この記事では「ツケ」について解説する。

端的に言えばツケの意味は「あとでまとめて払うこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

さまざまな分野の本に触れ、知識を培ってきた「つゆと」を呼んです。一緒に「ツケ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/つゆと

子供の頃からの筋金入り読書好きライター。むずかしい言葉や複雑な描写に出会っても、ねばり強く読みこんで理解することをポリシーとする。言葉の意味も、妥協なくていねいに解説していく。

「ツケ」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「ツケ」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「ツケ」の意味は?

「ツケ」には、次のような意味があります。

1.支払い請求書。勘定書き。書きつけ。
2.その場で支払わないで店の帳簿につけさせておき、あとでまとめて支払うこと。また、その支払い方法。
3.運。つき。つごう。
4.(ふつう「ツケ」と書く)歌舞伎で、立ち回り・駆け足・打擲 (ちょうちゃく) の音などを表現し、また見得 (みえ) を印象づけるため、舞台上手の横で、役者の動作に合わせて板を拍子木に似た柝 (き) で打つこと。また、その拍子。上方では「かげ」という。付け拍子。
5.「付け帳」の略。
6.手紙。
7.動詞の連用形に付いて、いつもそうしている、…しなれている、などの意を表す。「掛かり―の医者」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「つけ」

ひらがなで書く「つけ」はたくさんの意味を持ちます。引用した辞書には、1と2のように関連し合う意味もあればまったく違う意味もありますね。今回は主に「ツケ」とカタカナで表現するものの意味を紹介しましょう。

「ツケ」は一般的には2の意味で使われます。飲み屋の常連さんが店の主人に「ツケにしといて」と言って帰ろうとするシーン、ドラマで見たことはないでしょうか。これは「あとでまとめて払う」と言っているのです。商品や飲食の代金をそのときには払わず、あとでまとめて払うことを「ツケ」といいます

4の歌舞伎の世界で使われる「ツケ」とは、「ツケ板」と呼ばれる板を「ツケ木」と呼ばれる木で打って音を出す、舞台の演出のひとつです。「ツケ打ち」ともいい、この仕事をする人を「ツケ打ち師」とよびます。歌舞伎役者が走ったり見得(みえ)をしてポーズを決めたりするときに、音を出して場面をもりあげるものです。

「ツケ」の語源は?

次に「ツケ」の語源を確認しておきましょう。「ツケ」という言葉は「帳簿に書き『つけ』る」からきています。

客がその場で代金を支払わなかった場合、店側はそのことを忘れないように、帳簿にきちんと「書き『つけ』て」おくものです。そこから、後払いで支払うことやその代金のことを「ツケ」とよぶようになりました。借金の取り立て屋が「これまでのツケ、今日こそはきっちり払ってもらいますよ」なんていうのも、ドラマにありそうなセリフですよね。

上の1の意味のとおり「ツケ」に「請求書」という意味があるのも由来は同じ。「書きつける」は「書き付ける」とも書くので、「付け」とあらわすこともあります。

 

\次のページで「「ツケ」の使い方・例文」を解説!/

「ツケ」の使い方・例文

「ツケ」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.サラリーマン経験者のマスターに、自分もそのうち会社辞めて企業でもしようかななんてテキトーな話をしたあげく、今日はツケにしてよとお願いしたら、そうやってなんでも先送りするのが良くないところかなと苦笑されてしまった。
2.歌舞伎のツケ打ち師のかたに話を聞いたところ、初心者が舞台でツケを打てるようになるまでの道のりはけっして簡単ではなく、プロとなった現在も日々勉強だとおっしゃっていました。
3.あいつは昔から人に借りを作ってもお礼も言わないし、そのくせ人にはケチをつけるヤツだった。大人になって孤独なのは、そのツケが回ってきたってことなのさ。

