この記事では「ほとほと」について解説する。
端的に言えば「ほとほと」の意味は「非常に、本当に」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「ほとほと」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/flicker

仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「ほとほと」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「ほとほと」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「ほとほと」の意味は?

「ほとほと」には、次のような意味があります。

〘副〙 (多く「と」を伴って用いる)

① 軽くたたく音を表わす語。とんとん。ことこと。

※大鏡(12C前)三「櫃のうちにもののほとほととしけるがあやしさに」

② 斧で木を切る音を表わす語。

※拾遺(1005‐07頃か)雑恋・一二二六「宮造る飛騨のたくみのてをのおとほとほとしかるめをもみしかな〈藤原国用〉」

出典:コトバンク

「ほとほと」は程度がはなはだしいことを慨嘆する様子を表す表現で、慨嘆・嫌悪・困惑などの暗示を伴いますよ。困る・愛想が尽きる・閉口するなど、困惑や嫌悪・忌避を表す動詞にかかる修飾語でもあります。現在ではふつう好ましくない事柄について用いられ、好ましい事柄については用いられません。また、対象の程度がはなはだしいことを実際に体験してから慨嘆する暗示があります

「ほとほと」の語源は?

次に「ほとほと」の語源を確認しておきましょう。「ほとほと」の語源は「辺(ほとり)」です。「辺」は道を歩いてゆく意味を表す「しんにょう」とさかいの意味の音をしめす文字とを合わせた字。地の果てをゆく意味をあらわしますよ。また、地の果てから「はて」「さかい」「あたり」などの意味に使われるようになりました。

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「ほとほと」の使い方・例文

「ほとほと」の使い方について例文を挙げて解説していきます。この言葉は、たとえば以下のように用いられますよ。

1.タバコのポイ捨てはするし、ほとんどゴミ出しはしないし、あんな自分勝手でマナー違反の男、ほとほと愛想が尽きたわ。何度も気持ちを裏切られているし、すんでのことで結婚を思いとどまってほんとうに良かった。

2.実は貸し倒れが発生しましてね。それはほとほとお困りでしょう。回収の見込みがあると判断した出版関連の会社なんですが、不況の影響だと情報提供を受けました。

3.お宅の息子さん、一人で起きるなんて感心ですね。家の娘は子供のころから朝寝坊でほとほと手を焼いているんですよ。親としても心配なので、毎日朝の朝7時には起きるとルールを決めて生活の改善を試みてはいるんですが。

例文1は相手の男性に対して嫌悪感をあらわにしている状態を言い表し、例文2は相手の困惑や慨嘆を思いやって同情しているニュアンスで「ほとほと」が使われています。また例文3は一人で起きることができない娘に慨嘆している様子を表現していると言えるでしょう。

「ほとほと」の類義語は?違いは?

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「ほとほと」と似たような意味をもつ言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「つくづく」

「つくづく」は十分に感じている様子を表し、心理を表す述語にかかる修飾語になります。またある事柄を契機として、あるいはさまざまの経緯を経て現在ある感慨を強く抱いているという意味で、主体の深い納得の暗示がありますよ。心理の状態として深い感慨を持っているというニュアンスで、積極的な行為として深く考えるという意味ではありません。「ほとほと」との違いは、感慨を持つことに対しては不快などの感情は表明されていないという点でしょう。

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その2「ためつすがめつ」

「ためつすがめつ」はいろいろな角度から見定める様子を表し、「見る・眺める」などの動詞にかかる修飾語として用いられます。漢字では「矯めつ眇めつ」と書きますよ。対象の価値や真贋を判定するために、さまざまの角度から観察するというニュアンスで、不審となかなか決断しない慎重さの暗示があります。また抽象的な物事については用いられません。「ほとほと」との違いはさまざまの角度から観察するというニュアンスが含まれるという点でしょう。

「ほとほと」の対義語は?

