この記事では「いそいそ」について解説する。
端的に言えば「いそいそ」の意味は「うれしくて動作にはずみがついているさま」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「いそいそ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

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仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「いそいそ」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「いそいそ」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「いそいそ」の意味は?

「いそいそ」には、次のような意味があります。

〘副〙 (「と」を伴う場合が多い)

① 心が進み、勇むさま。

※念仏行者訓条(1212頃)「人の心ざまは、いたく目もなれ耳もなれぬれば、いそいそとすすむ心もなく」

※浄瑠璃・栬狩剣本地(1714)一「少いそいそ遊ばせ」

② 心づかいのゆきとどいているさま。

※洒落本・交代盤栄記(1754)「松風〈略〉心ばへいそいそとして一座に興あり」

③ 嬉しさに心をはずませて動作をするさま。

※人情本・花筐(1841)初「母子はいそいそ酒盛の、道具をとり出すその折から」

出典:コトバンク

「いそいそ」は喜びや期待感で行動に勢いがある様子を表す擬態語。「姉はいそいそとデートに出かけて行った」では「と」が付いて述語にかかる修飾語になりますし、「やけにいそいそしてるね。何かいいことあったの?」では「…としている」がついて状態を表す述語になります。前者の例文は将来に好ましいことが到来するため、後者の例文は喜ばしいことがあったため、弾んだ気持ちが行動に表れている様子を表していますよ。また、主体の喜び・期待感と落ち着きのなさが暗示されています

「いそいそ」の語源は?

次に「いそいそ」の語源を確認しておきましょう。「いそいそ」の語源は「い爲を」です。読み方は「いしを」。「爲」は「為」の古い字で「為」は「爲」を略した形です。それでは「為」の漢字の成り立ちについて説明しますね。「為」は手を表す文字と、形や様子の意味の音を示す文字とを合わせた字です。手振りを真似する、ふりをふることから「おこなう」「する」意味を表しますよ。

\次のページで「「いそいそ」の使い方・例文」を解説!/

「いそいそ」の使い方・例文

「いそいそ」の使い方について例文を挙げて解説していきます。この言葉は、たとえば以下のように用いられますよ。

1.祖母からお小遣いをもらったので、孫はいそいそと買い物に出かけた。以前から買うつもりでいた国語辞典と語彙力を強化するための辞書、それに趣味の読書の小説などを購入した。

2.彼女はバーゲン会場へいそいそと出かけて行った。

3.買ってきた洋服や靴をいそいそと箱から取り出す。

「いそいそ」は「うきうき」や「るんるん」に似ていますが、「うきうき」は現在の喜びや将来の好ましいことへの期待などで心が弾んで落ち着かないでいる心理や、そういう気分の感じられる状態を表し、快感の暗示がありますよ。また「るんるん」は主体が上機嫌で身も心も弾んでいる様子を表します。

「いそいそ」の類義語は?違いは?

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「いそいそ」と似たような意味をもつ言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「るんるん」

「るんるん」は上機嫌で心理的に弾んでいる様子を表す擬態語。「妹はるんるんとデートに出掛けて行った」では「と」が付いて述語にかかる修飾語になりますし、「宝くじが当たってるんるんよ」では「(だ)よ」が付いて述語になります。「るんるん気分」などは名詞形。また、主体が上機嫌で身も心も弾んでいる様子を表し、快感の暗示があります。「いそいそ」との違いは上機嫌で身も心も弾んでいる様子を表すという点でしょう。

\次のページで「その2「らんらん」」を解説!/

その2「らんらん」

「雨雨降れ降れ、母さんが蛇の目でお迎えうれしいな。ぴちぴち、ちゃぷちゃぷ、らんらんらん」と、動揺にも用いられている表現「らんらん」は軽く弾むメロディーを口ずさむ音を表します。「らんらん」は実際の音声を描写する用法で用いますよ。しばしば体も声と共に弾んでいるニュアンスで、上機嫌と快感の暗示があります。「いそいそ」との違いは主体が上機嫌で身も心も弾んでいる様子を表している表現だという点でしょう。

「いそいそ」の対義語は?

