この記事では「必死」について解説する。

端的に言えば必死の意味は「一生懸命」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

大手企業に35年以上勤務したベテランのKAIKAIを呼んです。一緒に「必死」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/KAIKAI

東京の大手企業に35年以上勤務し、仕事でたくさんの文章を扱ってきた経験を持つ。学生時代から国語が得意で言葉の意味には自信あり。

「必死」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「必死」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「必死」の意味は?

「必死」には、次のような意味があります。

1.必ず死ぬこと。
2.死ぬ覚悟で全力を尽くすこと。また、そのさま。死にもの狂い。
3.(「必至」とも書く)将棋で、次に必ず王将が詰む、受ける方法がない状態。また、その差し手。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「必死」

「必死」(ひっし)の「必」は間違いないことであり、「死」は生命の終わりという意味で、「間違いなく生命が絶たれる」ということであり、必ず死ぬことを覚悟して全力を出し尽くしすということです。

「決死」と言う似た言葉がありますが、こちらは、死を覚悟して全力で頑張ることを意味します。「必死」は確実に死ぬのですが、「決死」は死ぬかもしれないし生きるかもしれないという意味ですので、本来は「必死」の方が覚悟の度合いが強いはずですが、現在ではどちらも同じ程度の意味で使われていますね。

また、将棋用語でどんな手を打っても相手の王将を必ず詰むことになる最後の一手のことを「必死」と言います。「必至」と書くこともありますがどちらも誤りではありません。

「必死」の語源は?

次に「必死」の語源について見てみましょう。

「必死」の語源は、一説では将棋用語の「必至」からきているのではないかと言われています。「必」は必ずという意味で、「至」は限界まで行ってしまうという意味です。将棋用語としての「必至」はどんな手を使っても相手の王将を詰めることができることで、「必至」を仕掛けると相手の敗北が決定してしまいます。相手にとってはこれ以上なく追い詰められた状態ということで、そこから「必死」という言葉が生まれたとされているのです。

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「必死」の使い方・例文

「必死」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.彼女は必死に努力してオーディジョンに合格した。
2.作家になるために必死に文学を勉強した。
3.車のローンを払うために必死になって働いている。
4.遅刻しそうになったので、必死になって駆けつけた。
5.必死の王手によって勝負は決まった。

「必死」は「必死に~する」という言い回しで使われます。いずれの「例文も「死にもの狂いで行う」とか「全力を尽くして行う」という意味になるのです。死ぬ気で努力しようという強い気持ちを表現するだけではなく、比較的軽い気持ちで行う場合でも使われ、かなり広範囲にわたって用いられる言葉ですね。1~4の例文は通常の「必死」の意味ですが、5の例文は将棋用語としての使用例です。

また、下記のように「必死の〇〇」という形でもよく使います。

・必死の祈り
・必死の願い
・必死の覚悟
・必死の応援
・必死の訴え

「必死」の類義語は?違いは?

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「必死」の類義語について見てみましょう。

\次のページで「その1「命がけ」」を解説!/

その1「命がけ」

「必至」は必ず死ぬ覚悟を持つという意味があることから、同じ意味を持つ「命がけ」が類義語となります。しかし、どちらかと言うと「命がけ」の方が「必至」よりもせっぱ詰まったニュアンスがあるのです。「命がけ」を全て漢字で表すと「命懸」ですが、さかさまに書くと「懸命」(けんめい)となります。「懸命」も頑張っている様子を表しますが、「命がけ」というほどのニュアンスはありません。

また「命がけ」は主観的な言葉であり、行動となって表面に現れない心の中の状態を表現する言葉です。また、将棋用語の「必死」の意味の場合は類義語はありません。

その2「死にもの狂い」

「死にもの狂い」とは、「死ぬことをも恐れず奮闘すること」または「死ぬ覚悟で行動を行うこと」の意味です。「必死」よりも重たい、追い詰められたニュアンスがあります。「死にもの狂いで~をする」といった形で使われるのです。「必死」と同様、行動となって現れる様子をいうもので「命がけ」のように心の中の状態をいうものではありません。

「入学試験が迫ってきたので、妹は死にもの狂いで勉強をした」「隣の家が火事になったので死にもの狂いで逃げ出した」などと使います。

「必死」の対義語は?

