今回は知ってるようで知らない、霧(きり)、靄(もや)、霞(かすみ)の違いを解説します。

霧、靄、霞と聞くと微細な水滴が漂って視界が悪く、ぼんやりとしか物が見えないというイメージがあるな。ではどんなものが霧でどんなものが霞、さらにどんなものが霞か区別はついているか。普段何となく使っているかもしてないが、意味を調べるときちんとした違いがある。

今回はこの3つの違い、そしてそれぞれどんなものかを学ぶ。解説は科学館職員のたかはしふみかです。

ライター/たかはし ふみか

朝は天気予報を見ずに出かけて後悔するタイプ。畳み傘を必ず鞄に入れるよう心掛けている科学館職員。最近は手軽に楽しめる実験や工作の開発が趣味。

霧(きり)靄(もや)霞(かすみ)の違いは?

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まずは違いが分かりづらい霧、靄、霞の定義を確認しましょう。

1.霧(きり)

コトバンクによると霧とは「微少な水滴が空気中に浮遊する現象」のことです。空気中の温度が下がり、水蒸気が微小な水の粒となって漂っている状態のことを指します。この微小な水の粒のせいで霧の時は視界が悪く、1㎞程先までしか見ることができません。

ところで微小な水滴の浮遊は霧ですが、塵や砂ぼこりのような乾いた微粒子が浮遊して見通せる距離が悪くなってしまうこともあります。この時、見える範囲が10㎞未満となっているという状態を、煙霧(えんむ)というのです。微粒子が太陽光を散乱させ、乳白色に濁ってみられます。

ちなみに霧の天気記号は次のようになているので確認して下さいね。

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2.靄(もや)

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コトバンクによると靄とは「非常に細かい水滴や吸湿性粒子が空気中に浮遊している現象」のことです。

靄と霧は似ているようですね。それもそのはず、靄と霧は同じ細かい水滴が多度酔っている現象なのです。では何が違うのかと言うと、その時の視程にあります。視程とは大気の混濁具合を示す基準で、目標が肉眼で見える最大距離のことです。ちなみに視程は通常、水平方向での最大距離となります。条件が良ければ視程は50㎞以上にもなるのです。そして霧と靄は気象用語では視程が1㎞未満状態を霧、1㎞~10km未満のものを靄としています。特に濃い霧を濃霧と言い、この場合視程は200m以下とさらに短くなっているのです。

3.霞(かすみ)

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コトバンクによると霞とは 「空気中に浮かんでいるさまざまな細かい粒子のため、遠くがはっきり見えない現象」のことです。

ところで霞と言えば「霞を食う」と言う慣用句がありますね。これは仙人は霞を食べて生きている、と言われていることから浮世絵離れしていることを言います。こちらに関する記事もあるので確認してみて下さいね。

発生条件や性質を徹底解剖!もっと知りたい霧

それでは霧の発生条件や性質について解説していきます。

霧の種類と発生

霧は発生形態によって次にように分類されています。

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蒸発霧・蒸気霧

川や湖、海の水面が冷たい空気に覆われたとき、暖かい水面から蒸発する水蒸気が冷えて発生。

移流霧

海霧など暖かく湿った空気がそれよりも冷たい地面や海面上を移動するとき、下の方から冷やされて発生。

放射霧

盆地霧など地面及び地表付近の空気が放射冷却(熱を放射し、冷却されること)によって冷やされた時に発生。放射切りは高気圧に覆われた風の弱い晴れた明け方に発生しやすく、日の出とともに消散する。

前線霧

寒気と暖気という異なる性質の気塊(きかい:水平方向に気温、湿度がほぼ一定な状態の空気の塊、気団ともいう)が前線付近で混ざり合い発生。

滑昇霧(かっしょうぎり)・上昇霧

湿った空気が山の斜面を昇るとき、断熱冷却(気塊の温度が下がること)によって発生。

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また霧を構成する水滴が凍った、あるいは空気中の水蒸気が昇華(凝華)して小さな氷の結晶となって視程を邪魔し、1㎞未満しか見えない状態を氷霧(こおりぎり・ひょうむ)と言います。氷霧は―30℃以下の極寒にならないと発生しません。空気中に浮かんだ水滴は0℃以下でも簡単には凍らない過冷却(状態変化が起こるべき温度を下回ってもこらない現象)された状態になっているためです。

過冷却についてはこちらを参考にしてくださいね。

霧にように細かい雨を霧雨(きりさめ)小糠雨(こぬかあめ)と言います。水滴の直径が0.5mm未満の雨のことです。同様に霧のように細かい雪を霧雪(きりゆき・むせつ)といいます。これは結晶の直径が1㎜以下の雪のことです。

霧を見るのなら?

