この記事では「あまつさえ」について解説する。

端的に言えば「あまつさえ」の意味は「それよりさらに」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役学生ライターのタビビトを呼んです。一緒に「あまつさえ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タビビト

現役の文学部学生ライター。学生生活の中で数多くの芸術関係の執筆を行い、小学生の頃から多種多様な書籍を読破してきた生粋の文化系。読書量に比例する文章力で日本語をわかりやすく解説していく。

「あまつさえ」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「あまつさえ」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「あまつさえ」の意味は?

「あまつさえ」には、次のような意味があります。

別の物事や状況が、さらに加わるさま。多く、悪い事柄が重なるときに用いる。そのうえ。おまけに。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「剰え(あまつさえ)」

「あまつさえ」は、ある物事に加えてさらに何かが加わる様子を指す言葉です。ほとんどの場合、悪い状況が重なったときに用いる言葉なので、自分にとって良いことが次々に起こることは表現しません。悪いことがあって気分が落ち込んでいるときに、さらに追い打ちをかけるように嫌なことが起こるという運の悪い日は誰にでも経験があると思います。「あまつさえ」は一見難しい表現ですが、頻繁かつ誰にでも起こる状況を表現しているということですね。

「あまつさえ」はほとんどの場合ひらがな表記ですが、あえて漢字表記にすると「剰え」となります。「剰」は「過剰」や「剰余」などの言葉に用いられていることからもわかるように、何かが余分に多いことや余分に加わることを表現しますね。「あまつさえ」を漢字表記で見かける機会は少ないですが、「過剰」や「剰余」の「剰」を用いているということを思い出すと、意味をとらえやすいです。

「あまつさえ」の語源は?

次に「あまつさえ」の語源を確認しておきましょう。

「あまつさえ」の語源は「余りさへ」です。「余り」に助詞の「さへ」がついた言葉で、「あまりさへ」と読みます。この「あまりさへ」の「り」が時代を経るにしたがって読みやすくするために促音化されて「あまっさへ」になり、近世では「っ」を小さく表記しなかったため現代の「あまつさえ」となりました。

現代では何かが余計に加わる様子を表現する「あまつさえ」ですが、語源から見るともともとは何かが余るということを表現していることがわかりましたね。

\次のページで「「あまつさえ」の使い方・例文」を解説!/

「あまつさえ」の使い方・例文

「あまつさえ」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.通勤ラッシュで電車が混んでいて自分ひとりも立つことすらままならない状態なのに、あまつさえ子供が気持ち悪いと言い出したので、下車するしかなかった。


2.アクセス情報をきちんと検索しておいたのに画像のイメージと全く違う経路に迷い、あまつさえ温泉宿が予約できていなかったという事態が起きた。


3.人気のライフスタイルマガジンを出版している会社でバイトをしようと思っていたが履歴書の提出が選考期間に間に合わず、あまつさえ応募条件に自分が見合っていないことにも気が付いた。

例文を見ていただければわかるように、「あまつさえ」は悪いことが重なったときに用いる言葉です。

「今日は大好きな友達に久しぶりに会うことができるし、あまつさえ明日は仕事が休みだ」や、「お散歩日和の今日は、あまつさえ桜の開花も見られるようだ」のように、自分にとって良いことやうれしいことが続いて起こることに対して「あまつさえ」を用いることはありません。悪いことが重なって、気分が落ち込んでいるときにその落ち込んでいるニュアンスも含めたうえで「あまつさえ」は用いるということですね。

「あまつさえ」を使うと考えると難しいと感じてしまいますが、「あまつさえ」は何かが加わることを指す表現でした。したがって「そのうえ」「さらに」のように、日常的になじみ深い言葉の用い方と同じように用いる考えると分かりやすいのではないでしょうか。「そのうえ」や「さらに」の意味にプラスで、ネガティブなイメージが付随するということになります。

「あまつさえ」の類義語は?違いは?