「いそいそ」と反対の意味を持つ言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「しくしく」

「しくしく」は鼻を鳴らしながら声を立てずに泣く様子を表し、単独で述語にかかる修飾語になりますよ。また、主体はふつう子供で、うつむいて声を立てずに泣く様子が見る者に訴えかける暗示を伴います。「しくしく」は「さめざめ」に似ていますが、「さめざめ」は主体が主に大人で、情けなさ、無念さ、やりきれなさなどの暗示を伴いますよ。ちなみに「めそめそ」は主体が精神的に弱いためにすぐに涙ぐみ声を出さずに泣き続ける様子を表し、主体の意気地なさと話者の慨嘆の暗示を伴います。

その2「めそめそ」

「めそめそ」は声を出さずに泣き続ける様子を表す表現。「おふくろは涙もろくなってすぐめそめそ始める」では「と」が付いて述語にかかる修飾語になりますし、「男のくせにめそめそするな」では「…する」が付いて述語になります。また「葬式といっても百歳で大往生だから、遺族もめそめそした様子はない」では「…した」がついて名詞にかかる修飾語になりますよ。主体が精神的に弱いためにすぐに涙ぐみ、声を出さずに泣き続ける様子を表し、主体の意気地なさと話者の慨嘆の暗示があります。ちなみに「めそめそ」は「しくしく」に似ていますが、「しくしく」は主体が鼻を鳴らしながら声を立てずに泣く様子が見える者に訴えかける暗示があり、主体は主に子供です。

「いそいそ」の英訳は?

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「いそいそ」の英訳にはどのようなものがあるのでしょうか。英語で「いそいそ」と言い表す時の例をさっそく見ていきましょう。

「jubilantly」

「jubilantly」は「歓喜に満ちた、いそいそと」という意味です。「My grandson is coming today, so my husband has been jubilantly since the morning」で「今日は孫が来るので夫は朝からうきうきしています」、「My brother went to her house in a joyously」で「私の兄はいそいそと彼女の家に遊びに行きました」となりますよ。

\次のページで「「いそいそ」を使いこなそう」を解説!/

「いそいそ」を使いこなそう

この記事では「いそいそ」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「いそいそ」は喜びや期待感で行動に勢いがある様子を表す表現であり、主体の喜びや期待感と落ち着きのなさが暗示されていましたね。「夫は朝からいそいそとしている」からはうれしそうに身支度を整えている様子が、「妻は朝からうきうきとしている」からは鼻歌などを口ずさみながら朝ごはんの準備をしている様子が、「娘は朝からるんるんとしている」からは笑ったり冗談を言い合ったりしている様子がそれぞれ想像できるでしょう。このように「いそいそ」は「うきうき」「るんるん」と同様にプラスイメージの表現ですよ。

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国語言葉の意味

「いそいそ」の意味や使い方は?例文や類語をプロダクション編集者がわかりやすく解説!

この記事では「いそいそ」について解説する。
端的に言えば「いそいそ」の意味は「うれしくて動作にはずみがついているさま」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「いそいそ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/flicker

仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「いそいそ」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「いそいそ」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「いそいそ」の意味は?

「いそいそ」には、次のような意味があります。

〘副〙 (「と」を伴う場合が多い)

① 心が進み、勇むさま。

※念仏行者訓条(1212頃)「人の心ざまは、いたく目もなれ耳もなれぬれば、いそいそとすすむ心もなく」

※浄瑠璃・栬狩剣本地(1714)一「少いそいそ遊ばせ」

② 心づかいのゆきとどいているさま。

※洒落本・交代盤栄記(1754)「松風〈略〉心ばへいそいそとして一座に興あり」

③ 嬉しさに心をはずませて動作をするさま。

※人情本・花筐(1841)初「母子はいそいそ酒盛の、道具をとり出すその折から」

出典:コトバンク

「いそいそ」は喜びや期待感で行動に勢いがある様子を表す擬態語。「姉はいそいそとデートに出かけて行った」では「と」が付いて述語にかかる修飾語になりますし、「やけにいそいそしてるね。何かいいことあったの?」では「…としている」がついて状態を表す述語になります。前者の例文は将来に好ましいことが到来するため、後者の例文は喜ばしいことがあったため、弾んだ気持ちが行動に表れている様子を表していますよ。また、主体の喜び・期待感と落ち着きのなさが暗示されています

「いそいそ」の語源は?

次に「いそいそ」の語源を確認しておきましょう。「いそいそ」の語源は「い爲を」です。読み方は「いしを」。「爲」は「為」の古い字で「為」は「爲」を略した形です。それでは「為」の漢字の成り立ちについて説明しますね。「為」は手を表す文字と、形や様子の意味の音を示す文字とを合わせた字です。手振りを真似する、ふりをふることから「おこなう」「する」意味を表しますよ。

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