この記事では「なまじ」について解説する。
端的に言えば「なまじ」の意味は「できそうもないことを無理につとめるさま、すべきでない、またはしなくてもいいことをするさま、深く心を用いないさま」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「なまじ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/flicker

仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「なまじ」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「なまじ」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「なまじ」の意味は?

「なまじ」には、次のような意味があります。

《「なまじい」の音変化》

[形動][文][ナリ]完全ではなく中途半端であるさま。いいかげん。なまじっか。「憖なことでは承知しまい」

出典:コトバンク

「なまじ」は中途半端で徹底しない様子を表します「なまじい」は「なまじ」よりも古風なニュアンスがあり、現在ではあまり用いられません。「いじめっ子をなまじいにしかるのは禁物だ」は軽率にしかることという意味の「なまじい」。また「東野君には電話しないほうがいいわ。なまじ声を聞くとつらくなるだけだから」などは「なまじ…すると、…だ」という形で条件句をつくり、一般には好ましい条件がかえって好ましくない結果を招く様子を表します。この場合には「声を聞かなければつらくないのに」という、逆の条件を想定すれば好ましい結果が得られることについて、慨嘆と反省の暗示がこもりますよ。

「なまじ」の語源は?

次に「なまじ」の語源を確認しておきましょう。「なまじ」は「生強い(なまじい)」から派生した言葉です。それでは「生」「強」の漢字の成り立ちについて説明しましょう。「生」は地上に草の芽がはえのびたかたちを描いた字で、「はえる」「うまれる」「いきる」「いのち」などの意味を表しますよ。また「強」は「虫」と、刺す意味の音を示す「キョウ」とを合わせた字です。馬にたかり刺す虫「うまばえ」を表し、後に「つよい」意味に使われるようになりました。今の字は古い字の「口」の部分が「ム」に変わった形です。

\次のページで「「なまじ」の使い方・例文」を解説!/

「なまじ」の使い方・例文

「なまじ」の使い方について例文を挙げて解説していきます。この言葉は、たとえば以下のように用いられますよ。

1.彼女の歌はなまじのプロよりよほどうまい。自信があるのもうなずける。

2.瀕死の野生動物になまじな治療はかえって残酷だ。不完全な状態で森に戻すよりもきちんとケアする方が効果的だ。

3.辞書はなまじなまなかの覚悟ではできない。生半可な考えで挑むと失敗に終わるぞ。

それでは「なまじ」のそれぞれの用法について解説しましょう。「彼女の歌はなまじのプロよりよほどうまい」や「瀕死の野生動物になまじな治療はかえって残酷だ」は名詞にかかる修飾語の用法です。そして「辞書はなまじなまなかの覚悟ではできない」はいい加減な覚悟ではできないという意味で、「なまじなまなか」という言葉は「なまじ」の意味を強めたものですよ。

「なまじ」の類義語は?違いは?

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「なまじ」と似たような意味をもつ言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「なまじっか」

「なまじっか」は中途半端で徹底しない様子を表し、慨嘆・反省・侮蔑などの暗示を伴います。ややくだけた表現で、日常会話中心に用いられますよ。「なまじ」と基本的には同じ意味ですが、「なまじ」よりも実感がこもっており、完了形とともに用いられることが多いです。例えば「今のソフトバンクにはなまじっかなことでは勝てない」などは名詞にかかる修飾語の用法で、「なまじっか親が干渉するから、子供が心を閉ざしてしまうのだ」などは述語にかかる修飾語の用法で慨嘆の暗示があるでしょう。

\次のページで「その2「いいかげん」」を解説!/

その2「いいかげん」

「いいかげん」は中途半端で徹底しない様子を表す表現。また、物事が不徹底である結果、無責任である様子を表しますよ。そして無責任であることについて、慨嘆と憤慨の暗示がこもります。「彼はいい加減な成功では満足しない」などは名詞にかかる修飾語の用法で、「先方にはいい加減に返事をしておいた」などは述語にかかる修飾語の用法。「いいかげん」は「てきとう」に似ていますが、「てきとう」はその場の状況に適合するというニュアンスがあります。「なまじ」との違いは物事が不徹底である結果、無責任である様子を表すという点でしょう。

その3「ほどほど」

「ほどほど」は悪影響が出ないような程度である様子を表しますよ。「競馬が好きなのはいいけれど、うちの人ったらほどほどってことがわかんないのよ」などが基本的な名詞の用法です。また「酒はほどほどにしておいたほうがいいぞ」などは後ろに勧告や命令の表現を伴って、「悪影響の出ない程度でやめろ、それ以上はやるな」という禁止の意味に。「冗談もほどほどにしろ」はそれ以上冗談を言うことを禁止するという意味です。とても冷静な表現で、憤慨の暗示はそれほど強くはありません。ちなみに「ほどほど」は「いいかげん」に似ていますが、「いいかげん」は程度が適当で好ましいというニュアンスで、打消しや逆説の表現を伴う場合には感情的なニュアンスになり、憤慨と怒りの暗示が強くなります。なお「なまじ」との違いは好ましくない結果を招く様子は表さないという点でしょう。

「なまじ」の対義語は?

