この記事では、「感傷に浸る」について解説する。
「感傷に浸る」って聞くと、悲しそうな顔して考え込んでいる姿が目に浮かぶ。ですが「感傷に浸る」ときって、実際に悲しいことがあった瞬間だけじゃないよな。感覚的には言葉の意味を理解しているつもりですが、いざ説明してみろって言われると困っちまうやつも多いでしょう。
今回は夕焼けなどの景色や、秋口の涼しさに感傷に浸りやすいライターである、ぷーやんを呼んです。「感傷に浸る」の意味と使われ方について、説明してもらう。

ライター/ぷーやん

webライター歴6年。鍛えられた語彙と文章力は本業でも発揮され、社内ルールの書き換え担当に。学生時代のクレペリン検査で「感受性が強い」と判定されたように、感傷に浸りやすい性格を持つ。

「感傷に浸る」の意味を精確につかもう

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意味を紹介する前に、「感傷に浸る」の読み方は「かんしょうにひたる」です。それでは、「感傷に浸る」について解説していきます。

辞書にみる「感傷に浸る」

「感傷」と「浸る」にわけてみていきましょう。まずは「感傷」から。

1 物事に感じて心をいためること。「そう思うと、なんだか―の情に堪えない」〈藤村・家〉
2 物事に感じやすく、すぐ悲しんだり同情したりする心の傾向。また、その気持ち。「―におぼれる」「―にひたる」
出典:デジタル大辞泉(小学館) 「感傷」

2の意味の使用例に、「―にひたる(浸る)」とありますね。これをもう少し噛み砕くと、「悲しみを感じやすいこころ」と言えそうです。次に「浸る」を辞書でみてみましょう。

[動ラ五(四)]
1 水などの中に入る。つかる。「温泉に―・る」「床下まで水に―・る」
2 ある状態や心境にはいりきる。「毎日酒に―・る」「喜びに―・る」
出典:デジタル大辞泉(小学館) 「浸る」

こちらは「心境にはいりきる」とある、2の意味が当てはまりそうですね。先に示した「感傷」の意味と合わせて、「感傷に浸る」は、「悲しみやすい心境にはいりきる」心理状態ということになります。要は、「あらゆる刺激を悲しむ方向に受け取りがち」な心理状態ということ。

\次のページで「「感傷に浸る」の使い方を例文で紹介!」を解説!/

「感傷に浸る」の使い方を例文で紹介!

「感傷に浸る」の意味を知ったところで、次に実際にはどのように使う言葉なのかを、例文でみていきましょう。

1.卒業式を終え、仕事に追われる毎日になるであろう新生活が始まるまでの間を、感傷に浸って過ごした。
2.5年ぶりに帰省してひとり散歩していたら、過去のことがまざまざと思い出された。成長とともに忘れられていた子どものころの記憶が蘇り、しばらく感傷に浸ることになった。
3.9月の夕暮れどき、残暑の中にも秋のにおいを感じて、ふと物悲しくなってきた。このまま感傷に浸るのも一興と、足を止めてその感覚に流されることにした。

例文1と2は、昔の思い出とともに「感傷に浸る」パターンです。例文3は、季節変化にこころが刺激されているパターンですね。これら以外にも、「感傷に浸る」きっかけとなる事柄はいくつか考えられます。それらについては、のちほどご紹介することにしましょう。

「感傷に浸る」の類似表現2選!

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桜木先生が仰るように、言葉を精確に使うためには、類語や対義語も知っておいたほうがいいものです。まず「感傷に浸る」の類似表現からみていきましょう。

センチメンタル:感じやすくなみだもろい

外来語としてすでに定着している言葉ですね。ラテン語の『感情』が語源であるこの言葉は、特に悲哀の感情に揺れやすいことを表しています。「感傷に浸る」にとても近いニュアンスです。

エモーショナル:感情に動かされやすい

英語で「感情的・情緒的」を意味する言葉。最近日本の若者言葉で「エモい」と言いますが、これの語源です。「感傷に浸る」は悲哀の感情に敏感であることを示すのに対し、「エモい」はどの感情に対しても反応することを意味します。

\次のページで「「感傷に浸る」に対義語はある?」を解説!/

「感傷に浸る」に対義語はある?

次に対義語ですが、「感傷に浸る」の明確な対義語はありません。そこで、「悲しみの感情に入り切りやすい」という意味に対し、逆の意味を表現する言葉を考えてみましょう。

無感動:心を動かされないこと

悲哀はもとより、喜びや驚きなども含めてあらゆる感情に対して、こころが反応しにくいことを表します。

ドライ:そっけない・合理的に割り切る

こちらも外来語として定着していますね。なにかに捉われることなく合理的に考えて、そつなく動く様子を表現します。

「感傷に浸る」は英語でなんと言えばいい?

桜木先生のご要望の通り、「感傷に浸る」を英語でなんと言うのかをみていきましょう。

be sentimental:涙もろい・感情に流される

先述した「センチメンタル」の英語表記「sentimental」を使った表現。「sentimental(感傷的)」+「be(である)」の組み合わせで、「涙もろい」「感情に流される」などとも訳されます。

sentimentalize:感傷的になる

「sentimentalize」は「sentimental」の動詞形で、和訳すると「感傷的になる」「感傷的に考える」です。ちなみに動詞はまさに主語の動作を表すのに対し、先に紹介したbe動詞を使う文章の場合は、主語の状態や性質を表したり、説明したりするイメージとなります。

\次のページで「「感傷に浸る」のはどんなとき?」を解説!/

「感傷に浸る」のはどんなとき?

