この記事では「剣呑」について解説する。

端的に言えば剣呑の意味は「危険」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、日本文学を専攻し研究している翠を呼んです。一緒に「剣呑」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/翠

中古の日本文学を研究している。様々な時代やジャンルの作品を読み、ことばに触れている。中学校と高校の国語科の教員免許も取得しており、ことばについて分かりやすく説明する。

「剣呑」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「剣呑」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「剣呑」の意味は?

「剣呑」には、辞書によると、次のような意味があります。

危険だと思うさま。また、どうなることかと不安であるさま。危険。

出典:日本国語大辞典 第二版(小学館)「けん‐のん」

「剣呑」は「けんのん」と読み、「危険だと思うさま。危険そのもの。」という意味を持っています。剣を呑みこむなんて、いかにも危険な感じがしますよね。

また、「剣呑」とよく似た言葉に「剣突」という言葉があります。読み方は「けんつく」です。意味は「荒々しくしかりつけること。」という意味で、「剣呑」とは全く異なります。「剣突をくらう」という慣用的表現は、「とげとげしい言葉で拒絶される」という意味を表すものです。「剣呑」と「剣突」は区別して覚えましょう。

「剣呑」の語源は?

次に「剣呑」の語源を確認しておきましょう。「剣呑」の語源は「険難(けんなん)」の変化した語だそうです。「剣難」とは、刀による災難を指しています。それがその危険を察知する意味へと変化していきました。「剣呑」は実は当て字なのです。

日本の昔の文学作品において、「剣呑」という言葉が使われている例はほぼ見受けられません。ただ、「剣難」という買った頤で登場することは江戸時代ごろから確認できます。

\次のページで「「剣呑」の使い方・例文」を解説!/

「剣呑」の使い方・例文

「剣呑」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.教室は、剣呑な空気に包まれていた。

2.剣呑がる彼女を何とかなだめて、一緒にここまで来た。

3.剣呑なことに、あやうく事件に巻き込まれるところだった。

4.彼は、不審な物体に対して剣呑なまなざしを送っていた。

「剣呑」は形容動詞として使うことができます。そのため「剣呑な状態」「剣呑なことに」「剣呑な視線」といった「剣呑な○○」という形で表現することが多いです。二つ目の例文にある「剣呑がる」というのは、「不安を覚える」といったニュアンスを示しています。他に「剣呑そうにする」という形にすることもできますね。

「剣呑」という言葉は、危険を察知した瞬間に使うことの多い言葉です。勘や本能などで感じ取ることのできる危険な雰囲気について言うことが多くあります。

「剣呑」の類義語は?違いは?

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ここでは、「剣呑」の類義語について見ていきましょう。それぞれの類義語と「剣呑」がどのような点で異なるかについても紹介していきます。

その1「危険」

「危険」は「身体、生命に危害の生ずるおそれがあること。危ないさま。」という意味を持つ言葉です。意味は「剣呑」に非常によく似ています。品詞においても、どちらも形容動詞ということで同じような形で使うことが可能です。

「危険」と「剣呑」とで異なる点は、「剣呑」は「不安を覚える」という意味で「剣呑がる」という言葉を使うことができますが、「危険」には「不安に思う」という意味合いがないという点でしょう。

\次のページで「その2「物騒」」を解説!/

その2「物騒」

「物騒」は「ぶっそう」と読みます。意味は、「危険なこと。また、あぶないさま。」です。「剣呑」と同じように、危険なさまについて表しています。

「物騒」と「剣呑」とで異なる点は、「物騒」は字面を観たら推測されるように「あわただしい。そそっかしい。さわがしい。」という意味を持っていますが、「剣呑」にはそれがないという点です。

その3「不穏」

「不穏」は「おだやかでないこと。物事や世の中の状態が安定していないこと。治安をみだすおそれのあること。また、そのさま。険悪。」という意味を持っている言葉です。危険である、という様子を表しているというところで「剣呑」と類似していると言うことができるでしょう。

「不穏」と「剣呑」とで異なる点は、「不穏」は危ない雰囲気を醸し出しているものの、直接的に危険だとしているわけではない一方で「剣呑」は直接的に「危険だ」という様子を示している点です。

「剣呑」の対義語は?

