、「見下す」は相手の存在そのものを下に見るというニュアンスです。「侮る」より軽蔑の度合いが強まりますし、聞いた相手にも「侮る」以上にネガティブな印象を与えるでしょう。

「侮る」の対義語は?

「侮る」と反対の意味を持つ「敬う」と「崇める」について解説します。

\次のページで「 「敬う」:尊んで礼を尽くす」を解説!/

「敬う」:尊んで礼を尽くす

「敬う」とは、「相手のことをすぐれたものとして敬意を払い、礼を尽くすこと」という意味の言葉です。存在や能力、価値を認めて相手を重んじるため、「軽く見る」という意味の「侮る」とは反対になります。

「崇める」:尊いものとして敬う

「崇める」(あがめる)の意味は「極めて尊いものとして敬う」ことです。「敬う」と似ていますが、「崇める」はその中でも最も強い敬意を表します。そのため、神仏や目に見えない力、それに匹敵するほどの魅力を持つ人や物に対して使われる言葉です。

「侮る」の英訳は「make light of~」

最後に「侮る」の英訳について見ていきましょう。「~を軽視する、軽く見る」という意味で英訳する場合には「make light of~」を使うのがおすすめです。例えば「People make light of his efforts.」「人々は彼の努力を侮っている」のように使うことができます。

また、特に「軽蔑する」「見下す」というニュアンスで伝えたい場合には「despise」「look down on〜」を使うと良いでしょう。

「侮る」ことを「侮るなかれ」

この記事では「侮る」の意味や語源、使い方、ことわざ、類義語との違いについて解説しました。

「侮る」は「相手の力を軽く見てばかにする」という意味の言葉です。場合によっては「軽蔑する」「見下す」といった対象を嫌悪するような感情まで幅広く表します。ただし、どのように取り繕っても、相手に失礼な行動であることに変わりありません。自分にとっても後悔する結果を招く可能性があります。どんな相手でも「侮ることなかれ」。気づいたときには遅かった!ということのないようにしましょう。

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国語言葉の意味

「侮る」の意味・語源・使い方は?ことわざや類義語との違いなど元塾講師ライターがわかりやすく解説!

この記事では「侮る」の意味や語源・使い方、「侮る」を使ったことわざや類義語との違いなどを詳しく解説する。

「侮る」の意味は端的に言うと「軽く見てばかにすること」です。良い意味では使われないからこそ、意味や使い方をしっかりと押さえておこう。類義語の「見くびる」「見下す」との細かな意味の違いにも注目です。

今回は、大学で日本語と日本文学を学び、塾講師時代には国語の指導に力を注いでいたという日本語好きのカワナミを呼んです。一緒に説明していきます。

ライター/カワナミ

大学で日本語と日本文学について学び、言葉の楽しさを伝えたい!と、塾講師時代には国語の授業に力を入れていた。言葉を知ると世界が広がると、本気で信じている。

「侮る」の意味や語源

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「侮る」の意味と語源について見ていきましょう。

「侮る」の意味は「軽く見てばかにする」

「侮る」を辞書で調べると次のように記されています。

人を軽くみてばかにする。軽蔑する。見下す。「―・って油断するな」「―・りがたい敵」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「侮る」

「侮る」「あなどる」と読みます。「人の実力を軽く見てばかにする」という意味です。「ばかにする」と言うと悪口を言ったり嫌悪したりすることを想像しますが、行動に移さなくても「相手の力を軽く見る」時点でばかにしていると言えます。相手の本当の力に関係なく、一方的に価値を低く見るのが「侮る」です。

よく聞かれるのは「~を侮るなかれ」といった使い方。「なかれ」形容詞「なし」の命令形で、「侮るな・侮ってはいけない」という意味になります。

相手を「侮る」ことは相手にとても失礼な行為ですし、自分にも良いことはありません。ついそんな考えを持ってしまって後から悔やむことのないよう、気をつけたいものです。

「侮る」の語源は「あなづる」

「侮る」の語源は古語の「あなづる」です。「侮る」と同じく「軽く見る」「軽蔑する」といった意味を持ちます。枕草子や源氏物語にも登場している、古くから使われてきた言葉です。

漢字の「侮」には「人を無視する」「人を軽んじる」という意味があります。人偏は人、毎の字は「暗い」を指すことから、暗くて視野に入らない人を示しているのです。漢字そのものにも言葉の意味が表れています。

昔から「あなどる」の漢字は、ほかにも色々と当てはめられてきました。例えば「軽」「弄」「狎」「欺」などがあります。それぞれ、かろんじる・もてあそぶ・なれなれしくする・あざむく、といった「あなどる」ことを原因とした行動にのっとった字の選び方がされていますね。

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