この記事では「えずく」について解説する。

端的に言えばえずくの意味は「嘔吐する」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

自治体広報紙の編集を8年経験した弘毅をを呼んです。一緒に「えずく」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/八嶋弘毅

自治体広報紙の編集に8年携わった。正確な語句や慣用句の使い方が求められるため、正しい日本語の使い方には人一倍敏感。

「えずく」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「えずく」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「えずく」の意味は?

「えずく」には、次のような意味があります。

吐き気をもよおす。また、へどを吐く。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「えずく」

「えずく」と聞いて意味のわからない方もいるかもしれません。これは方言なのです。三省堂の『全国方言辞典』では「京都の方言」と紹介されています。しかし京都に限らず「えずく」という言葉は京都だけにとどまらず、広く大阪などを中心とした関西地方で使われている言葉です。

都道府県別のニュースを伝えるポータルサイト「Jタウンネット」が「えずく」という言葉の認知度についてアンケートをとったことがあります。その投票結果を見ると興味深い事実がわかりました。関西圏に近く、関西弁に似た話し方をする地域が多いにもかかわらず、三重県では「えずく」について「まったく知らなかった」が69.5%で「聞いたことも使ったこともある」との回答26.0%を大幅に上回ったのです。

ところが遠く離れた東京では「まったく知らなかった」が12.7%であったのに対し「聞いたことも使ったこともある」と答えた人が66.4%と半数を超えました。東京をはじめとする関東には関西を含め全国からたくさんの人が集まってきています。標準語以外にもそれぞれの出身地で使っていた言葉が反映された結果だと言えるのではないでしょうか。

「えずく」の語源は?

次に「えずく」の語源を確認しておきましょう。「えずく」には語源はなく古来から使われてきた言葉のようです。歴史的仮名遣いでは「ゑづく」と表記されます。そうすると「えずく」ではなく「えづく」が正しいと思う方もいるのではないでしょうか。「えずく」は漢字で「嘔吐く」と書きます。

「吐く」は嘘を吐くなど「つく」と読みますから「えづく」が正しいと勘違いしてしまいそうです。しかし正しくは「えずく」ですから間違えないようにしてください。「嘔吐く」は文字どおり嘔吐することですが、そのほか体調が悪くて吐き気をもよおすだけで実際に嘔吐していない場合でも「えずく」と言います。

\次のページで「「えずく」の使い方・例文」を解説!/

「えずく」の使い方・例文

「えずく」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.彼女はつわりがひどくて、いつもえずいている。
2.そんなにえずくのは病気の可能性があるから病院で診てもらったほうがいい。
3. 朝の食べ物が悪かったのか、ずっとえずきがとまらない。

例文でわかるように「えずく」は語尾が変化する動詞です。「えずいて」とか「えずいた」のように使うため、つい「えずい」という言葉と混同しがちですが、「えずい」は「ひどい」とか「怖い」を意味する形容詞に位置づけられています。どちらも不快な状態を意味するという点では関連していますが、間違って使わないよう注意してください。

「えずく」の類義語は?違いは?

image by iStockphoto

次に「えずく」の類義語を見ていきましょう。どの言葉もなじみのあるものですから簡単に使い分けることができると思います。

その1「吐く」

「吐く」というのは食べたものを実際に戻してしまい、胃の中が空っぽになってしまう状態です。気持ちが悪くて「吐きそうになる」場合も同様に「えずく」といいます。このように「えずく」というのは、両方の意味で使える便利な言葉です。ただし「息を吐く」などという場合は「えずく」とは言わないことはおわかりになりますね。「えずく」というのは体調や気分が悪いときに使う表現です。

\次のページで「その2「こみ上げる」」を解説!/

その2「こみ上げる」

「こみ上げる」も「えずく」の類義語と言えます。この場合はあくまでも胃の内容物が喉元へ向かってくる状態のことです。映画などを観て感動し、涙がこみ上げてくるといった場合には使いません。

その3「虫酸が走る」

「虫酸が走る」という使い方は、先に挙げた「吐く」や「こみ上げる」のような即物的な表現ではありません。これは多分に感情的なもので、吐き気をもよおすほど不快な状態を指すものです。ですから「嫌な上司に罵倒されて虫酸が走った」といっても実際に胃の内容物を吐いてしまうということはありません。

「えずく」の対義語は?

