

端的に言えば「僻み」の意味は「ひねくれた気持ちや考えのこと」だが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
元教員のWebライター、神シゲを呼んだ。一緒に「僻み」の意味や例文、類語などを見ていくぞ。

解説/桜木建二
「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

ライター/神シゲ
元教員Webライター。現役のころは語学研究に没頭していた。日本語の微妙なニュアンスをわかりやすく伝えていく。
「僻み」の意味は?
「僻み」には、次のような意味があります。
ひがむこと。ひねくれた考えや気持ち。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「僻み」
「僻み」は漢字では珍しく感じますが、日常会話でもよく使われますね。「僻み」とは素直に物事を受け取れず、ひねくれた考えになることを表します。僻み根性という言葉もありますが、大変ネガティブな単語といえるでしょう。
「僻み」の語源は?
「僻み」に使われている「僻」という文字は元々何を表しているのでしょうか。右側の「辟(へき)」という部分は屈んだ人に刑罰を与える様子が表現されているのです。刑罰を受ける人というところから転じて「僻み」という言葉が生まれました。確かに罪人には屈折したイメージがありますね。
避難や回避の「避」という文字も刑罰から逃れるという意味からきているのです。
「僻み」の使い方・例文
「僻み」の使い方を例文でみていきましょう。この言葉は以下のように用いられます。
1. 君の同僚が言っていることはただの僻みだよ。
2. その女性はよく僻まれたり、悪口を言われたりすることがある。
3. 相手の僻みが短所となって表れてしまった。
「僻み」という言葉が使用されるとき、必ず対象となるもの(基本的には人間)が存在します。言い換えれば、「僻み」とは他人に対して抱く負の考え方であるといえるでしょう。
「僻み」は名詞ですが、「僻む」という動詞としてもよく使われます。あなたも友人が誰かを羨ましそうにして、拗ねているような行動をした場合に「僻むなよ」と言ったことはありませんか?日常会話ではそのように冗談めかして使うことの方が多いかもしれません。

「僻(へき)」という文字には「かたよった土地」という意味もあるんだ。「僻地(へきち)」は都心から離れた田舎を表すぞ。
その1.「妬み」
「僻み」と「妬み(ねたみ)」違いを説明しろといわれても、ちょっと「え?」となってしまいませんか?日常会話でもよく使う言葉なのにいまいち違いがよくわからないものです。まずは例文から見てみましょう。
1. 人気者の彼は性格も良く、評価も高い。妬みがなくはないよ。
2. プロジェクトに抜擢された彼女に妬みを抱いている社員もいるだろう。
「僻み」も「妬み」も恵まれた他者と恵まれていない自己という構図は同じです。異なるのはその中心がどこにあるかということでしょう。「僻み」は他者を羨む自分が中心になっています。僻んでいる人といわれたら「どうせ俺なんて…」みたいな台詞が浮かびませんか。逆に「妬み」は他者に着目しているときに使います。妬んでいる人は「あいつなんて…」のように言いそうですよね。
補足ですが、妬みに近い意味で「嫉み(そねみ)」という言葉もあるのです。「妬み嫉み」と二語を合わせることで負の感情が強まります。気付きましたでしょうか?そうです。この二字を合わせてできた熟語が「嫉妬(しっと)」ですね。
その2.「卑屈」
いじけて必要以上に自分をさげすむことを「卑屈(ひくつ)」といいます。「卑しさ(いやしさ)」で心が屈折しているイメージです。比較する他者がいなくても卑屈になることはできます。とにかく自分に自信がないという特徴が強いです。
彼はどこまでも卑屈な人です。
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