この記事では「お払い箱」について解説する。

端的に言えばお払い箱の意味は「不用なものを処分する」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元大手予備校校舎長で大学入試の国語指導歴が長いライターのみゆなを呼んです。一緒に「お払い箱」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「お払い箱」の意味や語源・使い方まとめ

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「お払い箱(おはらいばこ)」は「お払箱」「 御祓い箱」とも書きます。いずれにせよ言われて良い気分になる言葉ではないですね。ただ元々は神社に由来がある言葉で、はじめから今私たちが感じるようなニュアンスを持っていたわけではないと知っている人は多くはないのではないでしょうか。今回は「お払い箱」について、正しい意味や語源・使い方を紹介します。特に語源を知ると、「だからこういう意味になったのか!」と納得すること請け合いですよ。

「お払い箱」の意味は?

「お払い箱」には、次のような意味があります。

1.中世から近世にかけて、御師 (おし) が、毎年諸国の信者に配って歩いた、伊勢神宮の厄よけの大麻を納めた小箱。 御払箱、はらえばこ。
2.使用人が勤めを辞めさせられること。不用品を捨てること。廃棄。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「お払い箱」

現在使われる「お払い箱」の意味は2ですね。いらなくなったものを捨てる、またそれらの不用品を指します。人間関係やビジネスにおいても使われる言葉で、相手が自分にとって必要ではなくなった、会社組織なら社員が解雇になる、そんな状況を指す言葉です。近頃はモノも人間関係も「断捨離」が流行っていますから、「お払い箱」とされるケースも多いかもしれませんね。

「お払い箱」の語源は?

次に「お払い箱」の語源を確認しておきましょう。

「お払い箱」は、元々は「お祓(はら)い箱」と書かれており、伊勢神宮のお祓いの札を入れておく箱を指していました。新年になると毎年新しいお札が来て、中に入っていた古いお札と取り換えることになります。このことから「お祓い」を「お払い」にかけて転じさせ、「不用品を捨てる」という意味になりました。

\次のページで「「お払い箱」の使い方・例文」を解説!/

「お払い箱」の使い方・例文

「お払い箱」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.卒業を機に、古くなった学習机をお払い箱にした。
2.会社をお払い箱になってしまった。

「お払い箱」はモノに対しても人に対しても使える点に注目しましょう。

例文1はモノに対して「お払い箱」を用いた例です。長い間使った学習机が古くなってきました。自分も卒業という節目を迎え、もうこの机で勉強することはなさそうです。だから卒業をきかっけに、古い机を処分することに決めた、という意味を表しています。

例文2は人間関係、特に「会社をくびになる」という意味で使われている「お払い箱」ですね。不況のせいでリストラも他人事ではないこの頃。会社にも都合があり仕方がないとはいえ、解雇の通知は複雑な思いが交錯するもの。解雇される人が使う「お払い箱」には、少しばかりの恨み節も感じられます。

「お払い箱」の類義語は?違いは?

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「お払い箱」は不用品を捨てる、解雇するという意味だと分かりました。この言葉に類義語もたくさんありますが、代表的な4つをご紹介します。

その1「お役御免(おやくごめん)」

「お役御免」は「役目をやめさせられること、仕事をしなくてもよくなること。古くなったり不用となったりした物を処分すること」という意味があります。まさに「お払い箱」と同じですね。

「お役御免」の「お役」とは昔の言葉で「公から命じられた務め」を指し、「御免」は 役職などが解かれることを、その決定を下す者を敬っていう言葉です。昔から使われている言葉という点でも、「お払い箱」と通じるところがありますね。

\次のページで「その2「厄介払い(やっかいばらい)」」を解説!/

その2「厄介払い(やっかいばらい)」

「厄介払い」も「お払い箱」の類義語です。「厄介払い」とは「厄介者や厄介なことを追い払うこと」という意味で、転じて面倒を引き起こすモノを処分することにも使われるようになりました。「お払い箱」よりも相手を厄介に思う、不要に思うニュアンスが強い言葉です。

その3「引導を渡す(いんどうをわたす)」

「引導を渡す」は「相手の命がなくなることをわからせる。あきらめるように最終的な宣告をする」という意味です。元々は、僧侶が葬儀の際に棺の前に立ち、死者が悟りを得るように法語を唱えることを指す言葉でした。ここから転じて、もうこの先はない、諦めさないと相手に伝えるときに使われるようになりました。

その4「肩叩き(かたたたき)」

元々は凝りをほぐすために肩をトントンとたたく動作を指す言葉ですが、転じて退職勧告を意味するようになりました。上司が部下の肩を軽くたたいて話をすることからきています。経営不振や事業縮小など、雇用側都合の解雇のことを遠回しに表現した言葉です。その他、同じ意味で「罷免(ひめん)」「更迭(こうてつ)」という言葉もあります。

「お払い箱」の対義語は?

