この記事では「不殺生」について解説する。

端的に言えば、不殺生の意味は「殺生がないこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスなどを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元新聞記者で、ライター歴20年のトラコを呼んです。一緒に「不殺生」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/トラコ

全国紙の記者を7年。その後、雑誌や書籍、Webでフリーの記者などとして活動中。文字の正確さ、使い方に対するこだわりは強い。

「不殺生」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速、「不殺生」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

まず、分からない言葉があれば、辞書や辞典、事典などで調べる、インターネットで言葉を検索するのがおすすめです。

「不殺生」の意味は?

まず、「不殺生」は「ふせっしょう」と読みます。言葉そのものは、辞書や辞典で調べてもなかなか出てきません。

そこで、不殺生の対義語である「殺生」の意味を調べてみました。

1.生き物を殺すこと。仏教では最も重い罪の一つとされる。「無益な殺生」「みだりに殺生してはいけない」
2.むごいこと。また、そのさま。残酷。「殺生な仕打ち」「そんな殺生なことは言うな」
3.「殺生戒」の略。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「せっ-しょう【せっしょう】」

殺生は、生命を持つ生き物を殺すことという意味をはじめ、むごいことや残酷なことを意味する言葉です。そのため、不殺生は、生き物を殺さないこと(殺生しないこと)、という意味となります。

また、殺されそうな脅威、現代における人間社会の中で殺生を助長するような状況がないことも、不殺生です。

「不殺生」の語源は?

次に、「不殺生」の語源を確認しておきましょう。

仏教には、お釈迦様が説いた、在家信者が死後に地獄へ落ちないために日々の生活で、自分が守るべき基本の生き方「五戒」(シーラ)いう5つの戒律があります。この五戒は「不殺生」「不偸盗」「不邪淫」「不妄語」「不飲酒戒」です。

不殺生戒が一番初めであり、他人をはじめ、生きものを故意に殺していけないと説き、自らは手を下さない他殺も含まれます。

\次のページで「「不殺生」の使い方・例文」を解説!/

「不殺生」の使い方・例文

続いて、「不殺生」のさまざまな使い方を、例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.その男女は不殺生こそ実践したものの、一度の過ちで事件を起こし、その身を破滅させた。
2.不殺生戒を守らなければ、極楽へ行けず地獄に落ち、二度と生まれ変わることができない。
3.インドのヒンズー教徒やジャイナ教徒にも、不殺生として菜食主義者が少なからずいる。
4.仏教における十善戒(十善業道)の一番最初も不殺生だ。

例文1は、人間を含む生き物を殺すことはしなかったものの、他の過ちを犯してしまったため、五戒すべてを守れず、閻魔大王がいる地獄へ落ちてしまったかのような意味合いだ。

例文2も、五戒の一番初めにある不殺生戒についての表現。五戒を守らないと、仏教における転生輪廻から外れ、生き返ることができない。

例文3は、不殺生は本来は仏教徒のための教えであるが、ヒンズー教徒やジャイナ教徒の中にも不殺生を守って菜食を貫く信者がいるという意味だ。

そして、例文4は、五戒にさらに5つの大事な教えが含まれる仏教の「十善戒」についての記述となっている。十悪に対極にある教えだ。

「不殺生」の類義語は?違いは?

image by iStockphoto

続いて、「不殺生」の類義語や、それぞれの言葉が持つ様々な意味の違いについて、見ていきましょう。

不殺生の類義語には、非殺殺さないノンキリングなどがあります。

 

その1「非殺」

不殺生の類義語、その最も直接的なのが「非殺」です。言葉通り「殺さない」という意味になります。英語にすると「ノンキリング」です。

非殺と似た言葉に「不殺」があります。「不」は、~でない、~しないといった言葉を打ち消す、否定する意味。一方、「非」の意味は、道理に反する、正しくない、欠点などです。

大きく見ると、同じような意味ではあるものの、教えや考えのもと、行為そのものを否定する場合は「非殺」が適切と言えます。

\次のページで「その2「殺人未遂」」を解説!/

その2「殺人未遂」

不殺生の類義語ではないものの、似たような意味合いを持つ「殺人未遂」についても、調べておきましょう。

未遂は、犯罪の実行へ着手したものの、行為者本人の意思に基づかない外部的な障害によって完了しなかった場合や、自己の意思によって犯罪を中止した場合も含まれます。

殺人未遂が不殺生に含まれるかどうかについては、殺人を自らの意思で試みており、完逐はしていなくても不殺生とは言えなさそうです。

「不殺生」の対義語は?

