この記事では「植物の体のつくりと働き」を見ていこう。

「植物の体のつくりと働き」は、小学校や中学校の理科でも学習する内容ですが、物理や化学の分野よりも覚えることが多く、苦手とする生徒も多い。話を忘れている人も多いんじゃないでしょうか?身近な植物を観察しながら、そのからだの全体像を大まかに把握できるようになろう。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらうぞ。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

植物の体のつくりと働き

植物のからだは大きく「根」「茎」「葉」の3つの器官に分けられます。これらの器官がそれぞれに果たす役割(機能)は、基本的にはあらゆる植物に共通です。

ところが、体のつくりの細かなところには、植物の種類によって差がみられます。中でも、「双子葉類(そうしようるい)」と「単子葉類(たんしようるい)」とよばれる2つのグループの間では、その構造に大きな違いが存在するのです。

双子葉類と単子葉類

双子葉類は、種から芽生えた芽につく子葉が2枚の植物です。キクやバラなどが代表的ななかまでしょう。教科書などではよくホウセンカが例として掲載されるほか、実験教材としても利用されますね。

一方、単子葉類は子葉が1枚の植物です。ユリやイネ、トウモロコシなどの植物がこちらに当てはまります。

今回は植物のからだを「根」「茎」「葉」に「」を加えた4つに分け、それぞれのしくみや働きを見ていきたいとおもいます。

根のつくりと働き

(root)は、基本的に地中に存在している植物の器官です。植物のからだを支え、固定するとともに、土壌中の水や無機塩類などの養分を吸収するはたらきがあります。

\次のページで「茎のつくりと働き」を解説!/

image by Study-Z編集部

双子葉類の根は、太い主根(しゅこん)と、主根から枝分かれした細い側根(そっこん)からなります。主根と側根の太さはかなり違うので、観察すればすぐにわかるでしょう。

単子葉類では、ひげ根とよばれる細い根が、茎の根元からたくさん生えるタイプになります。ひげ根になるような根は、太さにあまり違いがありません。

細かいところにも注目しましょう。根の先をよく観察すると、産毛のような非常に細い毛がたくさん生えているのが確認できます。これは根毛(こんもう)とよばれる構造物です。根毛を生やして表面積を増やすことで、水や養分を吸収しやすくする機能があります。

根の表面から吸収された水や栄養は、植物の地上部まで届けなくてはいけません。根の内部には、道管(どうかん)や師管(しかん)とよばれる管が通っています。こらは茎や葉にまでつながっている細長い管で、水や栄養の通り道となるのです。

茎のつくりと働き

(stem)は、植物のからだを支えるだけでなく、根から吸収した水や栄養、葉でつくり出した養分などが輸送される通り道にもなっている器官です。

「からだを支える」というのは、何気ないことのようですが、植物にとっては大変重要な意味を持ちます。植物は光合成によって養分(デンプンなど)をつくり出すため、「いかに効率よく日光に当たれるか」が大切なのです。

からだが茎によってしっかりと支えられなければ、植物は倒れ、他の植物の日陰になってしまいますからね。

image by iStockphoto

さて、茎は双子葉類でも単子葉類でも、一見すると同じようなつくりに見えます。しかし、茎の断面図を見てみると、やはりここにも大きな違いがあるのです。水や養分の通り道である道管と師管の配置に差があります

ここで、道管と師管の違いについて確認しておきましょう。

道管は、水や、水にとけた栄養分が通る管です。師管はというと、葉で光合成によりつくられたデンプンなどの栄養分が通る管となっています。

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道管の周囲には、それを支える細胞などが存在します。そのような細胞や、いくつかの道管はまとまって存在しているのですが、この部分を木部(もくぶ)とよんでいるのです。

師管も、複数本が集まり、そのまわりには師管を支える細胞などが存在します。それらをまとめて師部(しぶ)とよびましょう。

このような、木部と師部をまとめて維管束(いかんそく)といいます。

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双子葉類では、茎の維管束が円を描くように規則正しく並んでいるのに対し、単子葉類では、ばらばらと散らばるように存在しているという違いがあります。

これに加え、細胞分裂を盛んに行う細胞の集まっているところである、形成層(けいせいそう)の存在にも着目してください。双子葉類では、茎の維管束の木部と師部のちょうど真ん中あたりに形成層が存在しますが、単子葉類では形成層がありません。

