この記事では「腐心」について解説する。

端的に言えば腐心の意味は「心を悩ますこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元高校国語科教員のminを呼んです。一緒に「腐心」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/min

高等学校の国語科教員として、授業や受験対策、小論文の講座を3年間経験。主に現代文を担当し、言葉に関する指導を幅広く経験してきた。現在はWebライターを目指して勉強中。

「腐心」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「腐心」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「腐心」の意味は?

「腐心」には、次のような意味があります。

[名](スル)ある事を成し遂げようと心をくだくこと。苦心。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

「腐心」は「ふしん」と読み、簡潔に説明すると、「心を悩ますこと」となりますが、どの辞書にも共通して「あることを成し遂げる・実現するために」という前提が添えられています。

目標を達成したり、何かで成功を収めたりするのには苦労がつきものです。「腐心」はそんな場面での悩ましい気持ちを表現する表現であることを、まずは覚えておきましょう。

「腐心」の語源は?

より詳しく理解するために「腐心」の熟語を構成する漢字について解説します。

」という漢字から連想するのはもちろん「くさる」ですよね。しかしその他にも「悩ませる」という意味を持っています。「腐心」の場合は後者が元となって「悩める心」という意味になるのです。「腐った心」と勘違いして「ふてくされる」「生意気」「道徳心がない」などと誤用されるパターンが多いので注意するようにしましょう。

ちなみに「」という漢字の成り立ちですが、「」と「」の上下に分けることで見えてきます。「府」という漢字はもともと、倉庫や倉を表す表現でした。つまり「腐」は、そんな倉庫にしまわれた肉は腐ってしまいがち、というところから「くさる」という意味を持つようになったと言われています。

\次のページで「「腐心」の使い方・例文」を解説!/

「腐心」の使い方・例文

「腐心」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.行き詰まってしまった事業の再建に腐心する。
2.我が社の社長は、会社の経営に日夜腐心しているようだ。
3.難しい問題に腐心し続けることが、成長に繋がると信じたい。

最初に紹介したように、「腐心」には「あることを実現するために」という前提が存在します。例文においては「事業の再建」「会社経営」「困難な問題」など、解決したいことや成功させたいことがセットで用いられていますね。

このような場面で「腐心」という表現が使用できますので、理解しておきましょう。

「腐心」の類義語は?違いは?

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簡潔に言うと、腐心は「心を悩ませること」という意味になりますので、類義語も多く存在していますが、その中から、よく耳にするものやこの際に覚えておきたい関連語などを紹介していきます。

その1「苦心」

ほとんどの辞書で「腐心」の説明の中にこの「苦心」という表現が含まれています。それくらい、「苦心」は「腐心」と同じニュアンスで「心を悩ませること」という意味で使うことができる表現です。「腐心」とほぼ同義で置き換えられますので、「苦心」にも「実現・成功のために」という前提が含まれます。

この2語の使い分け方としては、「規模の大きさ」が挙げられ、よりかかる時間やコストなどの規模が大きく、解決が難しい場合は「腐心」が用いられる場合が多いです。しかし「規模が大きいかどうか」の判断は人それぞれになるので、この違いは少し念頭に置く程度で問題ないでしょう。

\次のページで「その2「苦慮」」を解説!/

その2「苦慮」

「腐心」「苦心」とよく似た表現に「苦慮」というものも存在します。辞書的な意味では「苦心してあれこれ考えを巡らせること」と定義されますので、ほぼ同義であると言ってよいでしょう。

ニュアンスの違いとしては、「」という漢字に注目すると見えてきます。この「慮」は「配慮」「遠慮」という熟語でも用いられ、「思いを巡らせる」「深く考える」という意味を持った漢字です。「最適な答えを出すためにあらゆる可能性に頭を巡らせ悩んでる」など、より具体的に「考え悩んでいる」場面に適しています。