残念ながら「お払い箱」に対義語はありません。「不要なものを処分する、解雇する」という意味を考えたときに、対義になる言葉は思い浮かびませんよね。「お払い箱」の反対の言葉が必要な場合は、「必要なものを手に入れる、従業員を新規採用する」と説明的に表現することになります。

「お払い箱」の英訳は?

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「不要なものを処分する、解雇する」という意味の英単語は数多くあります。ここでは「お払い箱」の持つニュアンスに近いものを2つご紹介しましょう。

その1「kiss off」

「kiss off」はアメリカ英語の俗語で、「手放す、捨てる、避ける、逃げる、出て行く、ご破算にする、帳消しにする」といった意味を持つ言葉です。これまでの状態をなかったことにする、というイメージが中心にありますね。特に「解雇する」ことを遠回しに表現する際によく使われます。

\次のページで「その2「abandon」」を解説!/

They kissed me off.
「彼らは私をお払い箱にした(解雇した)」

その2「abandon」

「abandon」は「捨てる、見捨てる、捨て去る、途中でやめる」といった意味の英単語です。「abandoned」として形容詞的に使うこともできます。

...but the hat was such a great success that she abandoned the nest.
「でも帽子がとてもいい具合だったので、ネバーバードは巣をお払い箱にしたのです」(- James Matthew Barrie『ピーターパンとウェンディ』)

「お払い箱」を使いこなそう

この記事では「お払い箱」の意味・使い方・類語などを説明しました。

元々は伊勢神宮のお札という大切なものを入れておく箱を指した言葉が、いつの間にか「不用品を処分する」という意味に転じたというのは日本語の面白いところですね。「お払い箱」は日常会話でも使われる一般的な言葉です。語源を含めて正しい意味や使い方をマスターし、ワンランク上の表現力を身につけましょう!

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国語言葉の意味

「お払い箱」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校校舎長がわかりやすく解説!

この記事では「お払い箱」について解説する。

端的に言えばお払い箱の意味は「不用なものを処分する」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元大手予備校校舎長で大学入試の国語指導歴が長いライターのみゆなを呼んです。一緒に「お払い箱」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「お払い箱」の意味や語源・使い方まとめ

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「お払い箱(おはらいばこ)」は「お払箱」「 御祓い箱」とも書きます。いずれにせよ言われて良い気分になる言葉ではないですね。ただ元々は神社に由来がある言葉で、はじめから今私たちが感じるようなニュアンスを持っていたわけではないと知っている人は多くはないのではないでしょうか。今回は「お払い箱」について、正しい意味や語源・使い方を紹介します。特に語源を知ると、「だからこういう意味になったのか!」と納得すること請け合いですよ。

「お払い箱」の意味は?

「お払い箱」には、次のような意味があります。

1.中世から近世にかけて、御師 (おし) が、毎年諸国の信者に配って歩いた、伊勢神宮の厄よけの大麻を納めた小箱。 御払箱、はらえばこ。
2.使用人が勤めを辞めさせられること。不用品を捨てること。廃棄。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「お払い箱」

現在使われる「お払い箱」の意味は2ですね。いらなくなったものを捨てる、またそれらの不用品を指します。人間関係やビジネスにおいても使われる言葉で、相手が自分にとって必要ではなくなった、会社組織なら社員が解雇になる、そんな状況を指す言葉です。近頃はモノも人間関係も「断捨離」が流行っていますから、「お払い箱」とされるケースも多いかもしれませんね。

「お払い箱」の語源は?

次に「お払い箱」の語源を確認しておきましょう。

「お払い箱」は、元々は「お祓(はら)い箱」と書かれており、伊勢神宮のお祓いの札を入れておく箱を指していました。新年になると毎年新しいお札が来て、中に入っていた古いお札と取り換えることになります。このことから「お祓い」を「お払い」にかけて転じさせ、「不用品を捨てる」という意味になりました。

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