この記事では「一見」について解説する。

端的に言えば、一見の意味は「ちらっと見る」ことです。「一見」は「いっけん」と読む場合と「いちげん」と読む場合があり、意味も少し違いがある。

日本放送作家協会会員でWebライターのユーリを呼んです。一緒に「一見」の意味や例文、類義語などを見ていきます。

ライター/ユーリ

日本放送作家協会会員。シナリオ、エッセイをたしなむWebライター。時代によって変化する言葉の面白さ、奥深さをやさしく解説する。

「一見」の意味・例文

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「一見」は「いっけん」「いちげん」の二つの読み方があります。それぞれについて意味を確認し、例文で使い方を見てみましょう。

「一見(いっけん)」の意味

さっそく辞書で「一見(いっけん)」の意味をチェックしましょう。

1.一度見ること。ひととおり目を通すこと。
2.ちらっと見ること。
3 .(副詞的に用いて)ちょっと見たところ。
4.一度会うこと。初対面。いちげん。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「一見(いっけん)」

漢数字の「一」には、「ほんのわずか。ちょっと」「物事の最初。一番目」などの意味があります。「一見」は、「ほんのわずか+見る」なので「ちらっと見ること」「一度見ること」「ひととおり目を通すこと」という意味です。ちなみに「百聞は一見に如かず(ひゃくぶんはいっけんにしかず)」は、人から何回も聞くよりも、実際に自分の目で一度見るほうが確かだという意味ですよ。

「一見(いっけん)」の例文

「一見(いっけん)」を使った例文を見ていきましょう。

1.今度のピカソの展覧会は、質的にも量的にも一見の価値がある。
2.彼は一見穏やかな感じだが、実は非常に短気だ。

最初の例文は、「一見」を「一度みること」「ひととおり目を通すこと」という意味で使っています。とても充実した展覧会だから、一度は見ておくことをおすすめするという内容ですね。2番目の例文は「一見」を「ちょっと見たところ」という意味で使っています。人は見かけによらないということもよくありますよね。

「一見(いちげん)」の意味

おなじ「一見」でも「いちげん」と読む場合があります。「いちげん」を辞書でチェックしてみましょう。

1.初めて会うこと。特に、旅館や料理屋などの客がなじみでなく、初めてであること。また、その人。
2.遊里で、遊女に初めて会うこと。初会。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「一見(いちげん)」

\次のページで「「一見(いちげん)」の例文」を解説!/

1番目の「初めて会うこと」は、「いっけん」のほうにも載っていましたね。「いちげん」と読む場合は、特に「旅館や料理屋などに初めて来た客のこと」を指す場合が多いようです。「一見さんお断り」は、まったく初めてのお客は入店することができないという意味ですよ。そのような店は、常連客の紹介がないと入ることができません。

2番目の意味は、「遊里で遊女と初めて会うこと」です。上方のほうの遊里で、遊女と客がはじめて会うことを「一見」といったのが「いちげん」の由来とされています。

「一見(いちげん)」の例文

「一見(いちげん)」を使った例文を見ていきましょう。

1.あの高級旅館に一度は泊まってみたいものだが、一見さんお断りというのは本当だろうか。
2.昨日の客は、一見の田舎の侍だった。

最初の例文は、「いちげん」を「旅館や料理屋などに初めて来た客」という意味で使っていますね。京都の花街(かがい)には、一見さんお断りのお茶屋さんがあります。お茶屋さんを利用した場合、請求書が届くのは数カ月後。当日に支払うわけではないので、これまでの信頼関係がある人や、常連客の紹介で身元が確かなお客でないと入店できないのです。2番目は「遊里で遊女と初めて会うこと」を使った例文ですね。

「一見」の類義語

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次に「一見」の類義語について見ていきましょう。「いっけん」と「いちげん」、両方の類義語がありますよ。

「一瞥」「瞥見」:ちらっと見る

「一瞥」「いちべつ」と読みます。「一瞥」は「ちょっとだけ見る」こと。「一瞥しただけですぐにわかった」というように使います。「瞥見」「べっけん」と読みますよ。あまり見慣れない言葉ですね。意味は「ちらっと見る」「短時間でざっと見る」ことです。

「一目」:ちょっと見ること

「一目」「いちもく」「ひとめ」の二つの読み方があります。「いちもく」「ちょっと見ること」という意味です。「一目しただけで状況を把握した」という使い方をします。ほかに「ひとめで見渡すこと」などの意味もありますよ。「ひとめ」「一度だけ見る」「ちょっとだけ見る」という意味があります。「一目(ひとめ)ぼれ」は一度見ただけで好きになってしまうという意味です。

「初見(しょけん)」:初めて見ること

「初見」「初めて見ること」「初対面」の意味がありますので、「一見(いちげん)」の類義語ですね。人と初めて会うという意味のほかに、「楽譜を初めて見て、すぐにその通りに歌ったり演奏したりする」という意味もありますよ。

