この記事では「慰留」について解説する。

端的に言えば慰留の意味は「辞めようとしている人を止めること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、ロシアで2年間日本語教師として働いた大学院生ライターの「むかいひろき」を呼んです。一緒に「慰留」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間日本語教師として働いた経験を持つ大学院生。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「慰留」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「慰留」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「慰留」の意味は?

「慰留」には、次のような意味があります。

退こうとする人をなだめて、思いとどまらせること。「辞意を表明した会長を―する」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「い‐りゅう〔ヰリウ〕【慰留】」

慰留」は「(仕事などを)辞めようとしている人に対して、なだめて引き留めること」という意味の言葉です。ビジネス場面やスポーツ選手の移籍に関する場面でよく使用されますね。

慰留」は「いりゅう」と読みます。「慰」は「なぐさめる」、「留」は「とどめる」「とどまる」という意味の漢字です。おなじ「いりゅう」と読む熟語に「遺留」がありますが、意味は全く異なるので漢字を間違えないように気をつけましょう。

「慰留」の語源は?

「慰留」の語源や、いつから使われていたかはよく分かっていません。ただ、「慰留」という熟語は、中国から漢字とともに伝わったものではなく、日本で誕生した言葉だということは間違いないそうです。

\次のページで「「慰留」の使い方・例文」を解説!/

「慰留」の使い方・例文

「慰留」の使い方を例文を使って見ていきましょう。

1.辞表を提出したが、上司からしつこく慰留されてしまい、困った。
2.辞意を表明した田中社長に対して、社員たちは慰留を働きかけた
3.FA宣言した鈴木選手に対し、A球団は残留するように必死に慰留交渉したが、結局鈴木選手はB球団に移籍した。
4.西野君が転職を考えているそうだ。彼はわが社になくてはならない人材。どうかみんなで慰留に努めてくれ

例文1は、「上司からしつこく会社を退職しないように説得されてしまい」という意味です。

例文2~4では、「慰留」が様々な言葉とセットで使われています。例文2は「働きかける」とセットで、「辞任しないように働きかけを行った」という意味です。例文3は「交渉」とセットで、「球団に残ってくれるように交渉した」という意味になり、例文4は「努める」とセットで、「辞めないように働きかけてくれ」という意味になります。

他の言葉とセットで使われる場合は、「辞任しないように○○」「辞めないように○○」という意味になることが原則です。

「慰留」の類義語は?違いは?

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「慰留」の類義語は、「引き留める」「思いとどまらせる」があります。意味や違いを見ていきましょう。

その1「引き留める」

引き留める」は「1.引っ張ったり声をかけたりして止まらせる」「2.立ち去ろうとする人をとどまらせる」「3.ある行動に出ようとするのをやめさせる」という意味を持った言葉です。特に2と3の意味では、「慰留」の「(仕事などを)辞めようとしている人に対して、なだめて引き留めること」という意味に近くなります。

この場合の「慰留」と「引き留める」の違いは、1つ目は「なだめる」というニュアンスがないこと。2つ目は、「慰留」が「(主に仕事などを)辞めること」についてのみにしか使用できないのに対し、「引き留める」は「1次会で帰ろうとした人たちを2次会まで引き留めた」「無茶なヒッチハイクに行こうとする息子を引き留めた」のように、他の対象に対しても使用可能な点です。

また、「引き留める」は「引き止める」と書いても間違いではありません。

\次のページで「その2「思いとどまらせる」」を解説!/

その2「思いとどまらせる」

思いとどまらせる」は「しようと思っていたことを止めさせる」という意味の言葉です。「(仕事などを)辞めようとしている人に対して、なだめて引き留めること」という意味の「慰留」と意味が重なる部分がありますね。

「慰留」との違いは、1つ目は「なだめる」というニュアンスがないこと。2つ目は、「慰留」が「(主に仕事などを)辞めること」についてのみにしか使用できないのに対し、「思いとどまらせる」は「子供たちのケンカを思いとどまらせる」「無茶なヒッチハイクに行こうとする息子を思いとどまらせた」のように、他の対象に対しても使用可能な点です。

「慰留」の対義語は?

「慰留」の対義語は「追われる」です。意味などを確認していきましょう。

「追われる」

追われる」にはいくつかの意味がありますが、そのうちの1つに「無理矢理その場所・地位を去らせられる」という意味があります。「慰留」は現在の職場や所属先に留まるように求める言葉であるため、反対の意味を持った言葉であるといえますね。

以下のように使用します。

1.沢辺氏は不祥事により、社長の座を追われた
2.クーデターにより大統領の座を追われたN氏。

「慰留」の英訳は?

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慰留」の意味に近い英単語に「persuade」があります。意味や使い方を確認していきましょう。

「persuade」

persuade」には多くの意味がありますが、「説得して~させる」「説得して~を止めさせる」という意味もあります。この場合、文脈によっては「慰留」に近い意味を表すことが可能です。

「慰留」に近い意味を表す場合も、「なだめる」というニュアンスがない点や、「(主に仕事などを)辞めること」について以外にも使用できる点といった違いがあります。

例文を見てみましょう。

\次のページで「「慰留」を使いこなそう」を解説!/

We persuaded him to stay in the company.

会社に残るようにみんなで彼を慰留した

「慰留」を使いこなそう

この記事では「慰留」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「慰留」は「(仕事などを)辞めようとしている人に対して、なだめて引き留めること」という意味の言葉です。ビジネスの場面では誰かが退職や転職をする時、スポーツの場面では移籍関連でよく使用される言葉ですね。

類義語には「引き留める」「思いとどまらせる」があります。ただ、この2つには「なだめるというニュアンスがない」「(仕事などを)辞める場合以外にも使用できる」という「慰留」にはない特徴があるので、間違えないようにしましょう。

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国語言葉の意味

「慰留」の意味や使い方は?例文や類語を日本語教師の大学院生がわかりやすく解説!

この記事では「慰留」について解説する。

端的に言えば慰留の意味は「辞めようとしている人を止めること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、ロシアで2年間日本語教師として働いた大学院生ライターの「むかいひろき」を呼んです。一緒に「慰留」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間日本語教師として働いた経験を持つ大学院生。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「慰留」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「慰留」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「慰留」の意味は?

「慰留」には、次のような意味があります。

退こうとする人をなだめて、思いとどまらせること。「辞意を表明した会長を―する」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「い‐りゅう〔ヰリウ〕【慰留】」

慰留」は「(仕事などを)辞めようとしている人に対して、なだめて引き留めること」という意味の言葉です。ビジネス場面やスポーツ選手の移籍に関する場面でよく使用されますね。

慰留」は「いりゅう」と読みます。「慰」は「なぐさめる」、「留」は「とどめる」「とどまる」という意味の漢字です。おなじ「いりゅう」と読む熟語に「遺留」がありますが、意味は全く異なるので漢字を間違えないように気をつけましょう。

「慰留」の語源は?

「慰留」の語源や、いつから使われていたかはよく分かっていません。ただ、「慰留」という熟語は、中国から漢字とともに伝わったものではなく、日本で誕生した言葉だということは間違いないそうです。

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