

端的に言えば「そつなくこなす」の意味は「むだなくうまくやる」だ。誉め言葉に聞こえるが、実は注意が必要な言葉だ。
小学校教諭として言葉の授業を何度もしてきた「こと」と一緒に、「そつなくこなす」の意味や使い方・類語・対義語などを見ていこう。

解説/桜木建二
「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。
ライター/こと
元小学校教諭のwebライター。先生や子どもたちから「授業が分かりやすい!」との定評があった教育のプロだ。豊富な経験を活かし、どんな言葉も分かりやすく解説していく。
「そつなくこなす」の意味は「むだなくうまくやる」
「そつなくこなす」を「そつ」と「こなす」に分けて、意味を辞書で確認しましょう。
まずは「そつ」を調べます。
1.手抜かり。手落ち。
2.むだ。むだな費用。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「そつ」
このように「そつ」は「手抜かり」や「むだ」のこと。「そつが無い」で「手抜かりが無い」「むだが無い」となります。次は「こなす」を調べてみましょう。
技術などを習って、それを思うままに使う。また、身につけた技術でうまく扱う。自在に扱う。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「こなす」
いろいろな意味がありましたが、今回は「思うままに使う」や「うまく扱う」が当てはまるでしょう。つまり「そつなくこなす」は「むだなくうまくやる」という意味になりますね。
「そつなくこなす」の使い方を例文で紹介
「そつなくこなす」の使い方を例文で紹介します。
1.頭も良く要領のいい彼女は、多くの物事をそつなくこなすことが出来るみんなの憧れの存在だ。
2.あの人は不器用なタイプだから、なんでもそつなくこなすなんて到底できないだろう。
3.飛び抜けた才能があるわけではないが、大抵は正確にそつなくこなすことができた。
4.「あなたは与えられた仕事をそつなくこなすね。」と言われたが、喜んでいいのだろうか。
このように、どれも「むだなくうまくやる」という意味合いで使われています。ただ1ははっきりと誉め言葉だと分かるものの、4の例文は少し様子が異なるように感じますよね。実は「そつなくこなす」は、誉め言葉で使われる場合とそうではない場合があるのです。
「そつ」の漢字は「卒」?「率」?
「そつなくこなす」を漢字にすると「そつ」という語の漢字として、「卒」と「率」の二字があります。しかし、一般的にはひらがなで表記されることが多い言葉です。「卒」は当て字という見解もあり、語源も分かりません。「卒」という字を当てている資料はあるものの、「ありのまま」という意味を持つ「率」という字の方がふさわしいという説もあり、漢字表記がはっきりしないようです。
2パターンある「そつなくこなす」

image by iStockphoto
相手との関係や解釈、状況によって「そつなくこなす」は誉め言葉にもなり、批判的な言葉にもなります。全く反対の印象を与えて誤解されないためにも、両パターンをの使い方をよく知っておきましょう。
\次のページで「誉め言葉の「そつなくこなす」」を解説!/