この記事では「金口木舌」について解説する。

端的に言えば金口木舌の意味は「先導者」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

自治体広報紙の編集を8年経験した弘毅を呼んです。一緒に「金口木舌」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/八嶋弘毅

自治体広報紙の編集に8年携わった。正確な語句や慣用句の使い方が求められるため、正しい日本語の使い方には人一倍敏感。

「金口木舌」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「金口木舌」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「金口木舌」の意味は?

「金口木舌」には、次のような意味があります。

すぐれた言論で、世の人を指導する人のたとえ。口が金属で、舌が木で作られた大鈴の意から。▽「木鐸ぼくたく」のこと。古代中国で、官吏が法律や政令などを人民に告げ歩くとき鳴らした。

出典:新明解四字熟語辞典(三省堂)「金口木舌」

1.法令を発布したり、教えを垂れたりするときに振って、聴衆に注意を促す大きな鈴。木鐸

2.転じて、学者が官職について、教えを実行することのたとえ。

出典:上級漢和辞典漢字源改訂第六版(Gakken)「金口木舌」

「金口木舌」の読み方は「きんこうぼくぜつ」あるいは「きんこうもくぜつ」で、木鐸(ぼくたく)のことを言います。木鐸は金属製の覆いの中心に木製の舌と呼ばれる重りを垂らした鐘のことです。お寺の釣り鐘を小さくして、中に重りを吊した形を想像してもらえばいいでしょう。

昔中国では法令を発布する時に木鐸を鳴らして民衆に注意を促しました。この故事から指導的立場にある人物が一般人を指導し導くという意味を持つようになったのです。

「金口木舌」の語源は?

次に「金口木舌」の語源を確認しておきましょう。

「金口木舌」の語は中国前漢時代の学者・揚雄が著した思想書『法言』学行の巻に見ることができます。『法言』は孔子の『論語』に似せてつくられたもので、著者の名を冠して『揚子法言』とも言われるものです。『法言』の中で揚雄は「天之道,不在仲尼乎,  仲尼駕說者也,不在茲儒乎,  如將復駕其說,則莫若使諸儒金口而木舌(孔子の説くところを伝えようとしたら、儒学者たちは自ら金口木舌となる心構えが必要である)」と述べています。

\次のページで「「金口木舌」の使い方・例文」を解説!/

「金口木舌」の使い方・例文

「金口木舌」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.彼は金口木舌として僕たちを指導してくれた。
2.マスメディアは社会の金口木舌として報道するよう注意しなければならない。
3.彼は大人になって会社を興して社長になった。幼い頃から僕らの金口木舌だっただけにやはり指導者の立場に立った。

『金口木舌』という漢字はすべて小学校で習う簡単なものばかりですが、いざ読むとなるとどう読んだらいいのか迷いそうです。なまじ知識のある大人は余計にそうでしょう。しかし素直に「きんこうぼくぜつ」あるいは「きんこうもくぜつ」と読めばいいのです。ちなみに琉球新報のコラム「金口木舌」は「きんこうもくぜつ」と読むと同コラムで説明していました。

「金口木舌」の類義語は?違いは?

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次に「金口木舌」の類義語を見ていきましょう。あなたたちが慣れ親しんだ言葉があります。

その1「木鐸」

「木鐸」は類義語というより、まさに「金口木舌」そのもののことです。古代中国の思想家・孔子と弟子たちの言行録『論語』にその初出が見られます。抜粋すると「儀封人請見。曰、『君子之至於斯也、吾未嘗不得見也』從者見之。出曰、『二三子、何患於喪乎。天下之無道也久矣、天將以夫子爲木鐸』」で意味は「魯国で失脚し、弟子とともに放浪の旅に出た孔子に対し関所の関守が高圧的に会見を望んだ。会見を終えて出てきた関守は、弟子一同を励ますように、先生の天命は社会の木鐸になることにあると語った」ということです。

よく「新聞は社会の木鐸」と言います。つまり、その論調によって社会をリードする立場にあるということです。

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その2「オピニオンリーダー」

「オピニオンリーダー」とは人々の考えに影響を与え、世論を動かす人物のことで「金口木舌」によく似た言葉だと言えるでしょう。元は英語ですが、今では「金口木舌」や「木鐸」より私たちの生活になじんでいますね。

その3「一世木鐸」

「一世木鐸」も「金口木舌」の類義語です。意味は「人々を正しい道に導く指導者」のことですから「金口木舌」と似た言葉と言えるでしょう。新聞の論説委員に敬意をこめて使ったり、時には奮起するために自称する人もいます。

「金口木舌」の対義語は?

