この記事では「しゃにむに」について解説する。

端的に言えば「しゃにむに」の意味は「一つのことに全力で集中すること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元教員のWebライター、神シゲを呼んです。一緒に「しゃにむに」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/神シゲ

元教員Webライター。現役のころは語学研究に没頭していた。日本語の微妙なニュアンスをわかりやすく伝えていく。

「しゃにむに」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「しゃにむに」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「しゃにむに」の意味は?

「しゃにむに」には、次のような意味があります。

[副]ほかの事を考えないで、ただひたすらに。がむしゃらに。「目標へ遮二無二突進する」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「遮二無二」

「しゃにむに」は漢字で「遮二無二」と表記します。「しゃにむに」が表すのは、他に目を向けずがむしゃらに取り組む様子です。「しゃにむに…する」のかたちで副詞としてかかります。

「しゃにむに」が四字熟語であることは知らなかった人も多いのではないでしょうか。実は私も昔、「しゃにむ」という言葉に助詞の「に」が組み合わされているものだとばかり思っていました。

「しゃにむに」の語源は?

「遮二無二」の語源は漢字に着目するとよくわかります。「遮二」で「ニを遮り」「無二」で「ニを無くす」こと。つまり、余計なこと(2番目の問題)は遮断して無いものとするという強い意志が表現されているのです。

また、元々は「差理無理(さりむり、しゃりむり)」という言葉が変化して「遮二無二」になったという説もあります。「差理無理」は「無理矢理、是が非でも」という意味です。「遮二無二」とも似てますね。

「差理無理」は17世紀に使われていました。その後18世紀に「遮二無二」が登場します。それが「差理無理」に由来するものなのか、その前後の関連は定かではありません。芥川竜之介は著作「河童」の中で「遮二無二」を使っています。

「しゃにむに」の使い方・例文

「しゃにむに」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1. 大学へ行きたかったら、今度こそ遮二無二努力することが大切だよ。

2. 彼女は僕に遮二無二惚れているみたいだから大丈夫だよ。

3. 不思議とディフェンスを捨てて、遮二無二攻めたのが功を成した。

\次のページで「「しゃにむに」の類義語は?違いは?」を解説!/

「遮二無二」は副詞として働いています。一つのことに夢中になる雰囲気が伝わるのではないでしょうか。周りが見えなくなるような、猪突猛進な恋心を表現するときにも「遮二無二」は使えます。逆にいえば、状況が切迫しておらず感情に余裕がある場合には「遮二無二」という言葉は使いません。

ここで気になることは「遮二無二…する」「遮二無二に…する」のどちらが正しいのかということです。

結果からいうと、例文のように「遮二無二…する」が正しいと言えるでしょう。前述の「河童」のように過去の文献では、助詞「に」は入っていません。

とはいえ「遮二無二に…する」が間違いだとも、あながち言い切れないでしょう。というのも、四字熟語を副詞的に用いるときに通常は助詞を入れるからです。例えば好き勝手にすることを「傍若無人に振る舞う」といいますが、この文章は助詞の「に」がなければおかしいですね。

「遮二無二」や「無理矢理」などの四字熟語は、読みにくいためか慣習として「遮二無二…する」のかたちで使われるのが一般的です。この紛らわしい語法のおかげで、この言葉を私同様「しゃにむ」だと思っていた人もいるのではないでしょうか?

「しゃにむに」の類義語は?違いは?

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「しゃにむに」の類義語として代表的なものには「我武者羅(がむしゃら)」「一心不乱(いっしんふらん)」「猪突猛進(ちょとつもうしん)」があります。それぞれの意味の違いを見ていきましょう。

その1.「我武者羅」

「我武者羅」一つのことに全力で集中する様子を表します。「我武者羅」には後先を考えないというニュアンスが強く血の気が高まっているイメージがあるといえるかもしれません。よって、スポーツなどでよく見受けられます。

そのチームは我武者羅にゴールを目指していた。

その2.「一心不乱」

「一心不乱」は読んで字の如く、「心を一つに集中させ、乱れることがないさま」です。先程の「我武者羅」は少々自分勝手な印象を与えるネガティブなイメージがあります。それに対して、「一心不乱」は自分の心の在り方を表しているため大変好意的な印象を周囲に与えるといえるでしょう。

そのサービスがうまくいかなかった理由や注意事項、解決策を彼女は一心不乱にノートに書き殴った。

その3.「猪突猛進」

「猪突猛進」もとてもわかりやすい言葉ですね。「一つのことに全力で取り組む」という意味では同じですが、猪が突進する様子がはっきりと目に浮かびませんか。自らの意思で考えてそうするというよりは、怒りなどにより他のことが考えられなくなっているときによく使われます。

\次のページで「「しゃにむに」の対義語は?」を解説!/

彼は注意力が足りなくて、猪突猛進に行動するところがある。

「一心不乱」や「猪突猛進」のような四字熟語はその意味を知らなくても、漢字からおおよその意味がわかる言葉です。意味がわかりやすい四字熟語ランキングを作ってみると面白いかもしれませんね。

「しゃにむに」の対義語は?

