突然ですが「吐露」したことはあるでしょうか。そのとき、一体どんな気持ちを話したでしょうか。

「吐露」(とろ)とは、隠さずに心の中を打ち明けること。この記事では、吐露するのがどんな気持ちなのか、また、「吐露」の意味や使い方、類義語とその違いについても詳しく解説する。

今回は大学で日本語と日本文学について学び、塾講師時代には国語の指導に力を入れていたというカワナミを呼んです。一緒に見ていこう。

ライター/カワナミ

大学時代は日本語・日本文学について学び、塾講師時代には国語の指導に力を入れていた。何をするにも文章読解力は欠かせないというのが持論。勉強や仕事以外の日常会話でも、言葉を知れば世界が広がると本当に思っている。

「吐露」するのはどんな気持ち?

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「吐露」する気持とは、悩みや不安、秘密など多くがネガティブなものです。「心情を吐露する」というフレーズはよく聞かれますよね。口に出しにくいことを「進んで言いたくはないけれども明かす」ときに使われます。内容の善悪に決まりはありません。あくまでも「吐露する」本人にとって言いづらいか、がポイントです。

心に秘めて抱えてきたことを話すのは勇気がいります。しかしその分、受け入れてもらえたときの安心感や相手への信頼感はひとしおでしょう。

「吐露」の意味・語源・例文まとめ

「吐露」の意味や語源、例文についても詳しく見ていきましょう。

「吐露」の意味は「心の中を打ち明けること」

「吐露」「とろ」と読みます。「はくろ」とは読みません。辞書には次のように記されています。

 心に思っていることを、包み隠さないで全部述べ表わすこと。心の中を打ち明けること。心の底から誠をもって語ること。

出典:精選版 日本国語大辞典(小学館)「吐露」

「吐露」心の中に思っていることや気持ちを、隠さずに打ち明けるという意味です。隠さずに言うのですから、その内容は本音

本音は誰にでも簡単に教えられるものではないですよね。本当は黙っていたかったけれど、話さざるを得ないと感じたり、黙っていることが重荷になってしまったりといった、マイナスな心境で思いきって本音を明かすさま。それを「吐露」もしくは「吐露する」と表現します。

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「吐露」の語源は漢字の意味

「吐露」言葉の意味と漢字の意味を結びつけた言葉です。出来上がった熟語が音読みで「とろ」と読まれ、言葉の音自体に特別な由来はありません使われている漢字は「吐」「露」。それぞれ次のような意味を持っています。


[訓義]
1. はく、はきだす、だす、へど。
2. そそぐ、すてる。
3. いう、ことば。

出典:普及版 字通(平凡社)「吐(漢字)」


[訓義]
1. つゆ。
2. うるおう、ひたす。
3. めぐむ、そだてる。
4. あらわれる、もれる、やぶれる、さらす。
5. はかない、ささやかな、わずかな、つまらぬ。

出典:普及版 字通(平凡社)「露(漢字)」

の意味1の「はきだす」の意味4の「あらわれる、さらす」が合わさりました。「心の中を打ち明ける」という意味が2つの漢字で強調されていることがわかります。

「吐露」を使った例文

「吐露」は小説のような書き言葉として用いられ、日常会話ではほとんど使われません。例文を元に、「吐露」の使い方を見ていきましょう。

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1.友人のやさしい声掛けに甘えて、これまで堪えていた仕事の悩みを吐露した。話せば話すほど、自分がどれだけ辛かったのかを痛感した。
2.この恋心は決して誰にも吐露するわけにいかない。彼女はその思いを生涯自分だけのものにしようと決めた。
3.自分の意見を吐露することによって、どんな目で見られるのかが不安だった。しかし、それは杞憂だったようだ。

「吐露」「心の中を打ち明けること」という意味でしたね。例文から「吐露」する気持ちが、前向きなものではないことが想像できます。悩みや不安、秘密などを抱えてから「吐露」するまでには、しばらくの期間があるもの。その間、頭の中で何度も反すうすることになるので、あらたまって口にすることに緊張も伴うでしょう。そのため「吐露」できる相手も限られます

例文1では、仲の良い友人が声掛けをしたことで、ようやく「吐露」するつもりになりました。例文2では、心を許せる相手がいないのか、もしくは表に出してはいけないような恋心だったのでしょうか。誰にも「吐露」しないことを選択していますね。反対に、例文3では不安を覚えながらも「吐露」し、周囲の人に受け入れてもらうことができました。

「吐露」の類義語は?違いも解説!

