この記事では、「端緒」について解説する。

あまり聞き慣れないかもしれないが、「端緒」は物事の始まりに関連する言葉です。なにをはじめるにもとても重要な概念を含蓄しているから、この記事ではそのあたりにも触れてもらおうか。

今回は大学の卒論を推敲されたとき、「研究の『端緒』は…」と加筆されて「端緒」を知ったライターのぷーやんを呼んです。経験から得た知見も含めて「端緒」の意味を解説してもらおうか。

ライター/ぷーやん

webライター歴6年。鍛えられた語彙と文章力は本業でも発揮され、社内ルールの書き換え担当に。まっさらな状態からなにかを始めることが苦手で、なにかにつけ「端緒」を求める日々を過ごしている。

「端緒」の意味を読み方から解説!

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普段の生活ではあまりみかけない言葉「端緒」。読み方は「たんしょ」です。本来の読み方とは違うものの、一般に広く浸透した読み方を「慣用読み」といいますが、「端緒」は慣用読みで「たんちょ」とも。筆者の大学時代の指導教官は「たんちょ」と読んでいました。さて、そんな「端緒」について、まずは辞典での意味をみていきましょう。

辞典にみる「端緒」

「端緒」は、辞典で次のように書かれています。

《慣用読みで「たんちょ」とも》物事の始まり。いとぐち。手がかり。「―を開く」
出典:デジタル大辞泉(小学館) 「端緒」

「端」は「はしっこ」、「緒」は「糸のはしっこ」を意味する漢字です。同じ意味の2つの漢字が合わさってできた「端緒」は、文字通り物事のはじまりをあらわします。もっとも、ただのはしっこを指すだけではなく、辞典にもある通り「手がかり」や「糸口」という意味合いもあることに注目してください。

「端緒」は得るもの?つけるもの?

「端緒」をつかった言い回しにはいくつかのパターンがあります。よく聞くのは、「端緒を得る」「端緒をつかむ」「端緒を開く」などでしょう。いずれも物事をはじめたり、紐解いたりするきっかけを見つけたことを表現しています。

「端緒を切る」や「端緒につく」という言い方もときどき耳にしますが、厳密にはこうした表現はありません。それぞれを正しく言い表すと、「口火を切る」「緒につく」です。

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「端緒」を使いこなすための例文をご紹介!

「端緒」の意味と使い方の定型をみたところで、次に例文で言葉のイメージを具体化していきましょう。

1.この研究の結果は非常に有意義だ。次世代を担う人たちはこの研究報告に残された課題を見出し、自身の研究の端緒をつかむことになるだろう。
2.1929年に始まった世界恐慌を端緒に、ドイツ・日本・イタリアは国外侵略という誤った至上命題を設定し、第2次世界大戦へと発展していった。
3.同じ専門分野を持つ者同士の会話だけでは、新たな発見はなかなか生まれない。他分野の人との懇談から思いがけない指摘を受けることで、化学反応の触媒のように目覚ましい発展の端緒を得ることもある。

1.の例は科学が発展していくパターンですね。論文を読むことは、自身の研究テーマの端緒をつかむ手段のひとつです。2.は言わずと知れた流れですが、決して繰り返されてはならないこと。3.の例は意外に思われるかもしれませんね。自分の専門分野についてあまり知らない人からの意見は、ときに目からうろこが落ちるような新鮮な閃きをもたらします。

「端緒」の類義語3選

言葉をきちんと使いこなすには、往々にして類義語や対義語も知っておいたほうがいいもの。まずは類義語からみていきましょう。なおここで示す類義語は、いずれも「端緒」の意味の一部を持つものです。

「手がかり」:物事の展開の助けとなるもの

刑事ドラマなどで「事件解決の手がかり」などという形でよく聞く言葉ですね。壁などを「よじ登るときに手をかける箇所」から転じて、「展開の助け」という意味に。

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「呼び水」: 事柄を引き起こすきっかけ

ポンプの中の空洞を満たす水のこと。呼び水を入れてポンプを回すことで、連鎖的に水を吸い揚げられるようになります。

「発端」:物事のはじまり

「発端」は手がかりやヒントの意味を持ちません。単純に「はじまり」をあらわす言葉です。

「端緒」に対義語はある?

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「端緒」の明確な対義語は示されていませんが、「はじまり」と「手がかり」の2つの意味におぼろげながら反する言葉をご紹介します。

「手探り」:確実な方法がない状態

「手探りで進む」というような使い方をするように、手がかりを探している状態の表現方法です。「『端緒』がない」ということですね。

「五里霧中」:物事をきめられない状態

深い霧の中で方向もわからず、途方に暮れている状態を表現する言葉です。こちらもやはり「『端緒』がない」ことに困っているということ。

\次のページで「端緒を得ることの大切さ」を解説!/

端緒を得ることの大切さ

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桜木先生から「起爆剤」という言葉が出ましたが、これが端緒の重要なポイントと言えそうです。やや概念的ですが、この記事の最後に「端緒を得る」ことのもつ意義を、例え話をまじえて補足します。

ロッククライミングは端緒探し?