不殺生」の対義語は、意味の項目で説明した通り「殺生」です。

殺生の類義語として、殺害、殺し、賊害、人殺し、殺人などがあり、これも不殺生の対義語と言えます。

いくつかの言葉と意味を見てみましょう。

その1「殺害」

「殺害」の意味は、人を殺すことですが、人間に限らず、動物も含まれます。ただし、植物は含まれません。古くは「せつがい」とも言いました。

類義語として、殺人、他殺、人殺しなど。日頃から、よく使われる言葉です。

 

その2「賊害」

賊害」という言葉は、あまり聞いたことがないかもしれません。読み方は「ぞくがい」です。

この賊害は、殺傷すること、または、損害を与えること、という意味になります。「太平記」に登場する「詔(ぜう)を矯(つ)けて藩籬を賊害す」との一文が有名です。

「不殺生」の英訳は?

image by iStockphoto

さらに、「不殺生」の英訳についても、確認しておきましょう。

不殺生を英語に訳すと、NonkillingNon-killingなど。ヒンドゥー教ではahimsaと言います。

その1「Nonkilling」

不殺生をそのまま英語に訳すと「Nonkilling」が、最も適切な言葉です。「Nonkilling」を基本に、not killing, against killingなどの言葉も、不殺生の意味で使われます。

例文を見てみましょう。

\次のページで「その2「ahimsa」」を解説!/

・The first condition of being for human is Nonkilling.

人が人たる第1条件は不殺生である。

・The first precept is that you must not kill.

戒をまず守るには、不殺生だ。

・Abiding by a doctrine of non-killing

不殺生の教えを守る

・violation of the commandment aganist killing

不殺生戒を犯した

その2「ahimsa」

ahimsa」は、ヒンドゥー教で不殺生、非暴力を指す言葉です。「アーヒムサー」「アヒムサ」「アヒンサー」などと読みます。

なかなかなじみがない言葉かもしれません。例文を見てみましょう。

・He believe ahimsa to be central to a quest for truth.

彼は、真理の探究における中心は不殺生だと信じている。

・the Buddhist thought of ahimsa

不殺生という仏教思想

「不殺生」を使いこなそう

この記事では、「不殺生」の意味・使い方・類義語などを説明しました。

不殺生は、仏教における「五戒」「十善戒」などで最初の戒律であり、人間として生きる上で、まず初めに守るべき教えとして、昔から広く知られています。人間のみならず、不殺生の教えは、動物に対しても同様です。

この不殺生には、ヒンドゥー教で「ahimsa」という言葉もあります。ぜひ知っておきましょう。

" /> 「不殺生」の意味や使い方は?例文や類語を元新聞記者がわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

「不殺生」の意味や使い方は?例文や類語を元新聞記者がわかりやすく解説!

この記事では「不殺生」について解説する。

端的に言えば、不殺生の意味は「殺生がないこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスなどを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元新聞記者で、ライター歴20年のトラコを呼んです。一緒に「不殺生」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/トラコ

全国紙の記者を7年。その後、雑誌や書籍、Webでフリーの記者などとして活動中。文字の正確さ、使い方に対するこだわりは強い。

「不殺生」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速、「不殺生」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

まず、分からない言葉があれば、辞書や辞典、事典などで調べる、インターネットで言葉を検索するのがおすすめです。

「不殺生」の意味は?

まず、「不殺生」は「ふせっしょう」と読みます。言葉そのものは、辞書や辞典で調べてもなかなか出てきません。

そこで、不殺生の対義語である「殺生」の意味を調べてみました。

1.生き物を殺すこと。仏教では最も重い罪の一つとされる。「無益な殺生」「みだりに殺生してはいけない」
2.むごいこと。また、そのさま。残酷。「殺生な仕打ち」「そんな殺生なことは言うな」
3.「殺生戒」の略。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「せっ-しょう【せっしょう】」

殺生は、生命を持つ生き物を殺すことという意味をはじめ、むごいことや残酷なことを意味する言葉です。そのため、不殺生は、生き物を殺さないこと(殺生しないこと)、という意味となります。

また、殺されそうな脅威、現代における人間社会の中で殺生を助長するような状況がないことも、不殺生です。

「不殺生」の語源は?

次に、「不殺生」の語源を確認しておきましょう。

仏教には、お釈迦様が説いた、在家信者が死後に地獄へ落ちないために日々の生活で、自分が守るべき基本の生き方「五戒」(シーラ)いう5つの戒律があります。この五戒は「不殺生」「不偸盗」「不邪淫」「不妄語」「不飲酒戒」です。

不殺生戒が一番初めであり、他人をはじめ、生きものを故意に殺していけないと説き、自らは手を下さない他殺も含まれます。

\次のページで「「不殺生」の使い方・例文」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: