この記事では「そそくさ」について解説する。
端的に言えば「そそくさ」の意味は「精神的にせかされて、あわただしく行動するさま」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「そそくさ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

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仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「そそくさ」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「そそくさ」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「そそくさ」の意味は?

「そそくさ」には、次のような意味があります。

[1] 〘副〙 (「と」や「に」を伴って用いることもある) 態度、行動が落ち着かないさま、あわただしいさまなどを表わす語。

※浄瑠璃・潤色江戸紫(1744)三「ハハア、そんならお暇申ますとそそくさ帰る薬り湯伝七」

※多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉前「元は倉皇(ソソクサ)と下りて、『お嬢様!』と呼んで見ると」

[2] 〘名〙 落ち着きのないこと。そそっかしいこと。また、そういう人。

※滑稽本・七偏人(1857‐63)二「例の早卒(ソソクサ)同志が二人で計のみこんで」

出典:コトバンク

辞典や辞書には「そそくさ」は落ち着かない様子で行動を終わらせる様子を表すとあります。「と」がつくと述語にかかる修飾語になりますよ。また、主体が落ち着かずに、逃げるように行動を早く終わらせる様子を表し、簡略と見る者の軽い不審の暗示があります。「そそくさと会場をあとにした」という一文からは長居したくないという気持ちが伝わってきますね。

「そそくさ」の語源は?

次に「そそくさ」の語源を確認しておきましょう。

「そそくさ」の語源は「倉皇」で「そうこう」と読みます。意味は慌てふためくこと。ここで「倉皇」の漢字の成り立ちについて説明しましょう。「倉」はやねでおおう意味を表す文字と香ばしい香りのする穀物の意味の音を示す文字とを合わせた字で、穀物をしまっておく「くら」の意味を表します。「皇」は大きな冠が台の上にのっている形を描いた字。後に、大きな冠をかぶる人、つまり「王様」の意味に使われるようになりました。

\次のページで「「そそくさ」の使い方・例文」を解説!/

「そそくさ」の使い方・例文

「そそくさ」の使い方について例文を挙げて解説していきます。この言葉は、たとえば以下のように用いられますよ。

1.試合に負けた投手は無言でそそくさと球場を去って行った。能力は高いのに今日は不調だったようだ。来月も試合が実施されるので精選された投手に期待しよう。

2.息子は朝食をそそくさと済ませて家を出ていった。試験がある日なのでご要望にこたえて特別メニューを作ったのに残念。

3.首相は記者を振り切ってそそくさと官邸に姿を消した。朝日新聞の記者は情報提供を求めたが無駄だった。責任逃れをしているとしか思えない。

言葉の精密な意味や細かいニュアンス、暗示されている心理などを理解するためには、少しでも意味・ニュアンスが異なると思われる用例を知る必要があります。そうすることで、現代語の意味や用法の広がりを的確にとらえることができるだけでなく、心理・ニュアンスといった微妙な意味の違いをも明快に分析することができますよ。

「そそくさ」の類義語は?違いは?

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「そそくさ」と似たような意味をもつ言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「そわそわ」

「そわそわ」は態度が落ち着かない様子を表します。主体が期待・興奮・心配などのために態度に落ち着きがないことを見る者が評する語で、不審・慨嘆の暗示がありますよ。「父は朝からそわそわしている」といった表現が適切です。また「そそくさ」との違いは不審・慨嘆の暗示があるという点でしょう。

\次のページで「その2「あたふた」」を解説!/

その2「あたふた」

「あたふた」は落ち着かずに行動する様子を表しています心理的に落ち着かずに、急いで何かの行動を起こす様子を表し、困惑の暗示はありますが、慨嘆などの暗示はありません。「母が急に倒れたのでおたおたしてしまった」などと使いますよ。なお「そそくさ」との違いは困惑の暗示はありますが慨嘆などの暗示はないという点です。

その3「とっとと」

「とっとと」は非常に急いで去る様子を表します。「と」が付くと「出ていく」「去る」など、視界から消える意味の動詞の命令表現にかかる修飾語になりますよ。どちらかというと乱暴なくだけた表現で、あまり女性が用いる表現ではありません。また話者の焦燥・怒りの暗示があります。例えば「ぐずぐず愚痴を言ってないで、とっとと仕事をしろ」などと言いますよ。「そそくさ」との違いは男女ともに使える表現だという点です。

その4「せかせか」

「せかせか」は焦燥を感じながら行動しているように見える様子を表していますよ。主体が落ち着かずに忙しく話したり行動したりしているのを話者が見て、主体の焦燥や落ち着きのなさを推量し、不快・慨嘆の暗示を伴って述べる場合に使われる表現です。「せかせか」を使った例文は「朝から晩まで時間に追われるせかせかした生活を送っている」など。「そそくさ」との違いは不快・慨嘆の暗示を伴って述べる場合に使われる表現だという点です。

「そそくさ」の対義語は?