ごつごつした岩肌を手と足を器用に動かして登っていくロッククライミング。ときに90°の断崖や、オーバーハングした箇所でさえ登って行ってしまう姿は圧巻ですね。

クライマーは岩肌を登るとき、指やつま先が引っかかる箇所を常に探しています。クライミングは手がかり(手がかかる箇所)を探し、そこを起点にして次の手がかりを探す…ということの繰り返し。「端緒を得る」ことは、ロッククライミングの手がかり探しと似ています

端緒の意義

五里霧中をゴールまで進み続けるのは困難であることは、簡単に想像できますね。もしも方向を間違えて進み続けてしまえば、逆にゴールから遠ざかることにもなります。

「端緒を得る」ということは、結果論的にはゴールへの道筋がある程度見えるようになること。あるいは目標がおぼろげだとしても、端緒をつかんであれこれ活動することは、自身の成長につながるでしょう。大切なこととして、端緒はなにもせず漫然と過ごしていてはやってきません。「あれをやってみたい」「これを解決したい」という自分の意志が必要です。

幅広い視点と好奇心で端緒をゲット!

例文3.でご紹介したように異分野の人との交流は、思わぬ端緒をもたらすもの。自分の世界に凝り固まらずに、年を重ねても子どものような好奇心を持ち続けたいものです。

それだけでなく、なにか問題を解決する端緒を得たい場合には、問題の背景まで見通すことと、他人の主張に耳を傾けることがとても大切。自分の考えや目先の出来事だけに捉われていては、本質的な解決など望めないことがほとんど。俯瞰的な視野と旺盛な好奇心が、端緒を得ることを促進します。

端緒に気づけるかは自分次第

この記事では「端緒」について、言葉としての意味と生活や人生においての意義をご紹介しました。

「端緒を得られた」というのは、えてして後から振り返ったときに気づくものです。なぜなら現時点が物事のはじまりかどうかは、終わってみないとわからないから。そう考えると起爆剤となる端緒がどこに転がっているかを、今、判断することはなかなか難しいように感じられます。だからこそ日々の出来事とそれに対する自分の対応は、ひとつずつ大切にして、ときに振り返っていきたいものですね。

この記事がみなさまにとって、なにかしらの端緒になれば幸いです。

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国語言葉の意味

「端緒につく」は誤用?「端緒」の意味を類義語・対義語・例文でwebライターがわかりやすく解説!

この記事では、「端緒」について解説する。

あまり聞き慣れないかもしれないが、「端緒」は物事の始まりに関連する言葉です。なにをはじめるにもとても重要な概念を含蓄しているから、この記事ではそのあたりにも触れてもらおうか。

今回は大学の卒論を推敲されたとき、「研究の『端緒』は…」と加筆されて「端緒」を知ったライターのぷーやんを呼んです。経験から得た知見も含めて「端緒」の意味を解説してもらおうか。

ライター/ぷーやん

webライター歴6年。鍛えられた語彙と文章力は本業でも発揮され、社内ルールの書き換え担当に。まっさらな状態からなにかを始めることが苦手で、なにかにつけ「端緒」を求める日々を過ごしている。

「端緒」の意味を読み方から解説!

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普段の生活ではあまりみかけない言葉「端緒」。読み方は「たんしょ」です。本来の読み方とは違うものの、一般に広く浸透した読み方を「慣用読み」といいますが、「端緒」は慣用読みで「たんちょ」とも。筆者の大学時代の指導教官は「たんちょ」と読んでいました。さて、そんな「端緒」について、まずは辞典での意味をみていきましょう。

辞典にみる「端緒」

「端緒」は、辞典で次のように書かれています。

《慣用読みで「たんちょ」とも》物事の始まり。いとぐち。手がかり。「―を開く」
出典:デジタル大辞泉(小学館) 「端緒」

「端」は「はしっこ」、「緒」は「糸のはしっこ」を意味する漢字です。同じ意味の2つの漢字が合わさってできた「端緒」は、文字通り物事のはじまりをあらわします。もっとも、ただのはしっこを指すだけではなく、辞典にもある通り「手がかり」や「糸口」という意味合いもあることに注目してください。

「端緒」は得るもの?つけるもの?

「端緒」をつかった言い回しにはいくつかのパターンがあります。よく聞くのは、「端緒を得る」「端緒をつかむ」「端緒を開く」などでしょう。いずれも物事をはじめたり、紐解いたりするきっかけを見つけたことを表現しています。

「端緒を切る」や「端緒につく」という言い方もときどき耳にしますが、厳密にはこうした表現はありません。それぞれを正しく言い表すと、「口火を切る」「緒につく」です。

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