この記事では「やおら」について解説する。
端的に言えば「やおら」の意味は「そろそろ、おもむろに、しずかに」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「やおら」の意味や例文、類語などを見ていきます。

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仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「やおら」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「やおら」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「やおら」の意味は?

「やおら」には、次のような意味があります。

〘副〙

① 静かに身を動かすさま、また、徐々に事を行なうさまを表わす語。そろそろと。おもむろに。やわら。現代では悠然としたさまをいうことが多い。

② 時間の経過とともに変化、進展し、ようやくその状態になるさま、事態が変わるさまを表わす語。

出典:コトバンク

「やおら」は行動の起こし方が静かで落ち着いて見える様子を表し、動詞にかかる修飾語として用いられます。またとてもかたい文章語で、日常会話にはあまり登場しません。行動を起こすに際して、その起こし方が第三者の目にはあわてずに落ち着いて見えるというニュアンスで、しばしば意外性の暗示を伴うでしょう。

「やおら」の語源は?

次に「やおら」の語源を確認しておきましょう。「やおら」は漢字では「徐ら」と書きますよ。そして「やおら」はゆるやかに進むさまや少しずつ変化するさまを表す「徐々に」から派生した言葉です。それでは「徐」の漢字の成り立ちについて説明しましょう。「徐」は道を表す「ぎょうにんべん」と、ゆっくりの意味の音を示す「余」とを合わせた字。道を「ゆっくり」と歩く意味を表します。

\次のページで「「やおら」の使い方・例文」を解説!/

「やおら」の使い方・例文

「やおら」の使い方について例文を挙げて解説していきます。この言葉は、たとえば以下のように用いられますよ。

1.議論百出の後、社長は本来発言などしないのだが、やおら口を開き「今回のアンケート調査においてわが社の商品の使用感やイメージに関してのコメントが多く寄せられたが、特に最近の若者の気持ちやことばからヒントを得ることができた。また、勘違いしていた認識を改めることができたところだ」と呟いた。

2.猫がテーブルの上で丸くなって寝ていた。「あなたは上手に柔らかい体を利用して眠るのね、本当に気持ちよさそう」と声を掛けると、やおら起き上がってのびをした。

例文1からはさまざまな意見が出た後に、社長がゆったりと話し始めた様子が伝わってきますし、例文2からはテーブルの上で昼寝をしていた猫が、のっそりと上体を起こしてゆるやかに体を伸ばし始めた様子がわかりますね。

「やおら」の類義語は?違いは?

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「やおら」と似たような意味をもつ言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「おもむろに」

「おもむろに」は行動の起こし方が静かで落ち着いている様子を表し、動詞にかかる修飾語として用いられます。ふつう人間の行為について用いますが、人間以外の動作についても用いることも皆無ではありません。また、行動を起こすに際してその起こし方があわてずに落ち着いている様子を表し、しばしば余裕の暗示を伴い、行動を起こすまでの所要時間や、行動そのものにかかる時間は問題にしません。例えば「会長は議論百出のあとおもむろに口を開いた」はあわてず落ち着いてゆっくりと意見を述べ始めたという意味。「やおら」との違いはしばしば余裕の暗示を伴うという点でしょう。

\次のページで「その2「のろのろ」」を解説!/

その2「のろのろ」

「のろのろ」は動作が鈍くて速度が遅い様子を表します。やや客観的な表現で、話者の焦燥・不快の暗示はそれほど強くはありません。「のろのろ」は「とろとろ」や「のろくさ」に似ていますが、「とろとろ」は現代語用法で、主体の動作や反応が鈍くて話者の思うようにはいかない様子を表し、怒りと焦燥の暗示がありますし、「のろくさ」は主体の動作の手際が悪く遅いことについて、話者が怒りと焦燥・侮蔑の暗示を伴って述べます。「やおら」との違いは動作が鈍くて速度が遅い様子を表すという点でしょう。

その3「ゆるゆる」

「ゆるゆる」は速度がいかにも遅い様子を表します。「気球はゆるゆる地上に降りた」などのように用い、単独でまたは「と」が付いて述語にかかる修飾語になりますよ。進行している物の速度が非常に遅いことを実感する様子を表し、余裕の暗示があります。この「ゆるゆる」は「ゆっくり」に似ていますが、「ゆっくり」は速度が遅いことを客観的に表す表現。「やおら」との違いは速度がいかにも遅い様子を表すという点です。

「やおら」の対義語は?