「しゃにむに」の対義語として挙げられる言葉には「熟慮断行(じゅくりょだんこう)」「三思九思(さんしきゅうし)」があります。それぞれのイメージを見ていきましょう。

その1.「熟慮断行」

「熟慮断行」は大変よく考え抜いた上で実行に移すことを表します。「慮」には思いをめぐらすという意味があり、じっくりと考えている様子がイメージできますね。会社の社長など、トップに立つ人には「熟慮断行」が求められます。

今回の経営統合は熟慮断行の結果だ。

その2.「三思九思」

「三思九思」の「三思」も「九思」もどちらも「よく考える」という意味があります。そこから生まれたのが「三思九思」という言葉です。「三思九思」には何度も繰り返しよく考えるという意味があります。かの有名な芭蕉も、一句一語を考えていつも三思九思していたようです。

「しゃにむに」の英訳は?

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「しゃにむに」の英訳は「recklessly」「desperately」が考えられます。それぞれのイメージを見ていきましょう。

\次のページで「その1. 「recklessly」」を解説!/

その1. 「recklessly」

「recklessly」は向こうみずで無謀なさまを表す副詞です。形容詞では「reckless」となります。語源はreck(気にかける)をless(…しない)で「気にかけない」となり、無謀なさまを表すようになりました。マイナスの意味で使われることが多いです。

1. He may act recklessly.
彼は無謀に行動することがある。

2. It can't be helped to keep running recklessly.
遮二無二走り続けても仕方ないでしょ。

その2. 「desperately」

「desperately」にはやけになって、必死になってという意味があります。語源は、ラテン語のdesperatus(諦める)です。諦めてやけになり、他のことを考えずに必死になるというときに使います。捨て身で攻めるというイメージがありますね。

The soldiers fought desperately.
兵士たちは必死に戦った。

「しゃにむに」を使いこなそう

この記事では「しゃにむに」について説明しました。10代の頃は何をするにも一所懸命取り組んでいたように思います。年齢を重ねるうちに、物事の結果が予測できるようになるものです。行動は合理的になり、いつしか遮二無二取り組むようなことは少なくなっていきます。

今「確かに…」と思ったあなた。趣味や仕事、はたまた恋愛でもいいです。久しぶりに遮二無二行動してみたら新しい自分に出会えるかもしれませんよ。

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国語言葉の意味

「しゃにむに」の意味や使い方は?例文や類語を元教員Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「しゃにむに」について解説する。

端的に言えば「しゃにむに」の意味は「一つのことに全力で集中すること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元教員のWebライター、神シゲを呼んです。一緒に「しゃにむに」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/神シゲ

元教員Webライター。現役のころは語学研究に没頭していた。日本語の微妙なニュアンスをわかりやすく伝えていく。

「しゃにむに」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「しゃにむに」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「しゃにむに」の意味は?

「しゃにむに」には、次のような意味があります。

[副]ほかの事を考えないで、ただひたすらに。がむしゃらに。「目標へ遮二無二突進する」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「遮二無二」

「しゃにむに」は漢字で「遮二無二」と表記します。「しゃにむに」が表すのは、他に目を向けずがむしゃらに取り組む様子です。「しゃにむに…する」のかたちで副詞としてかかります。

「しゃにむに」が四字熟語であることは知らなかった人も多いのではないでしょうか。実は私も昔、「しゃにむ」という言葉に助詞の「に」が組み合わされているものだとばかり思っていました。

「しゃにむに」の語源は?

「遮二無二」の語源は漢字に着目するとよくわかります。「遮二」で「ニを遮り」「無二」で「ニを無くす」こと。つまり、余計なこと(2番目の問題)は遮断して無いものとするという強い意志が表現されているのです。

また、元々は「差理無理(さりむり、しゃりむり)」という言葉が変化して「遮二無二」になったという説もあります。「差理無理」は「無理矢理、是が非でも」という意味です。「遮二無二」とも似てますね。

「差理無理」は17世紀に使われていました。その後18世紀に「遮二無二」が登場します。それが「差理無理」に由来するものなのか、その前後の関連は定かではありません。芥川竜之介は著作「河童」の中で「遮二無二」を使っています。

「しゃにむに」の使い方・例文

「しゃにむに」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1. 大学へ行きたかったら、今度こそ遮二無二努力することが大切だよ。

2. 彼女は僕に遮二無二惚れているみたいだから大丈夫だよ。

3. 不思議とディフェンスを捨てて、遮二無二攻めたのが功を成した。

\次のページで「「しゃにむに」の類義語は?違いは?」を解説!/

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