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最後に霧を見るのにおすすめなスポットをお伝えします。

日本を代表する霧の都といえばやはり北海道釧路市です。釧路市は年間100日以上霧が発生し、その影響で夏日は毎年5日程度しかありません。そんな釧路では1985年から毎年7月(8月に開催されたことも)に霧フェスティバルというイベントが開催されています(2020年は中止)。露店やカラオケ大会などのお祭りらしいイベントの他、霧レーザーショーというのもあるそうです。また釧路総合振興局内にある弟子屈町の観光スポット摩周湖には霧にちなんだ「霧の摩周湖」(1966年、布施明さん)という歌もあります。写真はその霧に包まれた摩周湖です。

また避暑地で有名な軽井沢も霧の町と言われ、年間100日近く霧が発生しています。軽井沢で育った野菜は「軽井沢霧下野菜」として有名です。

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海外に目を向けるとロンドンサンフランシスコが霧の街として知られています。ロンドンも釧路と同じく霧の都と言われている都市です。この原因は石炭のすすや排気ガスと言われています。しかし近年は落ち着いてきているようです。

サンフランシスコはアメリカの西海岸、カリフォルニア州にある都市。夏にみられる霧が風物詩として知られています。

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霧(きり)靄(もや)霞(かすみ)の違いとは?

霧と靄はもともとは同じものですが、人が肉眼で目的物を確認できる距離が異なっています。霧は1㎞程度未満、靄は1~10㎞未満という事で靄の方が視界はいいのです。霞はそのように浮遊物によって視界が悪い状態を指します。

車を運転するとき、霧は結構厄介です。しかし、霧を観光の目玉としている都市もあります。上手に付き合えるといいですね。

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地学大気・海洋理科

霧にはどんな種類がある?霧(きり)靄(もや)霞(かすみ)の違いを科学館職員がわかりやすく解説

今回は知ってるようで知らない、霧(きり)、靄(もや)、霞(かすみ)の違いを解説します。

霧、靄、霞と聞くと微細な水滴が漂って視界が悪く、ぼんやりとしか物が見えないというイメージがあるな。ではどんなものが霧でどんなものが霞、さらにどんなものが霞か区別はついているか。普段何となく使っているかもしてないが、意味を調べるときちんとした違いがある。

今回はこの3つの違い、そしてそれぞれどんなものかを学ぶ。解説は科学館職員のたかはしふみかです。

ライター/たかはし ふみか

朝は天気予報を見ずに出かけて後悔するタイプ。畳み傘を必ず鞄に入れるよう心掛けている科学館職員。最近は手軽に楽しめる実験や工作の開発が趣味。

霧(きり)靄(もや)霞(かすみ)の違いは?

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まずは違いが分かりづらい霧、靄、霞の定義を確認しましょう。

1.霧(きり)

コトバンクによると霧とは「微少な水滴が空気中に浮遊する現象」のことです。空気中の温度が下がり、水蒸気が微小な水の粒となって漂っている状態のことを指します。この微小な水の粒のせいで霧の時は視界が悪く、1㎞程先までしか見ることができません。

ところで微小な水滴の浮遊は霧ですが、塵や砂ぼこりのような乾いた微粒子が浮遊して見通せる距離が悪くなってしまうこともあります。この時、見える範囲が10㎞未満となっているという状態を、煙霧(えんむ)というのです。微粒子が太陽光を散乱させ、乳白色に濁ってみられます。

ちなみに霧の天気記号は次のようになているので確認して下さいね。

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