葉のつくりと働き

植物にとって(leaf)は、光合成をおこなうための器官です。光合成によってデンプンなどの有機物をつくり出し、エネルギー源とするのが、植物のもつ大きな特徴ですね。

葉には茎から続く道管や師管が通り、水や養分のやりとりを可能にしています。それらの維管束が葉の表面に見える姿が葉脈(ようみゃく)です。葉脈の形は植物を分類するときの大きなヒントとなります。

双子葉類では、葉脈は網目のように広がる網状脈(もうじょうみゃく)。単子葉類では、葉脈が平行にはしる平行脈(へうこうみゃく)がみられます。

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葉には表裏があります。光合成をする細胞小器官である葉緑体がたくさんあるのは、日光に当たりやすい葉の表側の細胞です。

葉の裏側には、気孔という孔がたくさん見られます。これは気体の交換をするための特別な孔で、孔辺細胞という細胞によって形作られているんです。

花のつくりと働き

(flower)には種子をつくるという重要な役目があります。種子からは次世代が生育しますので、花は生殖のための器官だと言い換えることができますね。

花には花弁(いわゆる花びら)、おしべ、めしべなどが存在しますが、その数や色、大きさは植物によってさまざまです。

\次のページで「植物の全体像を説明できるようにしよう」を解説!/

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中学校の理科では、花弁の形に基づいた分類を学習します。一枚の花弁からなる合弁花類(ごうべんかるい)と、一枚一枚の花弁がはなれている離弁花類(りべんかるい)の分類が理解できているか、確認しておきましょう。

高校生物学では、めしべの柱頭に花粉が付く受粉から、種子ができるまでの過程を覚えます。

植物の全体像を説明できるようにしよう

「根、茎、葉、花。それぞれはどんな構造になっている?なんのために存在する?」と聞かれたら、皆さんはどのように説明するでしょうか。

多くの人は小学校の段階で、植物の名前や基本的なつくりを学習します。そのため、この問いに答えるのは簡単なことのようにも思えるのですが…いざ人に正確に説明しようとすると、意外と悩んでしまったりする人が多いのです。

今回の記事では植物のからだについて総復習を行いました。読者の皆さんにとっては「意外と忘れていること」や、「実は初めて知ったこと」もあったでしょう。それぞれの項目をしっかりと復習し、植物のからだの基本をいつでも思い出せるようにしておきたいですね。

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体の仕組み・器官理科生物

「植物の体のつくりと働き」を総確認!植物にはどんな器官・どんな種類があるの?現役講師がわかりやすく解説します

この記事では「植物の体のつくりと働き」を見ていこう。

「植物の体のつくりと働き」は、小学校や中学校の理科でも学習する内容ですが、物理や化学の分野よりも覚えることが多く、苦手とする生徒も多い。話を忘れている人も多いんじゃないでしょうか?身近な植物を観察しながら、そのからだの全体像を大まかに把握できるようになろう。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらうぞ。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

植物の体のつくりと働き

植物のからだは大きく「根」「茎」「葉」の3つの器官に分けられます。これらの器官がそれぞれに果たす役割(機能)は、基本的にはあらゆる植物に共通です。

ところが、体のつくりの細かなところには、植物の種類によって差がみられます。中でも、「双子葉類(そうしようるい)」と「単子葉類(たんしようるい)」とよばれる2つのグループの間では、その構造に大きな違いが存在するのです。

双子葉類と単子葉類

双子葉類は、種から芽生えた芽につく子葉が2枚の植物です。キクやバラなどが代表的ななかまでしょう。教科書などではよくホウセンカが例として掲載されるほか、実験教材としても利用されますね。

一方、単子葉類は子葉が1枚の植物です。ユリやイネ、トウモロコシなどの植物がこちらに当てはまります。

今回は植物のからだを「根」「茎」「葉」に「」を加えた4つに分け、それぞれのしくみや働きを見ていきたいとおもいます。

根のつくりと働き

(root)は、基本的に地中に存在している植物の器官です。植物のからだを支え、固定するとともに、土壌中の水や無機塩類などの養分を吸収するはたらきがあります。

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