この記事では「のうのうと」について解説する。
端的に言えば「のうのうと」の意味は「心配や気兼ねをしないでのんびりしているさま」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「のうのうと」の意味や例文、類語などを見ていきます。

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仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「のうのうと」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「のうのうと」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「のうのうと」の意味は?

「のうのうと」には、次のような意味があります。

〘副〙 (多く「と」を伴って用いる) 束縛から解放され、気分がゆったりとしているさまを表わす語。のびのび。

※雑俳・柳多留‐八(1773)「四日目はのふのふとするかんぶつ屋」

〘感動〙 (感動詞「のう」を重ねた形)

① 呼びかけのことば。もしもし。

※とはずがたり(14C前)一「『御心地は何事ぞ。ここなる物御覧ぜよ。なうなう』と枕の障子を叩く」

② 軽い感動の気持を表わすことば。ああ。

※虎寛本狂言・末広がり(室町末‐近世初)「なうなう、うれしやうれしや」

出典:コトバンク

「のうのうと」は体を長く伸ばして気楽に休む様子を表します。また怠惰・横着の暗示とともに、見る者の不快・焦燥の暗示がありますよ。「夫はソファでのうのうと昼寝をしている」のように「と」が付くと述語にかかる修飾語になります。これが基本的な用法で、体を長く伸ばして気楽に休んでいるという意味になりますよ。

「のうのうと」の語源は?

次に「のうのうと」の語源を確認しておきましょう。

「のうのうと」の語源は「南無阿弥陀仏」です。「南無阿弥陀仏」はひらがなでは「なむあみだぶつ」と書きます。意味は阿弥陀仏に帰命すること、またこれを唱えるのを念仏といい、それによって極楽に往生できるという六字の名号。それでは日本語のおさらいも兼ねて「南無阿弥陀仏」の漢字の成り立ちについて説明しますね。「南」は幕を張ったテントの形とあたたかい意味の音を示す文字とを合わせた字です。テントの中があたたかい意味を表しますよ。後に、太陽の日当たりが良い、みなみの方角もあたたかいことから「みなみ」の意味に使われるようになりました。

「無」は人がたもとに飾りをつけて踊っている姿を描いた字。後に「ない」意味に使われるようになりました。「阿弥陀」は西方にある極楽世界を主宰するという仏のこと。「仏」は古い字は「佛」で、人をあらわす文字と見分けがつかない意味の音をしめす「弗」とを合わせた字です。人によく似ていてはっきり見分けがつかない意味を表しますよ。ブッダのことを「仏陀」と書いたので後に、「ほとけ」の意味に使われるようになりました。

\次のページで「「のうのうと」の使い方・例文」を解説!/

「のうのうと」の使い方・例文

「のうのうと」の使い方について例文をいくつか挙げて解説していきます。この言葉は、たとえば以下のように用いられますよ。

1.受験生なのにテレビなんか見てのうのうとしている場合じゃないでしょう。参考書やオススメの辞典を読んで勉強しなさい。

2.彼は放任主義の親の元でのうのうと育った。そのためなのか、同じような価値観や考え方も持っている人や興味のある相手としか関わろうとしない。

3.近年、民間企業がリストラをしているのに、官庁だけがのうのうとしているのはいかがなものか。

例文1と例文2は主体が何の心配も気遣いもなく自由に振舞うという意味での「のうのうと」が使われています。寝転がってテレビなんか見ていていいのといった気持ちが現れていますね。例文3は主体が事態の深刻さを理解せずに、行動すべきときに何もしないという意味。民間企業側の人が快く思っていないうえに苛立ちを覚えている感じが伝わってくるでしょう。

「のうのうと」の類義語は?違いは?

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「のうのうと」と似たような意味をもつ言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「のほほん」

「のほほん」は事態の重大さを理解できず、必要な行動を起こさない様子を表します。また話者の怠惰・横着の暗示と話者の不快・焦燥の暗示がありますよ。「課長はのほほんとした顔で愚痴を聞いていた」では「…とした」が付いて名詞にかかる修飾語になりますし、「息子は親の苦労も知らずのほほんと育った」では「と」が付いて述語にかかる修飾語になります。

「のほほん」は主体が事態の重大さを理解できていないために、必要な行動を起こさないで気楽にしている様子を表し、しばしば主体の無邪気(幼稚・低能)の暗示を含みますよ。「のうのうと」との違いは「のほほん」には体を大きく伸ばして気楽に休む様子を表す暗示がない点です。

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その2「のんびり」

「のんびり」は心身に余裕があって気楽である様子を表します。また行動すべきときに行動を起こさない性質や様子を表しますよ。「川面で釣り人がのんびり糸を垂れている」では「と」が付いて述語にかかる修飾語になりますし、「娘がいると、受験・入学・就職・結婚・出産、孫の守りとのんびりなんかしている暇はありません」では「する」が付いて述語になります。また「のんびり屋」などは名詞。

さらに話者の慨嘆や揶揄などの暗示を伴う場合もあります。「のうのうと」との違いは「のんびり」には怠惰・横着の暗示と話者の不快・焦燥の暗示がないという点でしょう。

「のうのうと」の対義語は?

