国語言葉の意味

「空蝉」の意味や使い方は?例文や類語を文学院生が解説!

よお、ドラゴン桜の桜木建二だ。この記事では「空蝉」について解説する。

端的に言えば空蝉の意味は「この世。はかないもの。」だが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、日本文学を専攻し研究している翠を呼んだ。一緒に「空蝉」の意味や例文、類語などを見ていくぞ。

解説/桜木建二

「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

ライター/翠

中古の日本文学を研究している。様々な時代やジャンルの作品を読み、ことばに触れている。中学校と高校の国語科の教員免許も取得しておりことばについて分かりやすく説明する。

「空蝉」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「空蝉」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「空蝉」の意味は?

「空蝉」には、次のような意味があります。やや長いですが、内容を以下に引用しますね。

【一】〔名〕

〔一〕

1.この世に生きている人。うつしおみ。うつそみ。

2.現世。この世。人の世。うつそみ。

〔二〕(〔一〕を、「空蝉」「虚蝉」などと表記したところから「うつ‐せみ」と意識されて)

1.蝉のぬけがら。《季・夏》

2.蝉。

3.(その音が蝉の声に似るところから)楽器の一種「けい(磬)」の異称。

4.魂が抜け去ったさま。気ぬけ。虚脱状態。

5.蛻(もぬけ)の殻の形容。からっぽ。

6.遊里の語。客に揚げられた遊女が手洗いに立ったふりをして、他のなじみ客の所に行って逢うこと。また、それによる空床。

7.安永(一七七二~八一)頃の遊女の髷の名。形は島田髷に似る。蝉のぬけがらを連想させるところからの名か。

【二】(空蝉)

〔一〕「源氏物語」第三帖の名。光源氏一七歳の夏。帚木の後半を受ける。源氏が三たび空蝉に近づいたが、空蝉は小袿(こうちき)をぬぎすべらしてのがれることを中心に描く。

〔二〕「源氏物語」に登場する女性の一人。故衛門督の娘で、伊予介の後妻。一度は源氏に身を許したが、不釣合の身を考え、以後源氏を避け続ける。源氏の贈った「空蝉の身をかへてける木の下になほ人がらのなつかしきかな」によってこの名で呼ばれる。

〔三〕謡曲。三番目物。廃曲。作者不詳。「源氏物語」による。旅僧が都の三条京極中川を訪れると、空蝉の亡霊が現われて光源氏との恋物語をし、僧の回向をうけて成仏する。

出典:日本国語大辞典 第二版(小学館)「うつせみ」

今回紹介している「空蝉」は「うつせみ」と読みますが、「空蝉」はもともと「蝉」や「はかないもの」という意味はありませんでした。ただ万葉仮名で記す際に「空蝉」や「虚蝉」となっただけなのです。もともとの「空蝉」は「現世」という意味ですが、そこから派生して「蝉の抜け殻」「虚脱状態」という意味が付与されるようになりました。

平安時代に成立した『源氏物語』に空蝉という女性が登場します。彼女が光源氏の夜這いから逃れるべく、着物を脱ぎ(現在の感覚で言えば、眠る時に使っていた着る毛布から脱出する感じです)部屋から脱出したことから、「空蝉」は辞書にあるように遊里でも使われるようになりました。今では、「空蝉」という言葉を聞くと、『源氏物語』やそこに登場した女性空蝉、さらには『源氏物語』をもとに作られた能楽の演目を思い浮かべる人は少なくないと思います。

『源氏物語』という物語の中の架空の人物が、「空蝉」の意味を広げるきっかけになったのです。

「空蝉」の語源は?

次に「空蝉」の語源を確認しておきましょう。「空蝉」の歴史は古く、『万葉集』が書かれた奈良時代から使われていました。江戸時代などにも用例を観ることができます。

従来「空蝉」は、「うつしおみ」から「うつそみ」に、そして「うつせみ」になったという語形変化が考えられてきました。ただ、「うつしおみ」を「現実(=うつし)の臣下(=おみ)」と解釈すると、このつながりは説明できません。

また、「万葉集」では、「この世」「この世の人」という意味に用いられ、むなしいものやはかないものというニュアンスはありませんでした。しかし、「空蝉」「虚蝉」などの表記から、はかないもののたとえになっていったと見られています。

つまり、「空蝉」の語源は、諸説ありますが、一説には「うつしおみ(現実の臣下)」という言葉が発祥で、表記を「空蝉」としたものからはかないもの、というイメージがつけられるようになったというわけですね。

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