この記事では「衒い」について解説する。

端的に言えば衒いの意味は「みせびらかすこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元高校国語科教員のminを呼んです。一緒に「衒い」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/min

高等学校の国語科教員として、授業や受験対策、小論文の講座を3年間経験。主に現代文を担当し、言葉に関する指導を幅広く経験してきた。現在はWebライターを目指して勉強中。

「衒い」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「衒い」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「衒い」の意味は?

「衒い」には、次のような意味があります。

衒い(てらい)とは、「自分の才能や知識を見せびらかすこと」もしくは「才能が知識があるようにふるまうこと」を意味する表現。動詞「衒う(てらう)」の連用形が名詞化した語。要するに「衒うこと」。

「衒気」とも言う。衒気は「衒い」の同義語といえる。得意げに見せびらかすという意味では「ひけらかし」なども「衒い」の同義語に該当する。

「衒い」は「衒いのない性格」「衒いのなさ」といった言い回しで用いられることが多い。「衒いのない」性格とは、つまり「才能などをひけらかさない素直な」性格である。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

衒い」は「てらい」と読み、「衒う」という動詞の名詞形です。「才能や学識をひけらかすこと」、もしくは「いかにも才能があるように見せかける様子」を意味します。

あまり聞き馴染みのない言葉かもしれませんが、「奇を衒う」という表現であればどうでしょうか。「奇を衒う」は「わざと普通と違っていることをして人の注意を引こうとする」という意味で、「衒う」という言葉とセットで使われる頻度の高い言葉です。

「衒い」の語源は?

より深く理解するために「衒い」の語源を確認してみましょう。

もともと「」という漢字には、「自分を見せびらかす、才能を世間に自己宣伝する」だけではなく「歩きながら物を売る」という意味があります。

漢字の成り立ちを知るとわかりやすいです。「衒」は真ん中の「」、それを挟んだ「」に分けることができ「玄」は「眩」に通じ、「目を眩(くら)ませる」を意味します。そのため「衒」はもともと「人の目をごまかし、商品を実質以上にほめて売り歩くこと」という表現でした。

そこから、何かを実質以上に「見せびらかす」「ひけらかす」「誇示する」という意味を持つようになったのです。

\次のページで「「衒い」の使い方・例文」を解説!/

「衒い」の使い方・例文

「衒い」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.衒いを含んだ自慢げな発言や態度は、慎みたいと常々考えている。
2.彼女の衒いのない性格は、とても魅力的だ。
3.自分の学識を実力以上に衒いすぎる彼の態度は鼻につく。

「見せびらかす」「良いようにみせかける」という意味である「衒い」ですので、基本的には良い意味で用いられることは少ないでしょう。

誉め言葉として用いる場合は、2のような「衒いのない」など、「衒い」を否定する言葉とセットで使いましょう。すると「衒いがない」=「謙虚、素直、正直」と相手を評価することができます。

相手を褒めたいときにくれぐれも「君は衒いのある性格だね」なんて言い間違いだけはしないようにしたいところですね。

「衒い」の類義語は?違いは?

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「衒い」は同じような意味を持つ言葉や、同じ漢字を用いた類義語が多く存在しています。ニュアンスの違いも含めて、一緒に見ていきましょう。

その1「虚勢を張る」

「衒い」と似た言葉で挙げられるのが「虚勢を張る」です。

「虚(むな)しい」は中身がないことを意味します。つまり「虚勢を張る」は「自分の弱いところや中身のないことを隠し、外見だけ勢いのあるふりをする」という意味です。

「いかにも才能があるようにふるまう」という「衒い」の意味と共通していますね。注意点として、「ないもの」を「あるように」見せかけるというのが「虚勢を張ること」ですので「衒い」のもう一つの意味である「見せびらかす」という意味とは違いがあるので、混同しないようにしましょう。

\次のページで「その2「見栄(みえ)を張る」」を解説!/

その2「見栄(みえ)を張る」

こちらも「衒い」と意味の似た表現として挙げられます。

「見栄を張る」「見栄っ張り」「見栄張り」というのは「よく見せようと外見を繕うこと」です。「衒い」「虚勢を張る」のように、「ないもの」を「あるように」見せかける場合に使える表現ですね。

また、場面によっては、外見を取り繕う意味で、他人に何かを見せびらかしたり、誇示したりすることもあるかもしれません。そんな場合には「衒い」のもう一つの意味と「見栄を張る」を置き換えることも可能でしょう。

その3「衒学的(げんがくてき)」

最後に紹介するのは「衒い」と共通した漢字を含む、「衒学的」という言葉です。読み方や意味が入試問題で問われることがあります。

意味は、「衒い」の中でも「学識に関して」限定的に使用される表現で、「学識のあることをひけらかすさま」という意味です。この機会に「衒い」とセットで覚えておきましょう。

「衒い」の対義語は?