例文1は「あとでまとめて払う」という意味の「ツケ」を使った文章です。ツケ払いだとその場の負担がないため、気楽に商品の購入や飲食をしてしまう場合もあるでしょう。しかし、それは支払いを後回しにしただけのこと。いつかは向き合う必要があります。

例文2は歌舞伎業界の「ツケ」を使った文章です。ツケ打ち師は板を打って出す音だけで、さまざまな場面を演出します。同じシーンでも、演じる歌舞伎役者や役者の体調によって間合いが変わるため、それも計りながらベストの演出をしなければなりません。訓練をし技術をみがき続けることが必要な、とても難しい仕事といえます。

例文3の「ツケが回る」は「自分がしてきたことの報いを受ける」という意味です。ツケ払いの意味から転じ、そのように使われます。あとから請求がくる「ツケ払い」と同じで、自らがしてきたことは、当然それに応じた結果をつくりだすという意味です。

「ツケ」の類義語は?違いは?

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「ツケ」の類義語には「掛買い・掛売り」があります。

「掛買い・掛売り」

まず「掛(かけ)」とは会計用語で、お互いの信用のもとに支払いをまとめておこなう取引のことです。つまりは「ツケ」と同じですね。

「掛買い」は買った側からみた言いかたで、まだ代金を支払っていないということ。逆に「掛売り」は売った側から見た言いかたで、代金を受け取っていないということです。「掛買い」と「掛売り」は対義語になります。

掛買いも掛売りも「ツケ」のことをいっているのですが、掛買いと掛売りは対義語同士。ちょっとややこしいですが、意味の違いははっきりしていますね。

\次のページで「「ツケ」の対義語は?」を解説!/

「ツケ」の対義語は?

「ツケ」の対義語には「現金払い」があげられます。

「現金払い」

「現金払い」は単純に、キャッシュカードや電子マネーなどを使わずに現金で支払うことをさします。しかし、その意味においては「現金払い」は「ツケ」の対義語にはなりません。「ツケ」も現金で支払いますし。

対義語のニュアンスをもつのは、「現金払い」に「その場で支払う」という意味がふくまれるときです。買い物で現金払いをするときは、その場でお金のやりとりをするのが普通ですね。買い物をしたときに支払いも完了する「現金払い」は、後日まとめて払う「ツケ」とは対照的といえます

余談ですが江戸時代、踏み倒しなどのトラブルもおこりうる「ツケ払い」は、店主にとってうれしくないものでした。その場で「現金払い」をしてくれる客は貴重。「現金なヤツだ」とは「利害によってコロッと態度が変わるやつだ」という意味ですが、現金払いの客に対して店主がコロッと態度を変え、ニコニコ顔になることから生まれたといわれています。

「ツケ」の英訳は?

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「ツケ」の英訳には「tab」を使います。

歌舞伎の「ツケ」は「wooden clappers」。

「ツケが回る」の英訳には「deserve」を使います。

その1「tab」

「tab」には「勘定書き(かんじょうがき)」の意味があります。勘定をかいたもの、つまり請求書のことです。「open up a tab(勘定書きを開く)」で「ツケておく」という意味になります。

ほかの表現もありますよ。下の例文で確認しましょう。

Well, that's ok, I'll just open up a tab.
(大丈夫、つけにしとくよ。)

I want to tab for everyone.
(みんなの分は私のつけにしといてね。)

Can I really pay later?
(本当にあとで払っていいの?=ツケでいいの?)

その2「wooden clappers」

歌舞伎の「ツケ」は「wooden clappers」で表現されるようです。「拍子木(ひょうしぎ)」を英訳したものですね。

下記は歌舞伎の見得(みえ)について説明している英文です。

\次のページで「その3「deserve」」を解説!/

For greater emphasis, the pose is accompanied by loud beats of the wooden clappers.
(より強調するために、ポーズは木製の鳴子の大きなビートを伴います。)

その3「deserve」

「ツケが回る」は「deserve」を使ってあらわします。「deserve」は「~に値する」という意味。良いことにも悪いことにも使うことができる言葉です。「因果応報」をイメージすると分かりやすいでしょうか。