「えずく」の対義語はなんでしょうか。「えずく」の意味は「嘔吐する」とか「吐き気をもよおす」ですが、その反対の適切な言葉はありません。胃の中の物を吐き出すのだから、その反対は「食べる」ではと考えられそうですね。しかし「吐き気をもよおす」という意味を考えると「食べる」がその反対の意味を持つ言葉と考えることはできません。

「えずく」の英訳は?

image by iStockphoto

最後に「えずく」の英訳を見ていきましょう。実際に吐いてしまう場合と吐き気がする場合では使い方が違います。

その1「vomit」

「vomit」という単語が「えずく」の意味を持つ英語として挙げられるでしょう。「vomit」は実際に嘔吐する状態を表し「The bus ride made her feel so sick that she began to vomit.(彼女はバスに酔って吐き始めた)」のように使います。より現代的な使い方をするなら「throw up」が適当です。

その2「nausea」

「nausea」も「えずく」という意味があります。ただし「vomit」と違って「nausea」は「吐き気がする」「吐き気をもよおす」場合に使用しますから、使い分けに注意してください。この意味でフランスの作家・ジャン=ポール・サルトルの代表作『嘔吐』の英語のタイトルは『Nausea』ですから、直訳すれば「吐き気」とするのが正しいのです。しかし邦題をつけるに当たって『吐き気』とするより『嘔吐』のほうが語感がいいと訳者は考えたのでしょう。

\次のページで「「えずく」を使いこなそう」を解説!/

「えずく」を使いこなそう

この記事では「えずく」の意味・使い方・類語などを説明しました。方言ですから使っても相手が理解できないかもしれません。しかし関西に旅行に行ったりしたときにこの言葉を現地の人に使ってみるのもいいでしょう。もっとも関西の人たちは「えずく」が方言だとは思っていない人が多いようですから、あなたが期待したような反応は得られないかもしれません。方言もりっぱな日本語です。遠くへ出張したときなどに注意して聞いているとその地方での方言を聞くことができるかもしれません。それも旅行の楽しみの一つですね。

" /> 「えずく」の意味や使い方は?例文や類語を元広報紙編集者がわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

「えずく」の意味や使い方は?例文や類語を元広報紙編集者がわかりやすく解説!

この記事では「えずく」について解説する。

端的に言えばえずくの意味は「嘔吐する」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

自治体広報紙の編集を8年経験した弘毅をを呼んです。一緒に「えずく」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/八嶋弘毅

自治体広報紙の編集に8年携わった。正確な語句や慣用句の使い方が求められるため、正しい日本語の使い方には人一倍敏感。

「えずく」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「えずく」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「えずく」の意味は?

「えずく」には、次のような意味があります。

吐き気をもよおす。また、へどを吐く。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「えずく」

「えずく」と聞いて意味のわからない方もいるかもしれません。これは方言なのです。三省堂の『全国方言辞典』では「京都の方言」と紹介されています。しかし京都に限らず「えずく」という言葉は京都だけにとどまらず、広く大阪などを中心とした関西地方で使われている言葉です。

都道府県別のニュースを伝えるポータルサイト「Jタウンネット」が「えずく」という言葉の認知度についてアンケートをとったことがあります。その投票結果を見ると興味深い事実がわかりました。関西圏に近く、関西弁に似た話し方をする地域が多いにもかかわらず、三重県では「えずく」について「まったく知らなかった」が69.5%で「聞いたことも使ったこともある」との回答26.0%を大幅に上回ったのです。

ところが遠く離れた東京では「まったく知らなかった」が12.7%であったのに対し「聞いたことも使ったこともある」と答えた人が66.4%と半数を超えました。東京をはじめとする関東には関西を含め全国からたくさんの人が集まってきています。標準語以外にもそれぞれの出身地で使っていた言葉が反映された結果だと言えるのではないでしょうか。

「えずく」の語源は?

次に「えずく」の語源を確認しておきましょう。「えずく」には語源はなく古来から使われてきた言葉のようです。歴史的仮名遣いでは「ゑづく」と表記されます。そうすると「えずく」ではなく「えづく」が正しいと思う方もいるのではないでしょうか。「えずく」は漢字で「嘔吐く」と書きます。

「吐く」は嘘を吐くなど「つく」と読みますから「えづく」が正しいと勘違いしてしまいそうです。しかし正しくは「えずく」ですから間違えないようにしてください。「嘔吐く」は文字どおり嘔吐することですが、そのほか体調が悪くて吐き気をもよおすだけで実際に嘔吐していない場合でも「えずく」と言います。

\次のページで「「えずく」の使い方・例文」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: