この記事では「旗を揚げる」について解説する。
端的に言えば旗を揚げるの意味は「新しくことを起こす」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
今回は日本文学部卒の現役WEBライター、ヒマワリを呼んです。一緒に「旗を揚げる」の意味や例文、類語などを見ていきます。
ライター/ヒマワリ
今回の記事を担当するのは、日本文学科卒で現役ライターのヒマワリ。専攻は近代文学だが、古典からマンガまで幅広く読んでいる。受験生家庭教師の経験を生かして、「旗を揚げる」についてわかりやすく丁寧に説明していく。
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「旗を揚げる」は「はたをあげる」と読みます。単に、旗を高い所に掲げると言う動作を表すだけではなく、慣用句として使われることも多い言葉です。この機会にしっかり意味を覚えましょう。それでは早速「旗を揚げる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。
まず初めに「旗を揚げる」の正確な意味を辞書からの引用で確かめてみましょう。「旗を揚げる」には、次のような意味があります。
1.兵を挙げる。軍を起こす。
2.新しく事を起こす。新たに事業を始める
出典:デジタル大辞泉(小学館)「旗を揚げる」
上記の1.は、戦争や紛争などで、軍を立ち上げたり、兵をあげたりして、争いを開始することを周りに示す、と言う意味です。
2.は、社会において何かを始めようとする、と言う意味で、会社の立ち上げや選挙などで使うことが多いでしょう。自分の主義主張を世間に広めようと活動を始める時などにも使われます。
次に「旗を揚げる」の語源を確認しておきましょう。
大河ドラマや戦国ものの小説の挿絵などで、戦争中に旗を掲げているのを見たことがあると思います。昔、戦国時代には、合戦を始める際、敵味方の目印になるように、自軍の旗印などを描いた旗を持っていました。これが由来となって、戦争などで兵をあげたり、軍を起こしたりすることを「旗を揚げる」と言うようになりました。そして、それが転じて、何か新しい事に挑戦する時などに「旗を揚げる」が用いられるようになったのです。戦争に由来する言葉ですから、何かを切り開いていく信念のような力強さを感じる慣用句ですね。
\次のページで「「旗を揚げる」の使い方・例文」を解説!/
それでは、「旗を揚げる」の使い方を、実際の例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。
1.宗派の違いにより、一部の過激派が旗を揚げ、一般の信者を巻き込み紛争が起こったら、何か国も巻き込んだ国際問題になりうる。
2.会員増加に伴い、新しいサービスの需要があり、新子会社設立の旗を揚げる事が会議で決まった。
3.社会福祉など、世界と同じ水準に追いつきたいと頑張り続けてきて、今や新党の旗を揚げた日が遠くに感じる。
例文1の「旗を揚げる」は、戦争や紛争などの争いで、集団になって蜂起すると言う意味です。辞書の引用では、兵を挙げる、軍を起こす、となっていましたが、同じような用法で、集団で放棄するデモや抗争などでも用いる事ができます。
例文2は、新しく事を起こす、と言う意味の「旗を揚げる」です。このように、ビジネスシーンでは新しく会社を立ち上げる時や、新事業を始める時などに使うことが多いでしょう。
例文3のように、新党設立など、社会活動において主義主張などを掲げて運動を始めることにも「旗を揚げる」が良く使われます。特に、政治関連のニュースで良く聞きますね。
「発起」は「ほっき」と読みます。「発起」は三つの意味を持っており、一つめは、思い立って事を始めることです。二つめは、仏語として、仏教徒が悟りを求める心を起こすこと、三つめには、あきらめる、と言う意味を持っています。一般的には、一つめの、思い立って新しく何かを始める、と言う意味で使われることがほとんどで、「旗を揚げる」の類義語として挙げられるのもこの使い方です。
そして、「旗を揚げる」は一つのことを大勢でやり始めると言う意味合いで使われますが、「発起」は、一人が単独で始めることにも使うことができるのが相違点ですね。
それでは、「発起」の使い方も例文で確かめてみましょう。
\次のページで「その2「蜂起」」を解説!/
先生から好意的評価と激励をこめた内容の文章をいただいたことが、よりレベルの高い研究開発を発起するきっかけとなった。
「蜂起」は「ほうき」と読みます。「蜂」は「ハチ」を意味する漢字です。ご存知の通り「ハチ」は巣を攻撃されると、大勢で反撃してきますね。つまり「蜂起」とは、ハチが巣から一斉に飛びたつように、大勢が一時に暴動・反乱などの行動を起こすと言う意味なのです。
「旗を揚げる」にも、軍を起こす、兵を挙げると言う意味があり、旗の下に集まり集団で争いを起こすと言う意味がありますから、「蜂起」は類義語としてふさわしいでしょう。
「蜂起」の使い方も、例文で確かめてみましょう。
学校の対応に不満があり、生徒達で蜂起し意思表示したが、抗議や質問への回答もしてくれず門前払いだった。
「旗を揚げる」の完全な対義語はありませんが、反対の意味に近い言葉として「白旗を揚げる」があります。
「白旗を揚げる」の読み方は「しろはたをあげる」です。「しらはた」とも読みます。そもそも「白旗」とは、白色無地の旗で、降伏や戦意のないことを示すときなどに用いる旗です。このことから、対戦相手に負けましたと降伏の意を示すことを、「白旗を揚げる」と言うようになりました。
「旗を揚げる」を兵を挙げることや、軍を起こすことを意味しますから、「白旗を揚げる」を、戦意喪失していると言う意味で使う場合、対義語に近い言葉だと言えるでしょう。同じ「旗」でも「白旗」を揚げると、日本語の意味が全く変わってくるのは興味深いですね。
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「旗を揚げる」と「油で揚げる」…。それぞれが全く違う使われ方をしているのに、同じ漢字を使うのは不思議に思えませんか?そもそも「揚げる」にはどんな意味があるのでしょう。
実は、「揚げる」は大変多くの使われ方をします。例えば「下から上にあげる」「盛んになる」「水中から地面へあげる」(魚の水揚げ等)などです。基本的には、何かを下から上へ移動させる動作において使われます。そして、「油で揚げる」に「揚げる」が使われるのはなぜかと言うと…。料理をする方ですと分かると思いますが、何かを油で揚げると、徐々に油の表面に上がってきますね。また、揚がった後は、油の中から上に取り出すでしょう。この様子から、揚げ物などにも「揚げる」を使うのだと考えられています。
全く違う意味にも思えますが、「油で揚げる」のも「旗を揚げる」のも、上にあげると言う同じ意味合いであり、同じ漢字を使うのです。面白いですね。
\次のページで「「旗を揚げる」を使いこなそう」を解説!/
この記事では「旗を揚げる」の意味・使い方・類語などを説明しました。「旗を揚げる」は戦国時代の戦争で、自軍の目印に旗を揚げて戦いに挑んでいたと言う歴史から由来している慣用句でしたね。このように、ことわざや慣用句などの言語は、歴史や文化からの影響を受けたものも少なくありません。語源から知っていく事で、より深く言葉の意味を知り、記憶にも残すことができますから、ネット検索など気軽なものでも良いので、ぜひ調べる癖をつけましょう。