「ほとほと」と反対の意味を持つ言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「なかなか」

「なかなか」は程度が平均を上回っている様子を表す表現。「阿部さんのゴルフはなかなかの腕前だそうだ」では名詞にかかる修飾語になりますし、「この企画はなかなかにおもしろいね」では述語にかかる修飾語の用法です。また、程度が平均を上回っていることを上から見て評価する暗示があり、目上に向かって用いる場合には注意を要します。例えば「部長はゴルフがなかなかお上手ですね」とは言わず「部長はゴルフがたいへんお上手ですね」といいますよ。

その2「かなり」

「かなり」も「なかなか」同様、程度が平均を上回っている様子を表す表現です物事の程度が平均以上にはなはだしい様子を客観的に表し、主体の冷静さを暗示しますよ。後ろに状態を明示することもありますが、特に明示しないことも多い。「彼が急に黙ったということは、かなり僕の言ったことが胸に刺さったんじゃないかと思うんだ」などは間投詞として用いられた例で、実際は程度がはなはだしいものを婉曲にぼかすニュアンスになり、程度の高さに対する自分の評価と、相手の共感を求める期待の暗示があります。

その3「けっこう」

「けっこう」は望ましく好ましい様子を表しますよ。ややかたい文章語で、とても丁寧なニュアンスがあり、公式の発言や改まった挨拶などによく用いられます。「日光を見ずにけっこうと言うな」という諺がありますが、これは日光の景色を見る前にすばらしいと言ってはいけない、日光ほどすばらしい所は他にないという意味。「けっこう」は対象のすぐれた様子を賞賛する語ですが、とても冷静なニュアンスをもち、客観的に評価を下す暗示があります。そのため、他に敬語が使われない文脈で用いられると、対象を上から見下ろして評価するというニュアンスになり、尊大の暗示を持つことがありますよ。

「ほとほと」の英訳は?

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「ほとほと」の英訳にはどのようなものがあるのでしょうか。英語で「ほとほと」と言い表す時の例をさっそく見ていきましょう。

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「at one’s wit’s end」

「at one’s wit’s end」は「途方に暮れて、思案に暮れて、ほとほと困って」という意味です。「I'm at my wits' end for time」で「私は時間がなくて困り果てている」、「I'm at my wits' end  I can't come up with an idea」で「良いアイディアが浮かばずほとほと困っている」となりますよ。

「ほとほと」を使いこなそう

この記事では「ほとほと」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「ほとほと」は慨嘆・嫌悪・困惑などの暗示を伴う表現で、程度がはなはだしいことを慨嘆する様子を表します。また、好ましくない事柄について用いられ、対象の程度がはなはだしいことを実際に体験してから慨嘆する暗示があると説明しましたね。また「ほとほと」は「よくよく」に似ていますが、「よくよく」は物事の根源や真相に言及し、根源からある状態に完全になっているというニュアンスがありますよ。

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国語言葉の意味

「ほとほと」の意味や使い方は?例文や類語をプロダクション編集者がわかりやすく解説!

「ほとほと」の使い方・例文

「ほとほと」の使い方について例文を挙げて解説していきます。この言葉は、たとえば以下のように用いられますよ。

1.タバコのポイ捨てはするし、ほとんどゴミ出しはしないし、あんな自分勝手でマナー違反の男、ほとほと愛想が尽きたわ。何度も気持ちを裏切られているし、すんでのことで結婚を思いとどまってほんとうに良かった。

2.実は貸し倒れが発生しましてね。それはほとほとお困りでしょう。回収の見込みがあると判断した出版関連の会社なんですが、不況の影響だと情報提供を受けました。

3.お宅の息子さん、一人で起きるなんて感心ですね。家の娘は子供のころから朝寝坊でほとほと手を焼いているんですよ。親としても心配なので、毎日朝の朝7時には起きるとルールを決めて生活の改善を試みてはいるんですが。

例文1は相手の男性に対して嫌悪感をあらわにしている状態を言い表し、例文2は相手の困惑や慨嘆を思いやって同情しているニュアンスで「ほとほと」が使われています。また例文3は一人で起きることができない娘に慨嘆している様子を表現していると言えるでしょう。

「ほとほと」の類義語は?違いは?

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「ほとほと」と似たような意味をもつ言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「つくづく」

「つくづく」は十分に感じている様子を表し、心理を表す述語にかかる修飾語になります。またある事柄を契機として、あるいはさまざまの経緯を経て現在ある感慨を強く抱いているという意味で、主体の深い納得の暗示がありますよ。心理の状態として深い感慨を持っているというニュアンスで、積極的な行為として深く考えるという意味ではありません。「ほとほと」との違いは、感慨を持つことに対しては不快などの感情は表明されていないという点でしょう。

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