そのため、漠然と悩んだり、苦労したりしているときは「腐心」「苦心」、具体的な課題解決のために考えを巡らせているときは「苦慮」というように使い分けるのが最適です。

その3「鏤骨(るこつ)」

最後に紹介したいのが、この「鏤骨」という言葉です。

あまり馴染みのない表現かもしれませんが、「鏤骨」は「詩や文章などの芸術品を苦心して作成すること」を意味します。つまり、芸術的な物事の完成・達成に向けて「心を悩ませる」場合には、「腐心」よりも「鏤骨」という表現がぴったりということですね。

普段耳にする場面は少ないかもしれませんが、ワンランク上の語彙力強化に向けてこの機会にぜひ覚えておきましょう。

「腐心」の対義語は?

「心を悩ませる」という意味の「腐心」ですので、対義語は悩みがない状態を示す言葉が当てはまります。

「腐心」の対義語は「安楽」

「心身に苦痛がなく、楽々としていること」を示す「安楽」が、「腐心」の対義語としてふさわしいでしょう。さらに「安楽」と同じ意味の言葉で言えば「気楽」なども挙げられます。「腐心」と合わせ、ぜひ覚えておきたい表現です。

「腐心」の英訳は?

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「腐心」を直接的に表現する英単語はありませんが、「困難を抱えている」と言い換えて「take great pains」や「take great deal of trouble」などと表現することが可能です。

以下に例文を挙げていますので、チェックしてみてください。

She is taking great pains over her son's educations.
彼女は息子の教育に腐心している。

My boss is taking a great deal of trouble for our new project.
上司は我々の新しい事業のために腐心している。

\次のページで「「腐心」を使いこなそう」を解説!/

「腐心」を使いこなそう

この記事では「腐心」の意味・使い方・類義語などを説明しました。

「腐った心」と解釈して、「ふてくされる」などの意味だと勘違いしていた人も多いのではないでしょうか。本来の意味は「問題解決や目標達成のために頭を抱える・苦労する」ということでしたね。つまり、「腐心」はむしろ非常に前向きな未来をはらんだ言葉であると言えるのではないでしょうか。

とはいえ、何かを成し遂げたいと強く思うほど「本当に心が腐ってしまいそうなほど悩む…」ということもありますよね。それだけ多くの時間をかけて「腐心」した分だけ、いい結果が返ってくることを祈りたいです。

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国語言葉の意味

「腐心」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「腐心」について解説する。

端的に言えば腐心の意味は「心を悩ますこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元高校国語科教員のminを呼んです。一緒に「腐心」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/min

高等学校の国語科教員として、授業や受験対策、小論文の講座を3年間経験。主に現代文を担当し、言葉に関する指導を幅広く経験してきた。現在はWebライターを目指して勉強中。

「腐心」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「腐心」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「腐心」の意味は?

「腐心」には、次のような意味があります。

[名](スル)ある事を成し遂げようと心をくだくこと。苦心。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

「腐心」は「ふしん」と読み、簡潔に説明すると、「心を悩ますこと」となりますが、どの辞書にも共通して「あることを成し遂げる・実現するために」という前提が添えられています。

目標を達成したり、何かで成功を収めたりするのには苦労がつきものです。「腐心」はそんな場面での悩ましい気持ちを表現する表現であることを、まずは覚えておきましょう。

「腐心」の語源は?

より詳しく理解するために「腐心」の熟語を構成する漢字について解説します。

」という漢字から連想するのはもちろん「くさる」ですよね。しかしその他にも「悩ませる」という意味を持っています。「腐心」の場合は後者が元となって「悩める心」という意味になるのです。「腐った心」と勘違いして「ふてくされる」「生意気」「道徳心がない」などと誤用されるパターンが多いので注意するようにしましょう。

ちなみに「」という漢字の成り立ちですが、「」と「」の上下に分けることで見えてきます。「府」という漢字はもともと、倉庫や倉を表す表現でした。つまり「腐」は、そんな倉庫にしまわれた肉は腐ってしまいがち、というところから「くさる」という意味を持つようになったと言われています。

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