今回は「性染色体」をテーマに勉強していこう。生物の性別はどのようにして決まっているかしっているか?ヒトを含め、有性生殖をおこなう生物は両親からどのような染色体を受け継いだかによって性別が決まるんです。この雌雄の性を決定する遺伝子を含んだ染色体を性染色体という。
生物に詳しい現役理系大学院生ライターCaoriと一緒に解説していきます。

ライター/Caori

国立大学の博士課程に在籍している現役の理系大学院生。とっても身近な現象である生命現象をわかりやすく解説する「楽しくわかりやすい生物の授業」が目標。

1.染色体と性染色体

image by iStockphoto

今回のテーマである「性染色体」を解説する前に、まずは最も基本となる「染色体」について解説しておきますね。染色体はDNAが太く折り畳まれたもので、遺伝情報の発現・伝達という重要な役割を持っている生体物質です。ヒトの場合は、父親・母親からそれぞれ受け継いだ46本の染色体が23対のペアになって細胞の核の中に収納されています。

ヒトの染色体の46本のうち44本は「常染色体」といい、互いに同形同大の染色体同士がペアになっている「相同染色体」です。常染色体は44本、22対で染色体のサイズが大きい順に1~22の番号がついています。そして残りの2本、1対が「性染色体」です。性染色体には番号ではなく、XまたはYというアルファベットがついています。この性染色体のXとYの組み合わせで性別が決定する仕組みです。ヒトの場合、性染色体がXXのペアになると女性に。性染色体がXYのペアになると男性になります。

性染色体と性別決定

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ヒトの体を作っている体細胞は染色体が46本23対で存在する2倍体ですが、卵子と精子などの生殖にかかわる細胞(配偶子)は減数分裂により染色体の数を半分に減らしています。配偶子に含まれる染色体は体細胞の染色体の半分、23本です(1倍体)。染色体を23本もった配偶子が2つ集まる(受精)することで、受精卵は体細胞と同じ量の染色体を得ることになります。

女性の性染色体はXXのため、卵子の染色体はすべてXです。男性の性染色体はXYのため、精子は「Xの染色体をもつ精子」と「Yの染色体をもつ精子」の2種類が存在します。「X染色体をもつ精子」と受精すると性染色体がXXのペアになるので女性に。「Y染色体をもつ精子」と受精し、性染色体がXYのペアになると男性になります。男女の性別は受精の段階ですでに決まっているのです。

2.Y染色体をもつと男性になる理由

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Y染色体は常染色体やX染色体と比べると比較的遺伝子が乏しく、約20のタンパク質をコードする78の遺伝子しかありません。ではなぜそんな遺伝情報の少ないY染色体をもつだけで男性になるのでしょうか。その理由は、Y染色体の上にSRY(Sex-determining region Y)遺伝子、日本語ではY染色体性決定領域遺伝子が存在するためです。

胎児の生殖系は妊娠6週目までは両性に分化可能な性腺として発生し、7週目以降にSRYの発現が性決定のスイッチとなり、SRY遺伝子が発現すると精巣へと分化、SRY遺伝子が発現しなければ卵巣へ分化する、という形で発生します。SRY遺伝子により性腺が精巣へと分化すると、精巣のライディッヒ細胞がステロイドホルモンのアンドロゲン(別名、男性ホルモン)を分泌し、男性器の形成と発達を促しオスへと性分化するのです。

3.性染色体と伴性遺伝

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伴性遺伝とは性染色体に依存する遺伝形式です。伴性遺伝の中で、片側の性のみに遺伝する場合、例えば前述したSRY遺伝子などY染色体に特有の遺伝子によっておこる遺伝を「限性遺伝」と呼びます。

伴性遺伝の例としては、ショウジョウバエの白眼三毛猫(白・茶色・黒の3色の猫)が有名です。三毛猫を例に解説すると、三毛猫は原則としてメスしか生まれず、オスは滅多に出現しません(オスの三毛猫の確率は三万分の一)。これは、猫の茶色(オレンジ)に関するO遺伝子がX染色体に依存する伴性遺伝のためです。三毛猫の茶色い毛色はO遺伝子が対立するo遺伝子とのヘテロ接合になった場合のみ発現するのため、性染色体がXXの雌だけが三毛猫の毛色になることができます。

\次のページで「性染色体と遺伝子異常の特徴」を解説!/

性染色体と遺伝子異常の特徴

性染色体と遺伝子異常の特徴

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最後に性染色体(伴性遺伝子)の異常により起こる遺伝病について解説します。遺伝子には顕性(優性)と潜性(劣性)があり、遺伝子の2つの型のうち特徴が現れやすい遺伝子を顕性、現れにくい遺伝子が潜性です。遺伝子異常の型が顕性の場合、染色体にその遺伝子を持っているだけで表現型に現れますが、潜性の場合は2つの染色体の両方に現れないかぎり表現型としては現れません。

常染色体や女性の性染色体はXXのため、潜性の遺伝子異常はもう片方の染色体がカバーしてくれます。しかし、男性の性染色体に異常が生じた場合、男性はXYひとつずつしか持たないため、潜性の遺伝病も表現型として現れ、男性だけに発症、または女性より男性が重篤となる疾患が存在することが特徴です。ヒトでは先天性色覚異常や血友病などがあります。

