この記事では「息災」について解説する。

端的に言えば息災の意味は「元気なこと」ですが、語源やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元大手予備校校舎長で大学入試の国語指導歴が長いライターのみゆなを呼んです。一緒に「息災」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「息災」の意味や語源・使い方まとめ

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「息災」という言葉を耳にしたことはありますか?「息(いき)」+「災(わざい)」という不思議な組み合わせですが、これは仏教に由来する相手を思いやる言葉です。「そくさい」と読みます。

コロナ禍で以前のようには人と会えない状況が続いており、しばらく会っていない人を「元気かな」と思うこともあるでしょう。そんな時に使える言葉が「息災」です。使いこなすと表現に深みがでますよ。

それでは早速「息災」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「息災」の意味は?

「息災」には、次のような意味があります。

1.病気をしないで、元気なこと。また、そのさま。「息災に暮らす」「無病息災」
2.仏の力で災難を防ぎ止めること。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「息災」

「息災」は2つの意味を持っています。

1つ目は「元気である様子」という意味です。「無病息災」「息災延命」という四字熟語で使われている「息災」はこちらの意味ですね。病気にかからず元気で過ごすさま、長生きすることといった意味になります。

2つ目は神仏の力により、生きているもの全ての災いを鎮め、罪を除き、苦を消し、安定させるという意味です。

「息災」の語源は?

次に「息災」の語源を確認しておきましょう。

「息災」は元々は仏教用語です。「息」には「とどめる」という意味がありました。現代でも「休息」「息をつく」といったようにつかわれますが、これは活動的な状態から身体が静かに息づくさまに様子が変わり、その状態でとどまるということを表しました。

その「息」の字に「わざわい」を意味する「災」がつながり、「神仏の力で災いを鎮める」という意味に転じたと言われています。災いが静まれは人々はホッと息をつき、元気にもなるもの。そこから「元気である」という意味が生まれました。

徒然草」にも「息災なる人も、目の前に大事の病者となりて」という一文があり、古い言葉であることが分かります。

\次のページで「「息災」の使い方・例文」を解説!/

「息災」の使い方・例文

「息災」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.皆様におかれましては、ご息災にお過ごしのことと存じ上げます。
2.おかげさまで、私共は息災に暮らしております。
3.今後も皆様のご息災をお祈り申し上げております。

「息災」は個人的なかしこまった文章で使われます。自分に対しても、相手に対しても用いることができる便利な言葉です。目上の人には敬語の「ご」をつけて「ご息災でいらっしゃる」、自分に対しては「息災にしております」などということができます。

例文1は相手を思いやった表現ですね。「ご息災」とすることで、敬意も含ませることができます。相手の近況が変わらず良いものであることを喜ぶ意味が込められた言い回しです。

例文2は自分に対して使っています。「息災に暮らしております」ということで、こちらは元気ですと相手に伝わります。

例文3はさらにかしこまった表現で、年賀状や年頭のあいさつなどに使われることが多い表現です。

「息災」の類義語は?違いは?

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元気で健康なことは誰もが願うことなだけに、類語も非常に数多くあります。ここでは「息災」の類語に当たるもののうち、代表的なものをご紹介しましょう。

その1「健在」

まず「健在」から見てみましょう。「健」康で「在」る、という文字の構成からも分かるように、「健在」は心身が健やかなさまを表します。また健康状態だけでなく、能力に対しても使われる言葉です。「あの政治家の鋭い弁舌は健在だ」といったように、個人のスキルや能力が衰えることなく十分に発揮できているさまも表現できます。

\次のページで「その2「達者」」を解説!/

その2「達者」

「達者」も「病気もせず元気である」という様子を表します。ただし使い方には注意してください。「達者」には「熟達している、したたかである」という意味もあるからです。「お達者な様子を見て安心しました」や「とても芸達者な方ですね」といえば褒め言葉になりますが、「商売に達者な人だ」というと「したたか」という意味が加わるため、あまり良い表現とは言えなくなってしまいます。

その3「恙無い」

読み方は「つつがない」です。意味は「状態が良好である、事故や失敗がなく平穏である」となります。息災も心身が健康であるという意味のほかに、「災いを鎮める」という意味もありました。「健康」以外にも含みを持たせたいときの言い換え表現として、「恙無い」をおさえておきましょう。

「息災」の対義語は?

