その2「ためつすがめつ」
「ためつすがめつ」はいろいろな角度から見定める様子を表し、「見る・眺める」などの動詞にかかる修飾語として用いられます。漢字では「矯めつ眇めつ」と書きますよ。対象の価値や真贋を判定するために、さまざまの角度から観察するというニュアンスで、不審となかなか決断しない慎重さの暗示があります。また抽象的な物事については用いられません。「ほとほと」との違いはさまざまの角度から観察するというニュアンスが含まれるという点でしょう。
「ほとほと」の対義語は?
「ほとほと」と反対の意味を持つ言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。
その1「なかなか」
「なかなか」は程度が平均を上回っている様子を表す表現。「阿部さんのゴルフはなかなかの腕前だそうだ」では名詞にかかる修飾語になりますし、「この企画はなかなかにおもしろいね」では述語にかかる修飾語の用法です。また、程度が平均を上回っていることを上から見て評価する暗示があり、目上に向かって用いる場合には注意を要します。例えば「部長はゴルフがなかなかお上手ですね」とは言わず「部長はゴルフがたいへんお上手ですね」といいますよ。
その2「かなり」
「かなり」も「なかなか」同様、程度が平均を上回っている様子を表す表現です。物事の程度が平均以上にはなはだしい様子を客観的に表し、主体の冷静さを暗示しますよ。後ろに状態を明示することもありますが、特に明示しないことも多い。「彼が急に黙ったということは、かなり僕の言ったことが胸に刺さったんじゃないかと思うんだ」などは間投詞として用いられた例で、実際は程度がはなはだしいものを婉曲にぼかすニュアンスになり、程度の高さに対する自分の評価と、相手の共感を求める期待の暗示があります。
その3「けっこう」
「けっこう」は望ましく好ましい様子を表しますよ。ややかたい文章語で、とても丁寧なニュアンスがあり、公式の発言や改まった挨拶などによく用いられます。「日光を見ずにけっこうと言うな」という諺がありますが、これは日光の景色を見る前にすばらしいと言ってはいけない、日光ほどすばらしい所は他にないという意味。「けっこう」は対象のすぐれた様子を賞賛する語ですが、とても冷静なニュアンスをもち、客観的に評価を下す暗示があります。そのため、他に敬語が使われない文脈で用いられると、対象を上から見下ろして評価するというニュアンスになり、尊大の暗示を持つことがありますよ。
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