「金口木舌」の対義語を考えてみましたがそれらしい語句はありませんでした。「物」としての「金口木舌」は木鐸のことですが、物質に反対の言葉が存在するはずもないのです。それでは「立場や状態」としての「金口木舌」はどうでしょうか。これはあるように思えますが適当な対義語が思い浮かびません。「烏合の衆」が対義語になりそうですが、その意味は「規律や団結力のない人々の寄り集まり」であり、世論を動かす人物の反対語としては少々弱いですね。むしろこうした人たちは世論を動かす人たちになにも考えずに乗ってしまいがちです。

烏合の衆は付和雷同する人たちですから、明確に世論を打ち壊すことはありません。その意味では「革命」という語句が対義語の候補に挙がりそうですが、これもまた「保守」や「継承」がすでに「革命」の対義語として定着しています。「革命」とは「国家・社会を急激に改革すること」ですから、それを成し遂げるためには指導的立場の人物が必要です。そう考えると「革命」は「金口木舌」の対義語にはなり得ず、むしろ「金口木舌」と並列する言葉となります。結論として「金口木舌」の明確な対義語はないということになるでしょう。

「金口木舌」の英訳は?

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最後に「金口木舌」の英訳を見ていきましょう。英訳としては次の単語に集約されると思います。

「opinion leader」

やはり「金口木舌」の英訳としては「opinion leader」が一番ふさわしいのではないでしょうか。もっとも物質としての「金口木舌」なら「bell with wooden clapper 」がありますが、物としての使い道はすでに廃れています。そうなると先に類義語で挙げた「オピニオンリーダー」をそのまま英語にした「opinion leader」が最適でしょう。

\次のページで「「金口木舌」を使いこなそう」を解説!/

「金口木舌」を使いこなそう

この記事では「金口木舌」の意味・使い方・類語などを説明しました。しかしこの少々古めかしくて聞き慣れない言葉を使うシーンはあるでしょうか。普段の友人たちとの会話ではまず使うことはないでしょう。かしこまった会議の席でも「金口木舌」などと言ったらきっと首を傾げられると思います。しかしあなたが知っているだけでもいいのではないでしょうか。それだけ豊かな語彙を身につけられたのですから。

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国語言葉の意味

「金口木舌」の意味や使い方は?元広報紙編集者がわかりやすく解説!

この記事では「金口木舌」について解説する。

端的に言えば金口木舌の意味は「先導者」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

自治体広報紙の編集を8年経験した弘毅を呼んです。一緒に「金口木舌」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/八嶋弘毅

自治体広報紙の編集に8年携わった。正確な語句や慣用句の使い方が求められるため、正しい日本語の使い方には人一倍敏感。

「金口木舌」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「金口木舌」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「金口木舌」の意味は?

「金口木舌」には、次のような意味があります。

すぐれた言論で、世の人を指導する人のたとえ。口が金属で、舌が木で作られた大鈴の意から。▽「木鐸ぼくたく」のこと。古代中国で、官吏が法律や政令などを人民に告げ歩くとき鳴らした。

出典:新明解四字熟語辞典(三省堂)「金口木舌」

1.法令を発布したり、教えを垂れたりするときに振って、聴衆に注意を促す大きな鈴。木鐸

2.転じて、学者が官職について、教えを実行することのたとえ。

出典:上級漢和辞典漢字源改訂第六版(Gakken)「金口木舌」

「金口木舌」の読み方は「きんこうぼくぜつ」あるいは「きんこうもくぜつ」で、木鐸(ぼくたく)のことを言います。木鐸は金属製の覆いの中心に木製の舌と呼ばれる重りを垂らした鐘のことです。お寺の釣り鐘を小さくして、中に重りを吊した形を想像してもらえばいいでしょう。

昔中国では法令を発布する時に木鐸を鳴らして民衆に注意を促しました。この故事から指導的立場にある人物が一般人を指導し導くという意味を持つようになったのです。

「金口木舌」の語源は?

次に「金口木舌」の語源を確認しておきましょう。

「金口木舌」の語は中国前漢時代の学者・揚雄が著した思想書『法言』学行の巻に見ることができます。『法言』は孔子の『論語』に似せてつくられたもので、著者の名を冠して『揚子法言』とも言われるものです。『法言』の中で揚雄は「天之道,不在仲尼乎,  仲尼駕說者也,不在茲儒乎,  如將復駕其說,則莫若使諸儒金口而木舌(孔子の説くところを伝えようとしたら、儒学者たちは自ら金口木舌となる心構えが必要である)」と述べています。

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