「のうのうと」と反対の意味を持つ言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「ずんずん」

「ずんずん」は進行や進捗の程度が速い様子を表します。「春になると薔薇の芽がずんずんと伸びてくる」では物事の振興の速度が速い様子を表しますし、「今日は仕事がずんずんと捗った」では進捗の程度が速い様子を表します。しばしば無遠慮・驚きなどの暗示を伴う表現。また「ずんずん」は「ぐんぐん」に似ていますが、「ぐんぐん」は持続的に加速する様子を表し、勢いと驚きの暗示がありますよ。

その2「ぐんぐん」

「ぐんぐん」は力が集中して持続的に動く様子を表し、単独では述語にかかる修飾語になります。また「ぐん」は力が一時に集中して加速する様子を表しますので「ぐん」の連続形で乱暴の暗示を伴いますよ。さらに途中で止まることなく加速し続ける点にポイントがあり、勢いと驚きの暗示を伴いますよ。

「打球は風に乗ってぐんぐん伸びた」では具体物が加速して動くという意味になりますし、「会社はこの五年間にぐんぐん大きくなった」では状態の程度が加速度的に変化し続けるという意味になります。なお、力を集中した結果、持続的に加速する様子をも表しますよ。

「のうのうと」の英訳は?

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「のうのうと」の英訳にはどのようなものがあるのでしょうか。英語で「のうのうと」と言い表す時の例をさっそく見ていきましょう。

「free from care」「comfortably」

「free from care」「comfortably」は「気楽に、安楽に」という意味。「He is spending comfortably in the countryside」で「彼は田舎で気楽に過ごしている」、「My father was taking a nap free from care」で「父はのうのうとお昼寝をしていました」となります。

\次のページで「「のうのうと」を使いこなそう」を解説!/

「のうのうと」を使いこなそう

この記事では「のうのうと」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「のうのうと」は体を長く伸ばして気楽に休む様子を表す表現であり、怠惰・横着の暗示とともに見る者の不快・焦燥の暗示がありましたね。「のうのうと」と似たような意味をもつ擬態語には「のほほん」や「のんびり」以外にも「ぬくぬく」や「しゃーしゃー」がありますよ。

「ぬくぬく」は苦労がなく快適に安住している様子を表す表現主体が苦労なく快適な場所や位置に安住している様子を話者が慨嘆・侮蔑の暗示を伴って述べる場合に使われます。そして「しゃーしゃー」はあたりをはばからず無遠慮に行動するのを不快に思う様子を表す擬態語主体の無遠慮な行為や態度に対する話者の激しい嫌悪と侮蔑を表し、怒りとあきれの暗示もありますよ。

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国語言葉の意味

「のうのうと」の意味や使い方は?例文や類語をプロダクション編集者がわかりやすく解説!

この記事では「のうのうと」について解説する。
端的に言えば「のうのうと」の意味は「心配や気兼ねをしないでのんびりしているさま」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
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ライター/flicker

仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「のうのうと」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「のうのうと」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「のうのうと」の意味は?

「のうのうと」には、次のような意味があります。

〘副〙 (多く「と」を伴って用いる) 束縛から解放され、気分がゆったりとしているさまを表わす語。のびのび。

※雑俳・柳多留‐八(1773)「四日目はのふのふとするかんぶつ屋」

〘感動〙 (感動詞「のう」を重ねた形)

① 呼びかけのことば。もしもし。

※とはずがたり(14C前)一「『御心地は何事ぞ。ここなる物御覧ぜよ。なうなう』と枕の障子を叩く」

② 軽い感動の気持を表わすことば。ああ。

※虎寛本狂言・末広がり(室町末‐近世初)「なうなう、うれしやうれしや」

出典:コトバンク

「のうのうと」は体を長く伸ばして気楽に休む様子を表します。また怠惰・横着の暗示とともに、見る者の不快・焦燥の暗示がありますよ。「夫はソファでのうのうと昼寝をしている」のように「と」が付くと述語にかかる修飾語になります。これが基本的な用法で、体を長く伸ばして気楽に休んでいるという意味になりますよ。

「のうのうと」の語源は?

次に「のうのうと」の語源を確認しておきましょう。

「のうのうと」の語源は「南無阿弥陀仏」です。「南無阿弥陀仏」はひらがなでは「なむあみだぶつ」と書きます。意味は阿弥陀仏に帰命すること、またこれを唱えるのを念仏といい、それによって極楽に往生できるという六字の名号。それでは日本語のおさらいも兼ねて「南無阿弥陀仏」の漢字の成り立ちについて説明しますね。「南」は幕を張ったテントの形とあたたかい意味の音を示す文字とを合わせた字です。テントの中があたたかい意味を表しますよ。後に、太陽の日当たりが良い、みなみの方角もあたたかいことから「みなみ」の意味に使われるようになりました。

「無」は人がたもとに飾りをつけて踊っている姿を描いた字。後に「ない」意味に使われるようになりました。「阿弥陀」は西方にある極楽世界を主宰するという仏のこと。「仏」は古い字は「佛」で、人をあらわす文字と見分けがつかない意味の音をしめす「弗」とを合わせた字です。人によく似ていてはっきり見分けがつかない意味を表しますよ。ブッダのことを「仏陀」と書いたので後に、「ほとけ」の意味に使われるようになりました。

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