「なまじ」と反対の意味を持つ言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「なにがなんでも」

「なにがなんでも」はあらゆる困難を排除して目的を完遂しようとする様子を表し、述語にかかる修飾語として用いられます。また、どんな事態になっても目的を完遂しようとする主体の強い意志を暗示しますよ。主体の意志が客観的な情勢に左右されないというニュアンスですので、しばしば主体の強情さや強引さの暗示をもつことがあります。なお、この「なにがなんでも」は「なんとしても」に似ていますが、「なんとしても」はあらゆる手段を尽くして目標を実現する様子を表し、主体の義務感と切迫感の暗示を伴う表現でしょう。

その2「なんとしても」

「なんとしても」はあらゆる手段を尽くして目標の実現を希望する様子を表し、述語にかかる修飾語として用いられますよ。しばしば義務・希望の表現を伴い、あらゆる手段を尽くして目標を実現することについて主体の義務感や切迫感の暗示を伴います。そのため目標実現を希望する程度は非常に高いです。ちなみに「なんとしても」は「なんとかして」や「どうにかして」などに似ていますが、「なんとかして」は到達目標に視点があり、話者の熱意の暗示がありますし、「どうにかして」は手段のほうに視点があります。

「なまじ」の英訳は?

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「なまじ」の英訳にはどのようなものがあるのでしょうか。英語で「なまじ」と言い表す時の例をさっそく見ていきましょう。

\次のページで「「in a halfhearted way」」を解説!/

「in a halfhearted way」

「in a halfhearted way」は「なまじ、なまじっか」という意味です。「He can drive in a halfhearted way, so sitting in the passenger seat of her car is scary」で「彼はなまじ運転ができるものだから、彼女の車の助手席に座ると怖くてしかたがない」、「The most important thing in student guidance in a halfhearted way is that you shouldn't just scold the students」で「生徒指導で何より大事なのはなまじっか生徒をしかってはいけないということだ」となります。

「なまじ」を使いこなそう

この記事では「なまじ」の意味・使い方・類語などを説明しました。「なまじ」は中途半端で徹底しない様子を表す副詞だと解説しましたね。「なまじ」は「なまじっか」によく似ていますが、「なまじっか」のほうがくだけた表現で日常会話中心に用いられ、実感がこもりますよ。例えば「彼はなまじ運転ができるものだから、…」からは運転ができなければ怖くないのにという気持ちが伝わってきまし、「彼はなまじっか運転ができるものだから」からは運転できるから悪いのだという反省の暗示がこもっていることが読み取れるでしょう。

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国語言葉の意味

「なまじ」の意味や使い方は?例文や類語をプロダクション編集者がわかりやすく解説!

この記事では「なまじ」について解説する。
端的に言えば「なまじ」の意味は「できそうもないことを無理につとめるさま、すべきでない、またはしなくてもいいことをするさま、深く心を用いないさま」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「なまじ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/flicker

仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「なまじ」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「なまじ」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「なまじ」の意味は?

「なまじ」には、次のような意味があります。

《「なまじい」の音変化》

[形動][文][ナリ]完全ではなく中途半端であるさま。いいかげん。なまじっか。「憖なことでは承知しまい」

出典:コトバンク

「なまじ」は中途半端で徹底しない様子を表します「なまじい」は「なまじ」よりも古風なニュアンスがあり、現在ではあまり用いられません。「いじめっ子をなまじいにしかるのは禁物だ」は軽率にしかることという意味の「なまじい」。また「東野君には電話しないほうがいいわ。なまじ声を聞くとつらくなるだけだから」などは「なまじ…すると、…だ」という形で条件句をつくり、一般には好ましい条件がかえって好ましくない結果を招く様子を表します。この場合には「声を聞かなければつらくないのに」という、逆の条件を想定すれば好ましい結果が得られることについて、慨嘆と反省の暗示がこもりますよ。

「なまじ」の語源は?

次に「なまじ」の語源を確認しておきましょう。「なまじ」は「生強い(なまじい)」から派生した言葉です。それでは「生」「強」の漢字の成り立ちについて説明しましょう。「生」は地上に草の芽がはえのびたかたちを描いた字で、「はえる」「うまれる」「いきる」「いのち」などの意味を表しますよ。また「強」は「虫」と、刺す意味の音を示す「キョウ」とを合わせた字です。馬にたかり刺す虫「うまばえ」を表し、後に「つよい」意味に使われるようになりました。今の字は古い字の「口」の部分が「ム」に変わった形です。

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