「そそくさ」と反対の意味を持つ言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「どっしり」

「どっしり」はいかにも重量があるように見える様子を表し、不動・安定・威厳・重厚・風格の暗示があります。「(と)した」が付くと名詞にかかる修飾語になりますし、「している」が付くと述語になりますよ。「社長はどっしりと構えている」では態度が重厚で落ち着いているという意味を持ちますし、「彼はどっしりとした低い声で歌う」では声が低く太くて重厚であるという意味になります。

その2「どっかり」

「どっかり」は大きな重い物体を下す様子を表し、単語でまたは「と」が付くと述語にかかる修飾語になりますよ。「監督はベンチにどっかり腰を下ろした」では人間が腰を下ろす様子を表す表現になりますし、「大きな岩がどっかりと道を塞いでいる」では人間以外の物がある場所にやってきてそのまま存在する様子を表しています。容易に動きそうもないニュアンスで、不動・重量・安定の暗示がありますよ。

\次のページで「「そそくさ」の英訳は?」を解説!/

「そそくさ」の英訳は?

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「そそくさ」の英訳にはどのようなものがあるのでしょうか。英語で「そそくさ」と言い表す時の例をさっそく見ていきましょう。

「hurriedly」

「hurriedly」は「大急ぎで、あわてて、あわただしく、せかせかと」という意味がありますよ。「My father hurriedly put on his clothes」で「父はそそくさと衣服を身につけた」、「She left her seat in a hurriedly」で「彼女はそそくさと席を後にした」となります。

「そそくさ」を使いこなそう

この記事では「そそくさ」の意味・使い方・類語などを説明しました。

人間は気まぐれな動物です。どういう状態をどんな言葉を使って説明するか、そしてその時にどんな気持ちをこめているかによって、状況や結果が大きく変わります。会社においては頼みごとを張り切ってやってくれたりする場合もあれば、しぶしぶやらせることになったりもする場合もあるでしょう。擬態表現を上手に活用して無駄に印象を悪くしない予防策をとっていきましょう。

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国語言葉の意味

「そそくさ」の意味や使い方は?例文や類語をプロダクション編集者がわかりやすく解説!

この記事では「そそくさ」について解説する。
端的に言えば「そそくさ」の意味は「精神的にせかされて、あわただしく行動するさま」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「そそくさ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/flicker

仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「そそくさ」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「そそくさ」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「そそくさ」の意味は?

「そそくさ」には、次のような意味があります。

[1] 〘副〙 (「と」や「に」を伴って用いることもある) 態度、行動が落ち着かないさま、あわただしいさまなどを表わす語。

※浄瑠璃・潤色江戸紫(1744)三「ハハア、そんならお暇申ますとそそくさ帰る薬り湯伝七」

※多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉前「元は倉皇(ソソクサ)と下りて、『お嬢様!』と呼んで見ると」

[2] 〘名〙 落ち着きのないこと。そそっかしいこと。また、そういう人。

※滑稽本・七偏人(1857‐63)二「例の早卒(ソソクサ)同志が二人で計のみこんで」

出典:コトバンク

辞典や辞書には「そそくさ」は落ち着かない様子で行動を終わらせる様子を表すとあります。「と」がつくと述語にかかる修飾語になりますよ。また、主体が落ち着かずに、逃げるように行動を早く終わらせる様子を表し、簡略と見る者の軽い不審の暗示があります。「そそくさと会場をあとにした」という一文からは長居したくないという気持ちが伝わってきますね。

「そそくさ」の語源は?

次に「そそくさ」の語源を確認しておきましょう。

「そそくさ」の語源は「倉皇」で「そうこう」と読みます。意味は慌てふためくこと。ここで「倉皇」の漢字の成り立ちについて説明しましょう。「倉」はやねでおおう意味を表す文字と香ばしい香りのする穀物の意味の音を示す文字とを合わせた字で、穀物をしまっておく「くら」の意味を表します。「皇」は大きな冠が台の上にのっている形を描いた字。後に、大きな冠をかぶる人、つまり「王様」の意味に使われるようになりました。

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