この記事では「御免蒙る」について解説する。

端的に言えば御免蒙るの意味は「断る」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国立大で国語学を学んだライターのタケルを呼んです。言葉の解説を得意としていて、大学時代はクイズサークルに所属していたので雑学にも詳しい。一緒に「御免蒙る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タケル

某国立大で日本語学を専攻していた。基本的にはどんな仕事でも可能な限り依頼に応えるライター。しかし、ファッションやコスメなどの記事は範囲外なので御免蒙らせていただきたい。

「御免蒙る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「御免蒙る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「御免蒙る」の意味は?

「御免蒙る」には、次のような意味があります。

《「御免を蒙る」とも》

1.相手の許しを得る。「ちょっと―・って入らせてもらいます」
2.相手の許しを得て退出する。失礼する。「ひとまず―・って出直してこよう」
3.嫌だと断る。「面倒なことは―・る」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「御免(ごめん)蒙(こうむ)・る」

まず、「蒙る」が読めなかった人が多かったのではないでしょうか。「蒙る」で「こうむる」と読みます。「被る」とも書きますが、むしろそちらの方を見る機会が多いでしょう。どちらも意味は同じです。「受ける、かぶる」などの意味があります。

御免蒙る」(ごめんこうむる)の意味は、もともとは辞書の1にある「相手の許しをもらう」です。そこから2の「相手の許しを得て出て行く」という意味が派生されました。さらに、許す・許される立場を変えたものが3の意味です。許してもらう立場が、逆に「お断りする」立場に変わっています。

「御免蒙る」の語源は?

次に「御免蒙る」の語源を確認しておきましょう。

「御免蒙る」はもともと相撲が由来です。独特の書体が印象的な相撲の番付表があれば、ぜひ見てください。中央上部に大きく「蒙御免」(ごめんこうむる)と書いてあるはずです。

今でこそ大相撲は日本相撲協会が主催していますが、江戸時代初期には様々な所で相撲の興行がありました。しかし、当然ですが当時はまだビデオ判定がありません。すると、勝敗を巡って争いが絶えず、幕府の悩みの種となりました。そこで幕府は、寺社の寄付を募ることを名目とする勧進相撲に限り許可を出すことにしたのです。「御免」というのは幕府は許可のことであり、「御免蒙る」は「幕府からの許可をもらいました」ということになります。

\次のページで「「御免蒙る」の使い方・例文」を解説!/

「御免蒙る」の使い方・例文

「御免蒙る」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.お忙しい中恐縮ですが、御免蒙って橋本様のご自宅まで本日夕方にお邪魔いたします。
2.まだお話は尽きないようですが、この後の予定もありますので早めに御免蒙らせていただきます。
3.母の日にいろいろくれてうれしいけど、その年でお母さんにカーネーションだなんてあなたももう子どもじゃないんだから、気持ちだけで十分だし今年で最後にしてそろそろ御免蒙らせていただきたいね。

辞書の1の意味の「御免蒙る」が例文1に使われています。以下、2の意味が例文2、3の意味が例文3です。

1と2の意味が「御免蒙る」本来の意味のはずですが、今ではあまり聞くことのない会話ではないでしょうか。それよりも、例文3「お断りする」という意味で「御免蒙る」を聞くことになるでしょう。1と2のケースでしたら、「御免蒙る」よりは「失礼する」が使われています。「自宅まで失礼します」「今日はここで失礼します」といった使われ方です。「断わる」という言葉では強過ぎると感じるようなときに「御免蒙る」が使われる傾向にあります。

「御免蒙る」の類義語は?違いは?

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ところで、「御免蒙る」の類義語は何でしょうか。違いとともに見ていきましょう。

「勘弁してもらう」

「御免蒙る」の類義語に「勘弁してもらう」(かんべんしてもらう)があります。「ご勘弁を」や「ご勘弁ください」などと聞いたことはあるでしょう。

「勘弁」の「勘」は「考える」、「弁」は「わきまえる」です。合わせて「勘弁」は、「相手をとがめずに許すこと」という意味となりました。「勘弁してもらう」は「悪く思わないで許してもらう」という意味になります。

「御免蒙る」も「勘弁してもらう」も、同じ「許してもらう」という意味ですが、「許す」の意味合いが違うと言わざるをえません。「御免蒙る」の「許す」は「許可」ですが、「勘弁してもらう」の「許す」は「恩赦」と区別すべきでしょう。

\次のページで「「御免蒙る」の対義語は?」を解説!/

「御免蒙る」の対義語は?