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「吐露」「心の中を打ち明ける」と似た意味を持つ言葉をいくつかご紹介しましょう。また「吐露」との違いについても説明していきます。

「告白」:秘密を打ち明けること

「告白」とは心に秘めていたことや感情を打ち明けることです。またキリスト教においては、信仰を表明したり、自分の罪を神の前で打ち明け、許しを求めたりすることを意味します。

「吐露」と「告白」の違いは、その内容を打ち明けることに消極的か積極的かということ。「吐露」の言いたくないのに口に出てしまうというニュアンスに対し、告白は自ら打ち明けることを決意して口に出すという感じです。

「暴露」:悪事や秘密を明るみにすること

「暴露」(ばくろ)とは、悪事や秘密、不正などを明らかにするという意味です。「曝露」とも書きます。

「吐露」との違いは、打ち明ける内容が悪事や不正などマイナス要素を含んだものであること。そして「暴露」するのは本人に限らず、他人が「暴露」する場合があるということです。暴いて(あばいて)露(あらわ)にするのですから、暴露した後は相手との関係性が大きく変わってしまうこともあるでしょう。

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「披瀝」:考えを打ち明けること

「被歴」(ひれき)とは、考えていることを包み隠さず打ち明けることです。文章を書く上で使われる表現であり、会話の中に出てくることはあまりないでしょう。

「吐露」との違いは、打ち明けるときの気持ちです。「吐露」が口に出したくない事柄を渋々打ち明けることを指すのに対し、「披瀝」は打ち明けるときの気持ちに関係なく打ち明けることを指します。消極的でも積極的でも、内容の良し悪しや大小に関わらず、それまで表に出されていなかったことを打ち明けること、全てに使うことができるのです。

「吐露」の対義語はない

「吐露」に対義語はありません。「沈黙」や「黙秘」といった「黙っている」という意味の言葉はどうか、と思われますが、「黙秘」は「供述」の対義語、「沈黙」は「発言」の対義語となり、ニュアンスが違うことがわかります。「吐露」の「言いにくいけれど思いきって打ち明ける」という微妙なニュアンスに、ちょうどよく相対する言葉はないようです。

「吐露」の英訳は「reveal」

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「吐露」の英訳には「reveal」を使うのが良いでしょう。「知られていなかったことをさらけ出す」「明らかにする」といった意味です。また「pour out one’s heart」「lay bare one’s heart」「心の中を打ち明けて話す」という意味のフレーズを使うこともあります。

「吐露」することで心を軽く

この記事では「吐露」するときの気持ちや意味、使い方、類義語などを解説しました。

不安や悩みは、抱えている時間が長くなればなるほど、どんどんふくらんでいくものです。ふとした瞬間に思い出して、気が重くなることもあるでしょう。しかし、それは本当に必要な苦しみでしょうか。思いきって言葉にするだけで、心が軽くなることもきっとあるはずです。人は話をすることで頭の中を整理するといいます。話せる相手がいない、という人は、鏡を見て自分に向かって話してもいいでしょう。「吐露」することで心を少しでも軽くしませんか。

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国語言葉の意味

「吐露」するのはどんな気持ち?意味や例文・類義語との違いなどと共に元塾講師ライターがわかりやすく解説!

「披瀝」:考えを打ち明けること

「被歴」(ひれき)とは、考えていることを包み隠さず打ち明けることです。文章を書く上で使われる表現であり、会話の中に出てくることはあまりないでしょう。

「吐露」との違いは、打ち明けるときの気持ちです。「吐露」が口に出したくない事柄を渋々打ち明けることを指すのに対し、「披瀝」は打ち明けるときの気持ちに関係なく打ち明けることを指します。消極的でも積極的でも、内容の良し悪しや大小に関わらず、それまで表に出されていなかったことを打ち明けること、全てに使うことができるのです。

「吐露」の対義語はない

「吐露」に対義語はありません。「沈黙」や「黙秘」といった「黙っている」という意味の言葉はどうか、と思われますが、「黙秘」は「供述」の対義語、「沈黙」は「発言」の対義語となり、ニュアンスが違うことがわかります。「吐露」の「言いにくいけれど思いきって打ち明ける」という微妙なニュアンスに、ちょうどよく相対する言葉はないようです。

「吐露」の英訳は「reveal」

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「吐露」の英訳には「reveal」を使うのが良いでしょう。「知られていなかったことをさらけ出す」「明らかにする」といった意味です。また「pour out one’s heart」「lay bare one’s heart」「心の中を打ち明けて話す」という意味のフレーズを使うこともあります。

「吐露」することで心を軽く

この記事では「吐露」するときの気持ちや意味、使い方、類義語などを解説しました。

不安や悩みは、抱えている時間が長くなればなるほど、どんどんふくらんでいくものです。ふとした瞬間に思い出して、気が重くなることもあるでしょう。しかし、それは本当に必要な苦しみでしょうか。思いきって言葉にするだけで、心が軽くなることもきっとあるはずです。人は話をすることで頭の中を整理するといいます。話せる相手がいない、という人は、鏡を見て自分に向かって話してもいいでしょう。「吐露」することで心を少しでも軽くしませんか。

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