性別を決める「性染色体」

今回は性染色体をテーマに解説をしました。性染色体はその名の通り、生まれてくる子の性を決定する遺伝子を持っている染色体です。性染色体がXXであれば女性、XYであれば男性となりますが、それ以外にも血液凝固や色覚に関する遺伝子、猫の場合は毛色を決める遺伝子など、さまざま遺伝子を持っています。また、染色体に関係なく性別が決定したり、性転換をおこなう生物も存在しており、生物の性決定はとても奥深い分野です。受験などでも頻出のジャンルですのでチェックしてみてくださいね。

今回解説した性染色体による「性」はあくまで生物学的な分類であるため、性染色体の組み合わせは必ずしもその人の「心の性」を決めるとは限りません。

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理科生物細胞・生殖・遺伝

3分で簡単「性染色体」染色体は男女でどう違う?性別が決まる仕組みを現役大学院生がわかりやすく解説!

今回は「性染色体」をテーマに勉強していこう。生物の性別はどのようにして決まっているかしっているか?ヒトを含め、有性生殖をおこなう生物は両親からどのような染色体を受け継いだかによって性別が決まるんです。この雌雄の性を決定する遺伝子を含んだ染色体を性染色体という。
生物に詳しい現役理系大学院生ライターCaoriと一緒に解説していきます。

ライター/Caori

国立大学の博士課程に在籍している現役の理系大学院生。とっても身近な現象である生命現象をわかりやすく解説する「楽しくわかりやすい生物の授業」が目標。

1.染色体と性染色体

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今回のテーマである「性染色体」を解説する前に、まずは最も基本となる「染色体」について解説しておきますね。染色体はDNAが太く折り畳まれたもので、遺伝情報の発現・伝達という重要な役割を持っている生体物質です。ヒトの場合は、父親・母親からそれぞれ受け継いだ46本の染色体が23対のペアになって細胞の核の中に収納されています。

ヒトの染色体の46本のうち44本は「常染色体」といい、互いに同形同大の染色体同士がペアになっている「相同染色体」です。常染色体は44本、22対で染色体のサイズが大きい順に1~22の番号がついています。そして残りの2本、1対が「性染色体」です。性染色体には番号ではなく、XまたはYというアルファベットがついています。この性染色体のXとYの組み合わせで性別が決定する仕組みです。ヒトの場合、性染色体がXXのペアになると女性に。性染色体がXYのペアになると男性になります。

性染色体と性別決定

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ヒトの体を作っている体細胞は染色体が46本23対で存在する2倍体ですが、卵子と精子などの生殖にかかわる細胞(配偶子)は減数分裂により染色体の数を半分に減らしています。配偶子に含まれる染色体は体細胞の染色体の半分、23本です(1倍体)。染色体を23本もった配偶子が2つ集まる(受精)することで、受精卵は体細胞と同じ量の染色体を得ることになります。

女性の性染色体はXXのため、卵子の染色体はすべてXです。男性の性染色体はXYのため、精子は「Xの染色体をもつ精子」と「Yの染色体をもつ精子」の2種類が存在します。「X染色体をもつ精子」と受精すると性染色体がXXのペアになるので女性に。「Y染色体をもつ精子」と受精し、性染色体がXYのペアになると男性になります。男女の性別は受精の段階ですでに決まっているのです。

2.Y染色体をもつと男性になる理由

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Y染色体は常染色体やX染色体と比べると比較的遺伝子が乏しく、約20のタンパク質をコードする78の遺伝子しかありません。ではなぜそんな遺伝情報の少ないY染色体をもつだけで男性になるのでしょうか。その理由は、Y染色体の上にSRY(Sex-determining region Y)遺伝子、日本語ではY染色体性決定領域遺伝子が存在するためです。

胎児の生殖系は妊娠6週目までは両性に分化可能な性腺として発生し、7週目以降にSRYの発現が性決定のスイッチとなり、SRY遺伝子が発現すると精巣へと分化、SRY遺伝子が発現しなければ卵巣へ分化する、という形で発生します。SRY遺伝子により性腺が精巣へと分化すると、精巣のライディッヒ細胞がステロイドホルモンのアンドロゲン(別名、男性ホルモン)を分泌し、男性器の形成と発達を促しオスへと性分化するのです。

3.性染色体と伴性遺伝

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伴性遺伝とは性染色体に依存する遺伝形式です。伴性遺伝の中で、片側の性のみに遺伝する場合、例えば前述したSRY遺伝子などY染色体に特有の遺伝子によっておこる遺伝を「限性遺伝」と呼びます。

伴性遺伝の例としては、ショウジョウバエの白眼三毛猫(白・茶色・黒の3色の猫)が有名です。三毛猫を例に解説すると、三毛猫は原則としてメスしか生まれず、オスは滅多に出現しません(オスの三毛猫の確率は三万分の一)。これは、猫の茶色(オレンジ)に関するO遺伝子がX染色体に依存する伴性遺伝のためです。三毛猫の茶色い毛色はO遺伝子が対立するo遺伝子とのヘテロ接合になった場合のみ発現するのため、性染色体がXXの雌だけが三毛猫の毛色になることができます。

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