反対に「御免蒙る」の対義語は何でしょうか。

「御法度」

「御免蒙る」が、もともとは幕府から許可を得たことを示す言葉であると前述しました。その逆で、幕府が禁止することを「御法度」(ごはっと)と言います。

「法度」とは、もとは中世以降の日本で制定された法律のことです。日本史で武家諸法度(ぶけしょはっと)や禁中並公家諸法度(きんちゅうならびにくげしょはっと)を習った記憶がある人もいるでしょう。その「法度」で禁止されていることを、丁寧語の接頭語である「御」を付けて「御法度」と呼ぶようになりました。現代の日本でも、禁止されていることを「御法度」と呼びます

「御免蒙る」の英訳は?

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では、「御免蒙る」の英訳は何と言うでしょうか。

「get permission」「be forgiven」

「御免蒙る」は現代的な言い回しではないので、英訳しやすいように「許しを得る」に言い換えましょう。すると「get permission」や「be forgiven」に英訳することができます。

「permission」は「許可、許し」です。動詞の「get」(その他gainやobtainなども可)と合わせて「許可をもらう」となります。一方の「forgiven」は名詞の「許可」ではありません。動詞「forgive」の過去分詞形です。be動詞と合わせて「許された」となります。

「御免蒙る」を使いこなそう

この記事では「御免蒙る」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「御免蒙る」とは、本来は許可してもらったことを表す言葉でした。それが今では立場を変えて、話し手の方から断わるときに使われることが多数を占めています。意味がひっくり返るなんて奇妙なことにも見えますが、言葉の意味は時代とともに変わるものです。言葉の意味を正しく理解した上で、その場面ごとにふさわしいと思われる言葉を使うようにしましょう。

これ以上は長くなりそうなので、ここらで「御免蒙ら」せていただきます。

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国語言葉の意味

【慣用句】「御免蒙る」の意味や使い方は?例文や類語を雑学大好きwebライターがわかりやすく解説!

この記事では「御免蒙る」について解説する。

端的に言えば御免蒙るの意味は「断る」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国立大で国語学を学んだライターのタケルを呼んです。言葉の解説を得意としていて、大学時代はクイズサークルに所属していたので雑学にも詳しい。一緒に「御免蒙る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タケル

某国立大で日本語学を専攻していた。基本的にはどんな仕事でも可能な限り依頼に応えるライター。しかし、ファッションやコスメなどの記事は範囲外なので御免蒙らせていただきたい。

「御免蒙る」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「御免蒙る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「御免蒙る」の意味は?

「御免蒙る」には、次のような意味があります。

《「御免を蒙る」とも》

1.相手の許しを得る。「ちょっと―・って入らせてもらいます」
2.相手の許しを得て退出する。失礼する。「ひとまず―・って出直してこよう」
3.嫌だと断る。「面倒なことは―・る」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「御免(ごめん)蒙(こうむ)・る」

まず、「蒙る」が読めなかった人が多かったのではないでしょうか。「蒙る」で「こうむる」と読みます。「被る」とも書きますが、むしろそちらの方を見る機会が多いでしょう。どちらも意味は同じです。「受ける、かぶる」などの意味があります。

御免蒙る」(ごめんこうむる)の意味は、もともとは辞書の1にある「相手の許しをもらう」です。そこから2の「相手の許しを得て出て行く」という意味が派生されました。さらに、許す・許される立場を変えたものが3の意味です。許してもらう立場が、逆に「お断りする」立場に変わっています。

「御免蒙る」の語源は?

次に「御免蒙る」の語源を確認しておきましょう。

「御免蒙る」はもともと相撲が由来です。独特の書体が印象的な相撲の番付表があれば、ぜひ見てください。中央上部に大きく「蒙御免」(ごめんこうむる)と書いてあるはずです。

今でこそ大相撲は日本相撲協会が主催していますが、江戸時代初期には様々な所で相撲の興行がありました。しかし、当然ですが当時はまだビデオ判定がありません。すると、勝敗を巡って争いが絶えず、幕府の悩みの種となりました。そこで幕府は、寺社の寄付を募ることを名目とする勧進相撲に限り許可を出すことにしたのです。「御免」というのは幕府は許可のことであり、「御免蒙る」は「幕府からの許可をもらいました」ということになります。

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