「やおら」と反対の意味を持つ言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「すぐさま」

「すぐさま」はある状況や行動に対する反応にかかる時間が非常に短い様子を表し、述語にかかる修飾語として用いられます反応時間が短いことを客観的に表し、特定の感情は暗示されていません。「すぐさま」は「すかさず」や「かんはついをいれず」や「さっそく」に似ていますが、「すかさず」には抜け目なさの暗示があり、「かんはついをいれず」は反応時間が非常に短いので、ほとんど同時と感じられる点にポイントがあります。また「さっそく」はある行動の後、時間をおかずに次の行動に移る様子を表し、主体の積極性の暗示があり、前の行動と後の行動との間の因果関係には言及しないでしょう。

その2「たちまち」

「たちまち」は非常に短時間の間に事態が大きく進展する様子を表します。「火はたちまちのうちに隣家に燃え移った」の「たちまちのうちに」または単独で、述語にかかる修飾語として用いられることが多いですが、述語になることも皆無ではありません。また、非常に短時間の間に事態が大きく進展する様子を表し、進展する前と後とで状態が大きく変化する暗示があります。そのため条件のつかない単独の動作などについては用いられませんよ。

「やおら」の英訳は?

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「やおら」の英訳にはどのようなものがあるのでしょうか。英語で「やおら」と言い表す時の例をさっそく見ていきましょう。

\次のページで「「tardily」」を解説!/

「tardily」

「tardily」は「遅ればせながら、のろのろと」という意味。「He was called by his name and tardily opened the door and entered the room」で「彼は名前を呼ばれてやおらドアを開けて部屋に入ってきた」、「She started walking tardily with an umbrella」で「彼女はやおら傘をさして歩きだした」と訳すことができます。

「やおら」を使いこなそう

この記事では「やおら」の意味・使い方・類語などを説明しました。「やおら」は行動の起こし方が静かで落ち着いて見える様子を表し、動作があわてずに落ち着いて見えるというニュアンスで、意外性の暗示を伴うと解説しましたね。そのため「名前を呼ぶと彼はやおら顔を上げた」は間違いで、正しくは「名前を呼ぶと彼はおもむろに顔を上げた」となります。また「やおら」は「おもむろに」に似ていますが、「おもむろに」は行動の起こし方が静かで落ち着いているという意味で、しばしば余裕の暗示を伴いますよ。近年、「やおら」を「いきなり」「急に」という意味で用いる傾向が見受けられますので注意しましょう

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国語言葉の意味

「やおら」の意味や使い方は?例文や類語をプロダクション編集者がわかりやすく解説!

この記事では「やおら」について解説する。
端的に言えば「やおら」の意味は「そろそろ、おもむろに、しずかに」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「やおら」の意味や例文、類語などを見ていきます。

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仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「やおら」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「やおら」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「やおら」の意味は?

「やおら」には、次のような意味があります。

〘副〙

① 静かに身を動かすさま、また、徐々に事を行なうさまを表わす語。そろそろと。おもむろに。やわら。現代では悠然としたさまをいうことが多い。

② 時間の経過とともに変化、進展し、ようやくその状態になるさま、事態が変わるさまを表わす語。

出典:コトバンク

「やおら」は行動の起こし方が静かで落ち着いて見える様子を表し、動詞にかかる修飾語として用いられます。またとてもかたい文章語で、日常会話にはあまり登場しません。行動を起こすに際して、その起こし方が第三者の目にはあわてずに落ち着いて見えるというニュアンスで、しばしば意外性の暗示を伴うでしょう。

「やおら」の語源は?

次に「やおら」の語源を確認しておきましょう。「やおら」は漢字では「徐ら」と書きますよ。そして「やおら」はゆるやかに進むさまや少しずつ変化するさまを表す「徐々に」から派生した言葉です。それでは「徐」の漢字の成り立ちについて説明しましょう。「徐」は道を表す「ぎょうにんべん」と、ゆっくりの意味の音を示す「余」とを合わせた字。道を「ゆっくり」と歩く意味を表します。

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