「元気で健康である」という意味の「息災」には対義語はありません。意味を反対にすると「元気がない、健康でない」となり、これは「病気」「不健康」と言った言葉が該当します。ただ「息災」には神仏の加護を受けて無事にやれているというニュアンスもあるため、「病気」や「不健康」という具体的な表現では表しきれないのです。

「息災」の英訳は?

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「息災」を英語で表現する時は、「元気である、健康である」という意味を英訳することになります。神仏はアジア圏の宗教であり、英語圏には「神仏の加護で」という概念がないからです。

その1「good health」

「good」は「状態が良い」、「health」は「健康」という意味です。2つ合わさると「体の調子がとても良い」という意味になります。直接的な表現ではありますが「good health」も自分にも相手にも使える表現なので、「息災」の英訳として覚えておきましょう。

その2「wishing health and long life」

こちらは「息災を祈る」という表現の英訳です。「wish」が「願う」、「long life」は「長寿」。「健康と長寿を願って」という意味になります。英語のカードを贈る際などに使えそうな表現ですね。

\次のページで「「息災」を使いこなそう」を解説!/

「息災」を使いこなそう

この記事では「息災」の意味・使い方・類語などを説明しました。

神仏の加護で災いを鎮め、健康になる・元気になるという発想は、いかにも仏教的です。身体の調子が悪くなって初めて健康のありがたみを感じるという人も多いはず。そんなときは神仏からの「身体をいたわりなさい」というメッセージだと受け止め、しっかり身体を休めたいものですね。

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国語言葉の意味

「息災」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校校舎長がわかりやすく解説!

この記事では「息災」について解説する。

端的に言えば息災の意味は「元気なこと」ですが、語源やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元大手予備校校舎長で大学入試の国語指導歴が長いライターのみゆなを呼んです。一緒に「息災」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「息災」の意味や語源・使い方まとめ

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「息災」という言葉を耳にしたことはありますか?「息(いき)」+「災(わざい)」という不思議な組み合わせですが、これは仏教に由来する相手を思いやる言葉です。「そくさい」と読みます。

コロナ禍で以前のようには人と会えない状況が続いており、しばらく会っていない人を「元気かな」と思うこともあるでしょう。そんな時に使える言葉が「息災」です。使いこなすと表現に深みがでますよ。

それでは早速「息災」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「息災」の意味は?

「息災」には、次のような意味があります。

1.病気をしないで、元気なこと。また、そのさま。「息災に暮らす」「無病息災」
2.仏の力で災難を防ぎ止めること。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「息災」

「息災」は2つの意味を持っています。

1つ目は「元気である様子」という意味です。「無病息災」「息災延命」という四字熟語で使われている「息災」はこちらの意味ですね。病気にかからず元気で過ごすさま、長生きすることといった意味になります。

2つ目は神仏の力により、生きているもの全ての災いを鎮め、罪を除き、苦を消し、安定させるという意味です。

「息災」の語源は?

次に「息災」の語源を確認しておきましょう。

「息災」は元々は仏教用語です。「息」には「とどめる」という意味がありました。現代でも「休息」「息をつく」といったようにつかわれますが、これは活動的な状態から身体が静かに息づくさまに様子が変わり、その状態でとどまるということを表しました。

その「息」の字に「わざわい」を意味する「災」がつながり、「神仏の力で災いを鎮める」という意味に転じたと言われています。災いが静まれは人々はホッと息をつき、元気にもなるもの。そこから「元気である」という意味が生まれました。

徒然草」にも「息災なる人も、目の前に大事の病者となりて」という一文があり、古い言葉であることが分かります。

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