「衒い」は「見せびらかす」「誇示する」「才能があるようにふるまう」という意味ですので、それとは対になるような、人の性質を表す表現である「謙虚」「素直」「正直」が対義語として挙げられます。

また、「衒いのない性格」と表現すれば、対義語の3つと同じ意味で表現することも可能です。

「衒い」の英訳は?

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「衒い」は一見難しい日本語で、対応する英単語を探そうとするとなかなか見つからないかもしれません。しかし、同じ意味である「見せびらかす」「誇示する」という別の日本語に置き換えてみるとわかりやすくなります。

「衒い」は英語で「show off」

「衒い」を「見せびらかす」「誇示する」という日本語に言い換えて考えてみましょう。「見せびらかす」は「show off」「make a display of」といった表現が可能です。こうした英文を訳す際に、「衒う」という言葉で和訳してみるのもいいかも知れません。

こちらの表現を使った例文を挙げていますので、ぜひチェックしてみてください。

He never show off his learning.
彼は学識を衒うことは決してしない。

Don't make a display of being unusual in such a situation.
そのような場面で奇を衒うことはするな。

\次のページで「「衒い」を使いこなそう」を解説!/

「衒い」を使いこなそう

この記事では「衒い」の意味・適切な使い方・類語などを説明しました。

「衒い」は少し難しい表現で、同じ意味でより馴染みのある言葉も多く存在しますよね。「わざわざこんな言葉使わなくても」と思うこともあるかもしれません。

しかし、何かひとつのことを言葉で表すとき、自分の中に引き出しが多ければ多いほど、より豊かな表現ができたり、いつもと違う言葉を使ってみることで普段と違うリズムが生まれたりすることもあります。

その第一歩として、周りの人の謙虚な一面を目にすることがあれば、この「衒い」という言葉を使って、一声をかけてみるのはいかがでしょうか。

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国語言葉の意味

「衒い」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「衒い」について解説する。

端的に言えば衒いの意味は「みせびらかすこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元高校国語科教員のminを呼んです。一緒に「衒い」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/min

高等学校の国語科教員として、授業や受験対策、小論文の講座を3年間経験。主に現代文を担当し、言葉に関する指導を幅広く経験してきた。現在はWebライターを目指して勉強中。

「衒い」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「衒い」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「衒い」の意味は?

「衒い」には、次のような意味があります。

衒い(てらい)とは、「自分の才能や知識を見せびらかすこと」もしくは「才能が知識があるようにふるまうこと」を意味する表現。動詞「衒う(てらう)」の連用形が名詞化した語。要するに「衒うこと」。

「衒気」とも言う。衒気は「衒い」の同義語といえる。得意げに見せびらかすという意味では「ひけらかし」なども「衒い」の同義語に該当する。

「衒い」は「衒いのない性格」「衒いのなさ」といった言い回しで用いられることが多い。「衒いのない」性格とは、つまり「才能などをひけらかさない素直な」性格である。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

衒い」は「てらい」と読み、「衒う」という動詞の名詞形です。「才能や学識をひけらかすこと」、もしくは「いかにも才能があるように見せかける様子」を意味します。

あまり聞き馴染みのない言葉かもしれませんが、「奇を衒う」という表現であればどうでしょうか。「奇を衒う」は「わざと普通と違っていることをして人の注意を引こうとする」という意味で、「衒う」という言葉とセットで使われる頻度の高い言葉です。

「衒い」の語源は?

より深く理解するために「衒い」の語源を確認してみましょう。

もともと「」という漢字には、「自分を見せびらかす、才能を世間に自己宣伝する」だけではなく「歩きながら物を売る」という意味があります。

漢字の成り立ちを知るとわかりやすいです。「衒」は真ん中の「」、それを挟んだ「」に分けることができ「玄」は「眩」に通じ、「目を眩(くら)ませる」を意味します。そのため「衒」はもともと「人の目をごまかし、商品を実質以上にほめて売り歩くこと」という表現でした。

そこから、何かを実質以上に「見せびらかす」「ひけらかす」「誇示する」という意味を持つようになったのです。

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