「ツケ」の場合は悪い意味で使うパターンになりますね。下に例文を載せるので確認してください。

 

You deserve what you get.
(あなたはあなたが得るものに値します(自業自得)。=あなたにはツケが回ってきます。)

※良い意味で使う例
They deserve this prize.
(彼らはこの賞にふさわしいです。)

「ツケ」を使いこなそう

この記事では「ツケ」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「ツケ」は「あとでまとめて払う」という意味の言葉です。そこから「ツケが回る」という言葉も生まれました。「ツケが回る」の意味は「自分がしてきたことの報いを受ける」です。

「ツケ」は店と客の信頼関係があってこそ成り立つもの。ツケられるお店、あなたは持っていますか?

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国語言葉の意味

「ツケ」の意味や使い方は?例文や類語を読書家Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「ツケ」について解説する。

端的に言えばツケの意味は「あとでまとめて払うこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

さまざまな分野の本に触れ、知識を培ってきた「つゆと」を呼んです。一緒に「ツケ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/つゆと

子供の頃からの筋金入り読書好きライター。むずかしい言葉や複雑な描写に出会っても、ねばり強く読みこんで理解することをポリシーとする。言葉の意味も、妥協なくていねいに解説していく。

「ツケ」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「ツケ」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「ツケ」の意味は?

「ツケ」には、次のような意味があります。

1.支払い請求書。勘定書き。書きつけ。
2.その場で支払わないで店の帳簿につけさせておき、あとでまとめて支払うこと。また、その支払い方法。
3.運。つき。つごう。
4.(ふつう「ツケ」と書く)歌舞伎で、立ち回り・駆け足・打擲 (ちょうちゃく) の音などを表現し、また見得 (みえ) を印象づけるため、舞台上手の横で、役者の動作に合わせて板を拍子木に似た柝 (き) で打つこと。また、その拍子。上方では「かげ」という。付け拍子。
5.「付け帳」の略。
6.手紙。
7.動詞の連用形に付いて、いつもそうしている、…しなれている、などの意を表す。「掛かり―の医者」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「つけ」

ひらがなで書く「つけ」はたくさんの意味を持ちます。引用した辞書には、1と2のように関連し合う意味もあればまったく違う意味もありますね。今回は主に「ツケ」とカタカナで表現するものの意味を紹介しましょう。

「ツケ」は一般的には2の意味で使われます。飲み屋の常連さんが店の主人に「ツケにしといて」と言って帰ろうとするシーン、ドラマで見たことはないでしょうか。これは「あとでまとめて払う」と言っているのです。商品や飲食の代金をそのときには払わず、あとでまとめて払うことを「ツケ」といいます

4の歌舞伎の世界で使われる「ツケ」とは、「ツケ板」と呼ばれる板を「ツケ木」と呼ばれる木で打って音を出す、舞台の演出のひとつです。「ツケ打ち」ともいい、この仕事をする人を「ツケ打ち師」とよびます。歌舞伎役者が走ったり見得(みえ)をしてポーズを決めたりするときに、音を出して場面をもりあげるものです。

「ツケ」の語源は?

次に「ツケ」の語源を確認しておきましょう。「ツケ」という言葉は「帳簿に書き『つけ』る」からきています。

客がその場で代金を支払わなかった場合、店側はそのことを忘れないように、帳簿にきちんと「書き『つけ』て」おくものです。そこから、後払いで支払うことやその代金のことを「ツケ」とよぶようになりました。借金の取り立て屋が「これまでのツケ、今日こそはきっちり払ってもらいますよ」なんていうのも、ドラマにありそうなセリフですよね。

上の1の意味のとおり「ツケ」に「請求書」という意味があるのも由来は同じ。「書きつける」は「書き付ける」とも書くので、「付け」とあらわすこともあります。

 

\次のページで「「ツケ」の使い方・例文」を解説!/

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