「一見」の反対語

次は「一見」の反対語です。反対語についても「いっけん」と「いちげん」の両方を見ていきましょう。

「凝視」「熟視」:じっと見つめること

「凝視」「ぎょうし」と読みます。意味は「目を凝らしてじっと見つめる」こと。「一見(いっけん)」の反対語ですね。「熟視(じゅくし)」「じっと見つめる」という意味です。

「常連(じょうれん)」:いつも来る客

「常連」「その飲食店などに、いつも来ている客」のことです。「常客」ともいいます。「いちげん」の反対語ですね。常連客が紹介した「いちげん」の客が代金を支払わなかった場合、常連客は代金を肩代わりしなくてはいけないそうですよ。

「馴染み客」:いつも来て慣れ親しんでいる客

「馴染み客」「いつも来て慣れ親しんでいる客」という意味です。これも「いちげん」の反対語ですね。遊里で「一人の遊女のところに何度も通って親密な間柄になった客」という意味もあります。

「一見」の英訳

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「一見」は英語ではどのように表現するのでしょうか。

\次のページで「「at first glance」:ひとめ見て」を解説!/

「at first glance」:ひとめ見て

「at first glance」は「一見して」「ひとめ見て」という意味です。

I recognized her at first glance.
私は一目見て彼女だとわかった。

「glance」には「ちらっと見る」「ざっと目を通す」があり、at first glance「一見して」「ひとめ見て」という意味になります。

「at first sight」:ひとめ見て

「at first sight」も「一見して」「ひとめ見て」という意味です。

It was love at first sight.
一目ぼれです。

「sight」には「景色」「ながめ」や「視力」の意味もありますが、ここでは「ひとめ」「見ること」という意味で使っています。love at first sight「一目ぼれ」という意味です。洋の東西を問わず、ひとめで恋に落ちることはあるようですね。

「いっけん」と「いちげん」を使い分けよう!

この記事では、「一見」の意味や例文、類義語などを解説しました。

 「一見」は「いっけん」「いちげん」の二つの読み方があります。「いっけん」「ちらっと見る」「一度見る」「ひととおり目を通す」という意味で、「いちげん」「旅館や料理屋などに初めて来た客」「遊里で遊女を初めて会うこと」という意味です。「いっけん」と「いちげん」の意味とニュアンスを理解して、正しく使い分けてくださいね。

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国語言葉の意味

「一見」の意味は?「いっけん」と「いちげん」の違い・例文・類義語などを日本放送作家協会会員がわかりやすく解説

この記事では「一見」について解説する。

端的に言えば、一見の意味は「ちらっと見る」ことです。「一見」は「いっけん」と読む場合と「いちげん」と読む場合があり、意味も少し違いがある。

日本放送作家協会会員でWebライターのユーリを呼んです。一緒に「一見」の意味や例文、類義語などを見ていきます。

ライター/ユーリ

日本放送作家協会会員。シナリオ、エッセイをたしなむWebライター。時代によって変化する言葉の面白さ、奥深さをやさしく解説する。

「一見」の意味・例文

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「一見」は「いっけん」「いちげん」の二つの読み方があります。それぞれについて意味を確認し、例文で使い方を見てみましょう。

「一見(いっけん)」の意味

さっそく辞書で「一見(いっけん)」の意味をチェックしましょう。

1.一度見ること。ひととおり目を通すこと。
2.ちらっと見ること。
3 .(副詞的に用いて)ちょっと見たところ。
4.一度会うこと。初対面。いちげん。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「一見(いっけん)」

漢数字の「一」には、「ほんのわずか。ちょっと」「物事の最初。一番目」などの意味があります。「一見」は、「ほんのわずか+見る」なので「ちらっと見ること」「一度見ること」「ひととおり目を通すこと」という意味です。ちなみに「百聞は一見に如かず(ひゃくぶんはいっけんにしかず)」は、人から何回も聞くよりも、実際に自分の目で一度見るほうが確かだという意味ですよ。

「一見(いっけん)」の例文

「一見(いっけん)」を使った例文を見ていきましょう。

1.今度のピカソの展覧会は、質的にも量的にも一見の価値がある。
2.彼は一見穏やかな感じだが、実は非常に短気だ。

最初の例文は、「一見」を「一度みること」「ひととおり目を通すこと」という意味で使っています。とても充実した展覧会だから、一度は見ておくことをおすすめするという内容ですね。2番目の例文は「一見」を「ちょっと見たところ」という意味で使っています。人は見かけによらないということもよくありますよね。

「一見(いちげん)」の意味

おなじ「一見」でも「いちげん」と読む場合があります。「いちげん」を辞書でチェックしてみましょう。

1.初めて会うこと。特に、旅館や料理屋などの客がなじみでなく、初めてであること。また、その人。
2.遊里で、遊女に初めて会うこと。初会。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「一見(いちげん)」

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