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「あまつさえ」は悪いことが続いて起こることを表現する言葉でした。

続いて、「あまつさえ」の類義語を見ていきましょう。

「追い打ちをかける」

「あまつさえ」の類義語は、「追い打ちをかける」です。「追い打ちをかける」とは、弱っているときや困っているときなどの大変な状況の時にさらにとどめを刺すかのような仕打ちを受けることを表現する言葉。「ただでさえ風邪で寝込んでいるのに、追い打ちをかけるように暖房が壊れた」や、「ここは震災の被害が著しかった地域で、追い打ちをかけるように昨日、山火事が起こった」などのように用います。

「あまつさえ」は日常的な不運や失敗の時などの比較的規模の小さい事柄を指しますが、「追い打ちをかける」は震災や環境問題など、世界規模の物事も含めて表現する言葉です。したがって「あまつさえ」と「追い打ちをかける」の使い分けは起こった事柄の規模の大きさで判断することがわかりやすいでしょう。

\次のページで「「あまつさえ」の対義語は?」を解説!/

「あまつさえ」の対義語は?

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「あまつさえ」は予測していなかった不運が重なって起こることを表現する言葉でした。では、「あまつさえ」の対義語はどのようなものなのでしょうか。

早速見ていきましょう。

「案の定」

「あまつさえ」の対義語は、「案の定」です。

「あまつさえ」は、悪いことが起こったときにさらに予想していなかった不運に見舞われるという状況を指す言葉でしたね。「案の定」は物事が予想通りに進むことや思い通りの結果になることを表現します。したがって予想外のことに気持ちを左右させられたという状況の「あまつさえ」とは反対の心理状況を指すことがわかりますね。

また「案の定」は、いい意味でも悪い意味でも用いることができます。「予想していた通り失敗した」という状況や、「こうなってほしいと思っていたら本当にそうなった」というように、ネガティブな時のみにもちいる「あまつさえ」とは違って、様々な場面で使い分けができるということですね。

「あまつさえ」を使いこなそう

この記事では「あまつさえ」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「あまつさえ」はよく耳にする言葉ですが、実際に日常会話の中で用いることはほとんどないのではないでしょうか。一見難しい表現ですが、漢字表記の「剰え」の意味や語源、類義語を紐解いていくと実は簡単に使いこなすことができるということがよくわかりますね。日常会話の中で取り入れる機会はなかなかないですが、畏まった文面などで用いられた場合にはすぐに意味をイメージできるようにしましょう。

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国語言葉の意味

「あまつさえ」の意味や使い方は?例文や類語を現役学生ライターがわかりやすく解説!

この記事では「あまつさえ」について解説する。

端的に言えば「あまつさえ」の意味は「それよりさらに」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役学生ライターのタビビトを呼んです。一緒に「あまつさえ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/タビビト

現役の文学部学生ライター。学生生活の中で数多くの芸術関係の執筆を行い、小学生の頃から多種多様な書籍を読破してきた生粋の文化系。読書量に比例する文章力で日本語をわかりやすく解説していく。

「あまつさえ」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「あまつさえ」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「あまつさえ」の意味は?

「あまつさえ」には、次のような意味があります。

別の物事や状況が、さらに加わるさま。多く、悪い事柄が重なるときに用いる。そのうえ。おまけに。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「剰え(あまつさえ)」

「あまつさえ」は、ある物事に加えてさらに何かが加わる様子を指す言葉です。ほとんどの場合、悪い状況が重なったときに用いる言葉なので、自分にとって良いことが次々に起こることは表現しません。悪いことがあって気分が落ち込んでいるときに、さらに追い打ちをかけるように嫌なことが起こるという運の悪い日は誰にでも経験があると思います。「あまつさえ」は一見難しい表現ですが、頻繁かつ誰にでも起こる状況を表現しているということですね。

「あまつさえ」はほとんどの場合ひらがな表記ですが、あえて漢字表記にすると「剰え」となります。「剰」は「過剰」や「剰余」などの言葉に用いられていることからもわかるように、何かが余分に多いことや余分に加わることを表現しますね。「あまつさえ」を漢字表記で見かける機会は少ないですが、「過剰」や「剰余」の「剰」を用いているということを思い出すと、意味をとらえやすいです。

「あまつさえ」の語源は?

次に「あまつさえ」の語源を確認しておきましょう。

「あまつさえ」の語源は「余りさへ」です。「余り」に助詞の「さへ」がついた言葉で、「あまりさへ」と読みます。この「あまりさへ」の「り」が時代を経るにしたがって読みやすくするために促音化されて「あまっさへ」になり、近世では「っ」を小さく表記しなかったため現代の「あまつさえ」となりました。

現代では何かが余計に加わる様子を表現する「あまつさえ」ですが、語源から見るともともとは何かが余るということを表現していることがわかりましたね。

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