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「感傷に浸る」経験は誰にでもあると思いますが、感情が悲しみに傾きやすくなるのには、なにか法則があるのでしょうか?

「感傷に浸りやすい」場面

次に挙げるようなとき、人は「感傷に浸る」ことがあるようです。

・自分の時間がほとんど取れないくらい忙しい毎日を送っているとき
・子育てで子どもの成長を感じたとき
・自身の生き方や過去のことを振り返ったとき
・現実がうまくいかずストレスがたまっているとき

過去か現在かを問わず、大変なことや不安なことが「感傷に浸る」トリガーだと言えそうですね。

「感傷に浸る」状態から抜け出すには?

ちょっとしたことが気になる・傷つきやすいなど、自分が「感傷に浸ってる」と感じたときは、どうしたらよいのか気になりますよね。

オンオフの切り替えが上手な人であれば、感傷に後ろ髪をひかれつつも、思い切って目の前のやるべきことに集中してしまうのも一手。あるいは好きなものを食べたり、こころゆくまで寝続けたり、ほかの欲求に溺れてしまうのもいいかもしれません。

ただし1つ忘れてはいけないのは、悲しみも大切な感情であるということ。こころが揺さぶられるということは、そのきっかけが自分にとって、なにか重要なことである暗示かもしれません。先述の例文3で示したように、すこし時間を取って存分に「感傷に浸る」ことは、等身大の自分と向き合うチャンスでもあります。

辛すぎるときは迷わず誰かに相談して!

感傷に浸って落ち込んだ状態から抜け出せないときや、その気持ちを誰かに吐き出さずにはいられないような場合は要注意。逆に、客観的にみてきつい出来事にあってなお、「感傷に浸る」ことがまったくない場合も、自分を殺している危険な状態かもしれません。

そういう方や、周囲にそう思われる方がいれば、臨床心理士にご相談されるのもいいでしょう。カウンセリングルームを訪れるか、必要であれば心理士常駐の心療内科にかかるのもひとつです。

ときには「感傷に浸って」みるもの一興

この記事では「感傷に浸る」について、類似・対義表現や英語訳を交えて解説しました。

「感傷に浸る」と聞くと、ネガティブな感情に支配されているような印象を持たれている方も、多いのではないでしょうか。悲しみに暮れて日常生活に悪影響が出てしまっては、確かに問題です。しかし、悲しみも大事な自分のこころのひとつ。まずはその感情を否定せずに受け止め、気持ちにふたをせずに解放するのが吉でしょう。

この記事が、「感傷に浸る」状態を吟味するきっかけになれば幸いです。

英語の勉強には洋楽の和訳サイトもおすすめです。
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国語言葉の意味

エモいとは違う?「感傷に浸る」の意味や使い方・例文・英語表現・対義語もwebライターがわかりやすく解説!

この記事では、「感傷に浸る」について解説する。
「感傷に浸る」って聞くと、悲しそうな顔して考え込んでいる姿が目に浮かぶ。ですが「感傷に浸る」ときって、実際に悲しいことがあった瞬間だけじゃないよな。感覚的には言葉の意味を理解しているつもりですが、いざ説明してみろって言われると困っちまうやつも多いでしょう。
今回は夕焼けなどの景色や、秋口の涼しさに感傷に浸りやすいライターである、ぷーやんを呼んです。「感傷に浸る」の意味と使われ方について、説明してもらう。

ライター/ぷーやん

webライター歴6年。鍛えられた語彙と文章力は本業でも発揮され、社内ルールの書き換え担当に。学生時代のクレペリン検査で「感受性が強い」と判定されたように、感傷に浸りやすい性格を持つ。

「感傷に浸る」の意味を精確につかもう

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意味を紹介する前に、「感傷に浸る」の読み方は「かんしょうにひたる」です。それでは、「感傷に浸る」について解説していきます。

辞書にみる「感傷に浸る」

「感傷」と「浸る」にわけてみていきましょう。まずは「感傷」から。

1 物事に感じて心をいためること。「そう思うと、なんだか―の情に堪えない」〈藤村・家〉
2 物事に感じやすく、すぐ悲しんだり同情したりする心の傾向。また、その気持ち。「―におぼれる」「―にひたる」
出典:デジタル大辞泉(小学館) 「感傷」

2の意味の使用例に、「―にひたる(浸る)」とありますね。これをもう少し噛み砕くと、「悲しみを感じやすいこころ」と言えそうです。次に「浸る」を辞書でみてみましょう。

[動ラ五(四)]
1 水などの中に入る。つかる。「温泉に―・る」「床下まで水に―・る」
2 ある状態や心境にはいりきる。「毎日酒に―・る」「喜びに―・る」
出典:デジタル大辞泉(小学館) 「浸る」

こちらは「心境にはいりきる」とある、2の意味が当てはまりそうですね。先に示した「感傷」の意味と合わせて、「感傷に浸る」は、「悲しみやすい心境にはいりきる」心理状態ということになります。要は、「あらゆる刺激を悲しむ方向に受け取りがち」な心理状態ということ。

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