「必死」の対義語について見てみましょう。

「余裕」

「余裕」とは「必要な限度以上に余りが蓄えられいること」「ゆったりとして穏やかな気持ちでいること」の意味になります。死にもの狂いで大変な思いをしながら奮闘する「必死」に対して、特に何も努力しなくとも満ち足りていて余裕がある様子です。「今年の事業計画は余裕をもって達成できる」「あの人は余裕がある語り口だ」などと使われます。

余裕綽々」(よゆうしゃくしゃく)という四時熟語がありますね。「余裕」も「綽々」もどちらも「ゆったりしている様子」を意味しますので、同じような意味を重ねって使うことによってその意味を強調しています。「余裕綽々」は、中国の歴史的な儒学者の孟子が発した言葉に由来するものとされているのです。なお、「綽々」は「たくたく」と間違って読まないようにしましょう。

「必死」の英訳は?

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「必死」の英訳は何でしょうか。

「desperate」

「必死」の英訳は「desperate」です。副詞の「必死に」は「dsesperately」となります。

熟語で「be desperate for~ 」と「be desperate to do」は「~が欲しくてたまらない」と「~を手に入れるために必死だった」という意味です。

以下例文となります。

\次のページで「「必死」を使いこなそう」を解説!/

「He ran desperately.」(彼は必死に走った。)

「He was desperate to his wife.」 (彼は奥さんが欲しくてたまらない。)

「必死」を使いこなそう

この記事では「必死」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「必死」という言葉はもともとは死ぬことを前提とした重たい意味を持っていました。しかし、時代がたつにつれてそのような重たい意味は次第に薄れていったのです。このように言葉の持つ意味は時代とともに変化します。とは言え、もともとの意味を知らないと、歴史や古典などを正しく理解することはできないでしょう。本来の言葉の意味を理解することは、当時の人々の心を読み取るためにも大切なことなのです。

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国語言葉の意味

「必死」の意味や使い方は?例文や類語をたくさんの文章を扱ってきたライターがわかりやすく解説!

その1「命がけ」

「必至」は必ず死ぬ覚悟を持つという意味があることから、同じ意味を持つ「命がけ」が類義語となります。しかし、どちらかと言うと「命がけ」の方が「必至」よりもせっぱ詰まったニュアンスがあるのです。「命がけ」を全て漢字で表すと「命懸」ですが、さかさまに書くと「懸命」(けんめい)となります。「懸命」も頑張っている様子を表しますが、「命がけ」というほどのニュアンスはありません。

また「命がけ」は主観的な言葉であり、行動となって表面に現れない心の中の状態を表現する言葉です。また、将棋用語の「必死」の意味の場合は類義語はありません。

その2「死にもの狂い」

「死にもの狂い」とは、「死ぬことをも恐れず奮闘すること」または「死ぬ覚悟で行動を行うこと」の意味です。「必死」よりも重たい、追い詰められたニュアンスがあります。「死にもの狂いで~をする」といった形で使われるのです。「必死」と同様、行動となって現れる様子をいうもので「命がけ」のように心の中の状態をいうものではありません。

「入学試験が迫ってきたので、妹は死にもの狂いで勉強をした」「隣の家が火事になったので死にもの狂いで逃げ出した」などと使います。

「必死」の対義語は?

「必死」の対義語について見てみましょう。

「余裕」

「余裕」とは「必要な限度以上に余りが蓄えられいること」「ゆったりとして穏やかな気持ちでいること」の意味になります。死にもの狂いで大変な思いをしながら奮闘する「必死」に対して、特に何も努力しなくとも満ち足りていて余裕がある様子です。「今年の事業計画は余裕をもって達成できる」「あの人は余裕がある語り口だ」などと使われます。

余裕綽々」(よゆうしゃくしゃく)という四時熟語がありますね。「余裕」も「綽々」もどちらも「ゆったりしている様子」を意味しますので、同じような意味を重ねって使うことによってその意味を強調しています。「余裕綽々」は、中国の歴史的な儒学者の孟子が発した言葉に由来するものとされているのです。なお、「綽々」は「たくたく」と間違って読まないようにしましょう。

「必死」の英訳は?

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「必死」の英訳は何でしょうか。

「desperate」

「必死」の英訳は「desperate」です。副詞の「必死に」は「dsesperately」となります。

熟語で「be desperate for~ 」と「be desperate to do」は「~が欲しくてたまらない」と「~を手に入れるために必死だった」という意味です。

以下例文となります。

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