ここでは、「剣呑」の対義語について紹介していきます。

「剣呑」は「危険」という意味を持つ言葉です。そのため、反対の意味を持つ言葉としては、「安全」と言った意味を持つ言葉が適切でしょう。

その1「安全」

「安全」は「危険のないこと。平穏無事なこと。また、そのさま。」という意味を持ちます。「剣呑」が「危険」という意味を持っているのに対し、それを真っ向から否定した意味を持つ言葉が「安全」です。

その2「安心」

「安心」は、「心が安らかで心配のないこと。また、そのさま。」という意味を持っています。「剣呑」が「不安がる」という意味を持っている言葉なのに対して、不安がないということを表したのが「安心」です。

その3「平穏」

「平穏」は、「しずかでおだやかなこと。おだやかで無事なこと。また、そのさま。」という意味を持っている言葉です。「剣呑」と真逆の意味を持っていると言いうことができるでしょう。

ただ、「剣呑」には「騒がしい」という意味はないので、「平穏」の「しずかでおだやか」という意味は一概に「剣呑」の真反対の意味と言い切ることはできません。

\次のページで「「剣呑」の英訳は?」を解説!/

「剣呑」の英訳は?

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ここでは、「剣呑」の英訳について紹介していきます。

その1「parlous」

「parlous」は「危険な。難しい。」という意味を示します。

その2「unsafe」

「unsafe」は「安全」という意味の「safe」を「un」で否定した言葉です。「危険な」という意味を持ちます。

その3「dangerous」

「dangerous」は、日本人にもなじみの深い英単語かと思います。意味は「危険な、物騒な」です。

「剣呑」を使いこなそう

この記事では「剣呑」の意味・使い方・類語などを説明しました。

日常生活において、「剣呑」な場面にはあまり遭いたくはないものですが、語彙の引き出しを増やしておくという意味でも、ぜひ「剣呑」という言葉をおさえていきましょう。また、似たような言葉として間違えられやすい「剣突」についてもおさえておき、区別できるようにしておきたいですね。

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国語言葉の意味

「剣呑」の意味や使い方は?例文や類語を文学院生がわかりやすく解説!

この記事では「剣呑」について解説する。

端的に言えば剣呑の意味は「危険」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、日本文学を専攻し研究している翠を呼んです。一緒に「剣呑」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/翠

中古の日本文学を研究している。様々な時代やジャンルの作品を読み、ことばに触れている。中学校と高校の国語科の教員免許も取得しており、ことばについて分かりやすく説明する。

「剣呑」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「剣呑」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「剣呑」の意味は?

「剣呑」には、辞書によると、次のような意味があります。

危険だと思うさま。また、どうなることかと不安であるさま。危険。

出典:日本国語大辞典 第二版(小学館)「けん‐のん」

「剣呑」は「けんのん」と読み、「危険だと思うさま。危険そのもの。」という意味を持っています。剣を呑みこむなんて、いかにも危険な感じがしますよね。

また、「剣呑」とよく似た言葉に「剣突」という言葉があります。読み方は「けんつく」です。意味は「荒々しくしかりつけること。」という意味で、「剣呑」とは全く異なります。「剣突をくらう」という慣用的表現は、「とげとげしい言葉で拒絶される」という意味を表すものです。「剣呑」と「剣突」は区別して覚えましょう。

「剣呑」の語源は?

次に「剣呑」の語源を確認しておきましょう。「剣呑」の語源は「険難(けんなん)」の変化した語だそうです。「剣難」とは、刀による災難を指しています。それがその危険を察知する意味へと変化していきました。「剣呑」は実は当て字なのです。

日本の昔の文学作品において、「剣呑」という言葉が使われている例はほぼ見受けられません。ただ、「剣難」という買った頤で登場することは江戸時代ごろから確認できます。

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